第14章 西の大陸でスローライフ

第599話 玄武の力の使い方

 玄武から得た力の事を聞き、シェイリーのところから第一魔族領へと戻って来た。

 とりあえず、ソフィの魔力が十分な気もするので、分身を解除する。


「えー! アレックスー! さっきのは、もう終わりなのー?」

「え!? あぁ。もう十分だと思うのだが」

「せっかくランランも、皆がしている事が上手く出来るようになってきたのにー! えっとね、こういう風に腰を動かすと……」


 玄武――改めランランが、アレを垂れ流しながら説明してくれるのだが、あまりそういう事は人前でしないようにしような。

 ……カスミあたりから、ランランに良い感じに説明してくれないだろうか。

 そう思ってカスミとランランを見ていると、流石はカスミ。すぐに察してくれた。


「あー、お兄さん。ちょっと待っててね。ランランちゃん、こっちこっちー」

「どうしたのー?」

「あのね。終わった後は、お兄さんのを綺麗にしてあげるの。ほら、こうやって……」


 違ーう!

 カスミはランランに何を教えているんだよっ!


「んー、大きすぎてランランの口には入らないよー」

「先端だけなら大丈夫じゃないかしらー?」

「いや、そういう話ではないんだっ!」


 とりあえず、カスミとランランを止めると、床でぐったりしていた結衣が近付いて来る。


「そ、そうなのです。ご主人様のお掃除は、結衣のお仕事なのです」

「だから、そういう話ではないんだって」

「うぅ……結衣はランランよりも少し大きいから、その棒を全部咥えられるのか。ランランもアレックスの力になりたいけど、デバフ系の力しかない……」


 ランランが悲しそうにしている中、ひとまず結衣も止めて、服を着て……待てよ?


「ランランはスキルを無効化出来るんだよな?」

「え? うん、出来るけどー?」

「じゃあ、俺の魅了スキルを無効化してくれないか!?」

「アレックスがしてっていうならするけど……本当に良いの? 別に呪いのスキルとかではないんだよね?」


 ランランが不安そうにしているが、俺からすると自動発動してしまう魅了スキルは、呪いのスキルと言っても過言ではないスキルだった。

 あのスキルを得てから、街に入ると大変な事になり、大勢の女性の責任を取る事になってしまったからな。


「ランラン、頼む。俺の魅了スキルを無効化してくれ」

「そうまで言うなら……わかったー! えーいっ!」


 ランランの小さな手が俺の身体に触れ……何かが変わった気はしないな。


「これで、アレックスの魅了スキルは無効化されたよー」

「ありがとう。これで、ようやく普通に街や村に行けるな」

「……そんなに大変な状態だったの?」


 不思議そうにキョトンとするランランを見て、俺だけでなく、カスミやサクラが大きく頷いている。

 まぁ俺と一緒に街へ行った事のある者は、あの大変さがよく分かっているはずだからな。


「よし! 早速何処かの街へ……この第一魔族領に魚村というのがあるらしいから、ちょっと行ってくるよ」

「アレックス。何だか凄く喜んでいるけど、ランランの無効化は未来永劫有効って訳ではないからね? もって数日とかだと思うよ? ……たぶん」

「わかった。新しい村や街へ行く時は、まずランランに会いに来てからにしよう」

「わーい! その時は、またさっきのをしてねー! あのズンズンって、身体の奥に響く、すっごく気持ち良いのをー!」


 ランランから何とも言えない言葉を投げられながらも、塔の一階――俺が壊した壁の穴から外へ。

 そこから、更に塔の外へ出ると、


「お兄ちゃん! どこー!? もうっ! ギルベルト様も居ないみたいだし、一体何が起こって……」


 闇の力を纏う女性が、キョロキョロと周囲を見渡していた。


「……魔族か」

「――っ! 誰だっ!? 塔から出て来たという事は……お前は、人間族の勇者なのか!?」

「いや、勇者ではないが、ギルベルトを倒した者だ。ランラ……玄武を解放した」

「なっ!? お兄ちゃ……ボニファーツはどうしたんだ!?」

「あの双剣使いなら、戦いの末に自爆した」

「そ、そんな! このっ! 許さ……えぇっ!?」


 魔族と思われる女性が、今にも襲い掛かってきそうだったのに、突然その場で怯えだす。


「竜人族……それに、玄武!? それに、この巨大な魔力は一体……こ、こんなの反則よっ!」


 どうやら、女性の目は俺の背後に向けられていたらしく、


「アレックスに敵対するなら、骨まで燃やし尽くすんよ」

「今まで封印してくれた事……ランラン、怒ってるからね?」

「マスター。この魔族、消しますか?」


 ヴァレーリエ、ランラン、ソフィを前に、魔族の女性が頭を抱えてしゃがみ込んでしまった。

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