挿話41 目覚めてしまった勇者ローランド
「じゃあ、少しだけお別れよ、ダーリン。浮気しちゃイヤだからね?」
「うるせぇっ! とっとと消えろっ!」
「もぉ、ダーリンったら照れちゃって。可愛いんだから」
そう言って、骨が軋む程の抱擁をされ、ゴリラ……もといハンナが別の任務へ出発した。
やった! ようやく解放されたっ! 俺は自由だっ!
もう毎晩尻の痛さに、枕を濡らさなくて済むんだっ!
晴々とした気分で宿を出ると、
「ローランド殿。恋人の別れが済んだ直後で申し訳ないのですが、今後の活動について相談があります」
俺をここへ連れて来たオッサン……ダニエルと、可愛いゴードンちゃんが待っていた。
「何だよ。相談って」
「ハンナが緊急招集されてしまいましたので、パーティの再編成が求められます。ローランド殿からすれば、ハンナの帰還を待ちたい所でしょうが、御理解下さい」
「いや、全く問題無い。とりあえず、女だ。女を入れてくれ」
「残念ながら、ハンナと同じく、女性の神殿騎士が全員招集されていますので、男性の神殿騎士しか居ません」
「じゃあ、ゴードンちゃんみたいに、冒険者で良いじゃないか」
「それも出来ません。我々神殿騎士が勇者を導く際は、パーティ内の神殿騎士の数より、冒険者の数の方が少なくあるべきという規則がありますので」
チッ……何か知らないが、面倒臭いな。
「ですが、この度の緊急招集により、女性勇者も招集され、その勇者を担当していた神殿騎士が待機状態となっています。その為、ハンナのように前衛寄りの神殿騎士に、私の様なバランスタイプの神殿騎士。後衛よりの神殿騎士と、選択肢が多くありますが、どういった者が良いか、意見をお聞きしようかと」
「女じゃないなら、どーでもいい。任せる」
「分かりました。では、私は新たな神殿騎士の確保に行ってきます。すみませんが、本日はゴードンと二人で訓練をお願い致します」
そう言うと、ダニエルが何処へ姿を消した。
……ん? 待てよ。という事は、今日はゴードンちゃんと二人っ切りなのか?
「ローランドさん。どうしましょうか? 僕は剣とか使えないんですけど……」
「……確かゴードンちゃんは、まだジョブを授かったばかりだったよな?」
「はい。ある神殿騎士さんにスカウトされて来たんですけど……それは良いとして、ローランドさんみたいに沢山魔物を倒した経験は無くて……」
「そうか。じゃあ、今日はせっかくだから、ゴードンちゃんの訓練に付き合おう。俺がゴードンちゃんを守るから、安心して魔法を使うんだ」
「す、すみません。ありがとうございます」
ゴードンちゃんが、可愛らしい笑みを浮かべ、ペコリと頭を下げる。
うーん。ゴードンちゃんは、容姿といい仕草といい、マジで女の子にしか見えないんだが。
一先ず、ゴードンちゃんの修行の為、近くの森の中へ。
「いたぞ! ゴードンちゃん。氷魔法であの緑のスライムを倒すんだっ!」
「は、はいっ! ≪ロー・フリーズ≫」
ゴードンちゃんが放った低位の氷魔法で、グリーン・スライムが凍り付く。
別名、植物スライムと呼ばれるコイツは、何でも溶かすスライム種でありながら、植物系のものしか溶かさない。
その為、人間がダメージを受ける事は無いので、駆け出し魔法職の良い練習相手となる魔物だ。
とはいえスライムなので、物理攻撃が効きにくい為、慢心は禁物だが。
一先ず、グリーン・スライムをゴードンちゃんに任せ、他の魔物を俺が倒しているのだが、
「ろ、ローランドさぁーん。助けてくださーい!」
呼ばれて戻ってみると、ゴードンちゃんが複数のグリーン・スライムに囲まれ、身動きが取れなくなっていた。
「おいおい、大丈夫か?」
ゴードンちゃんにまとわりつくスライムをあっさり倒すと、
「す、すみません。ちょっと数が多すぎて、魔力が」
何故か半裸になっているゴードンちゃんが、抱きつくようにして俺にもたれかかって来た。
あ……そうか。ゴードンちゃんが着ていたローブがスライムに溶かされたのか。
そして、魔力枯渇寸前でフラフラ……しかし、それにしてもゴードンちゃんの白い肌はスベスベで綺麗だな。
腰も細いし、このお尻なんて、女の子そのものじゃないか。
「…………」
「ローランドさん? 僕のお尻がどうかしましたか? ……ローランドさん!? ど、どうして背後から僕の腰を掴んで……っ!? ろ、ローランドさんっ!? そ、そこはっ! 一体何を……あぁぁぁっ!」
ゴードンちゃんを大きな木に抱きつくようして掴まらせると、残っていたスライムの粘液を俺のアレに付け……ゴードンちゃんは、とても可愛い声で鳴いてくれた。
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