第4章 交易とスローライフ
第95話 アレを飲みたいソフィ
「ほぉ……アレックスよ。その童女は、どこから連れて来たのだ? 随分と珍しい身体だな」
ソフィを連れて一旦家に帰るため、社まで戻って来たところで、呼んで居ないのにシェイリーが出て来た。
何でも、ソフィを――特殊な存在を感じ、出て来たそうだ。
「珍しい身体って?」
「その童女だ。身体の何割かが、魔法装置で出来ておるな」
「身体に魔法装置!? ……あ、魔導少女って、そういう事なのか」
「だが、安心するが良い。見た所、ちゃんとアレは出来そうだ。そういう事に関する箇所は、流石に魔法装置ではどうにもならないのだろう。身体の維持には魔力を使っているものの、その辺りは生身だな」
「いや、何の話だよっ!」
「もちろん子作りの話だが? 口はもちろん、前も後ろも大丈夫そうだぞ」
何故、シェイリーは真っ先にそういう話になるのか。
他にも大事な話がありそうなものなのだが。
ちなみに当のソフィは、シェイリーの話が理解出来なかったのか、自分の話なのにキョトンとしている。
「マスター。こちらの方は? あと、確かに私は子を成す事も可能ですが、その話と口がどう繋がるのでしょうか? あと、前と後ろとは?」
「ほぉ。その幼い見た目通り、そういった事には疎いのか。ふっふっふ……これはこれは、教え甲斐があるではないか」
「教えなくて良いよっ!」
故意ではないものの、ソフィには既にアレを飲ませてしまっていて、本人が理解しないままに求められている。
ソフィ自体は変な事をしたくないみたいだから、飲ませて欲しいと言っているアレが何か知ったら……暴走という名で攻撃されかねないし、何よりソフィが物凄くショックを受けそうだ。
とにかくノーラと同じく、ソフィには変な事を教えないようにしなくては。
そんな事を考えつつ、シェイリーが地上まで送ってくれたので、ソフィと共に家へと戻って来た。
「マスター。シェイリーさんは、龍に変身する幼女……いえ、先程の龍の姿が本来の姿ですね?」
「んー、俺からすると、どちらもシェイリーだけどな」
「畏まりました。では、以降は私もそういう認識でおります」
ソフィとそんな話をしながら家に入ると、真っ先にメイリンが抱きついて来た。
「旦那様、お帰りなさいませ……く、黒髪の幼女!? あ、あの、こちらの方は?」
「地下洞窟で出会ったソフィだ。ソフィ、この少女が、黒髪の一族の王女メイリンだ」
「はじめまして、メイリン様。マスターにお仕えするソフィと申します。以後、お見知り置きを」
あ、あれ? 地下では、黒髪の一族の話をしたらソフィの態度が変わったのに、今は何にも反応しないんだけど。
「ソフィ。ほら、ソフィと同じ黒髪の女の子だぞ」
「そうですね。とても綺麗な黒髪です」
「そ、ソフィとやら。お主は今まで、何処でどのように暮らして居ったのだ?」
メイリンが俺と同じような質問をソフィにするけど、結局俺の時と同じような、噛み合わない答えしか返って来なかった。
メイリンが少し残念そうに肩を落としているけれど、一先ず昼食にし、午後からは皆で開拓作業をする事に。
「ところで、ソフィはジョブは授かっているのか?」
「はい。私はマジック・エンジニア――魔法技師のジョブを授かっています」
「……聞いた事の無いジョブなんだが、どんな事が出来るんだ?」
「端的に言いますと、魔法装置や魔法具――いわゆるマジックアイテムを作成可能です」
「え!? それって、めちゃくちゃ凄くないか?」
「ありがとうございます。ですが、開発には多くの魔力を必要としますので、先ほど申し上げました、マスターの魔力の塊を飲ませていただければと」
う……魔法装置の開発は凄いのだが、アレを飲む必要があるのか。
ど、どうしよう。
「アレックスさん。魔力の塊を飲ませた……って、もしかしてアレの事ですか?」
「旦那様のアレは、飲むと力が湧いて来る。旦那様……地下でそういう事があったという事ですね?」
「アレックス様ー! フィーネもっ! フィーネも欲しいですーっ!」
ソフィの言葉から、何かを察したリディアとメイリン、フィーネが抱きついてくる。
一方で、そのソフィとノーラはキョトンとしているけれど……とりあえず明るいうちは止めよう。
特にこの二人の前では、危ない言動は止めるんだーっ!
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