挿話40 相談を受けるプリーストのステラ
「お疲れ様ーっ!」
今日も三人でダンジョンに潜り、無事に戻って来た。
抜けてもらったフィーネさんには悪い事をしたけど、この三人パーティとなって、ようやく安定してきた所だ。
S級パーティと呼ばれていた、ローランドさんやアレックスさんたちが居た頃と比べると、潜る階層も浅い階層になって、遥かに収入は減ってしまったけれど、今はこれで良いと思っている。
今後、深い階層へ行きたいという意見が出始めたら、新たに仲間を探せば良い。
というか、あの頃は、勇者にパラディンにアークウィザード……レアなジョブに恵まれ過ぎていたのよね。
「ステラ、グレイス。今日の夕食はどこのお店にするー?」
「……私は何でも良い」
「私も何処でも良いわよ。でも、その前に依頼の報告をしないとね」
ベラさんとグレイスさんと雑談しつつ、冒険者ギルドのカウンターへ向かうと、
「す、ステラさーんっ!」
「タバサさん。どうされたんですか? そんなに慌てて」
どういう訳か、タバサさんの方から話し掛けてきた。
何か急ぎの依頼だろうか。
とはいえ、今日は既に日も落ち始めて居るし、何よりダンジョンから戻って来たばかりでクタクタなので、対応するのは明日になるけど。
「えっと、その……ステラさんに相談がありまして。出来れば、個室で相談させていただきたいのですが」
「私に……ですか? ベラさんとグレイスさんは同席しても良いですか?」
「……アレックスさんに関する話です。先ずは、ステラさんとだけ、お話しさせてください」
アレックスさんの?
確か、エリーちゃんの話では魔族領へ行っているはず。
……そういえば、アレックスさんが魔族領へ行ってから、そろそろ一ヵ月が過ぎる頃だろうか。
何かあったのかしら? アレックスさんにはエリーちゃんも傍に居るはずだし、ローランドさんとは違ってしっかりしているから、私が出る幕なんて無さそうだけど。
「わかりました。一先ず、その話をする前に、今終わらせた依頼の完了報告を先にしてもらっても良いですか?」
「え? えぇ、わかりました。では、お預かりしますね」
請けていた依頼書――ある魔物の角を二十個を集めて欲しい――と、その採取物を渡すと、一旦タバサさんが奥へと姿を消す。
「ベラさん、グレイスさん。すみません、タバサさんから相談があると持ち掛けられましたので、先にお店へ行ってもらっても良いですか?」
「良いけど、アレックスって誰なの?」
「私が以前組んでいたパラディンの方です。今は長期の依頼対応で、別の場所に居るのですが……」
「パラディン!? ステラって、そんなレアなジョブの人とパーティを組んでいたの!? ……あ、まさかステラもそこに行けって話!?」
「それは分かりません。一先ず、話を聞いてみないと……」
「……分かった。じゃあ、とりあえずグレイスと一緒に、いつもの食堂へ行っているから、終わったら来てね」
ベラさんがグレイスさんを連れ、先にギルドを出て行った。
三人パーティとなって、約二週間くらいだけど、これでベラさんが変な勘繰りをして、おかしな事にならなければ良いのだけれど。
「お待たせしました。先ずは、こちらが達成いただいた依頼の報酬となります」
「ありがとうございます」
「それでは、ステラさん。奥の部屋へ」
タバサさんに連れられ、個室へ入ると、
「す、ステラさん! 大変なんですよっ!」
周囲の目が無いからか、かなり切羽詰まった様子になる。
「アレックスさんがどうされたんですか?」
「それが……どうやらアレックスさんは、エリーさんとモニカさん。それからフィーネちゃんの三人を妊娠させたみたいでして」
「……はい? ど、どういう事ですか? エリーさんとモニカさんは分かるのですが、どうしてフィーネさんの名前が出てくるんですか!?」
「実は……」
困った様子でタバサさんが経緯と、何があったかを説明してくれた。
どうやら、最近見かけないと思っていたフィーネさんも、アレックスさんの居る魔族領へ行っていたらしい。
そして、
「えっと、通話魔法による定時連絡がいつもより遅くなったら、アレックスさんたちが男女の営みをしてる最中だったと」
「そ、そうなんです。しかも、聞こえてくる様子から察するに、全く避妊せずにしているようでして……」
タバサさんから衝撃の事実を聞かされる。
パラディン――聖騎士であるアレックスさんが三人の女性全員に手を出しているなんて。
ローランドさんじゃあるまいし、こんなの聖騎士じゃなくて、性騎士……こほん。でも、あのアレックスさんが、本当にそんな不誠実な事をするのかしら?
まぁでも、あの魔族領だものね。ストレスなどで、アレックスさんたちがおかしくなってしまっている可能性もあるかも。
「あの、それは聞き間違いや勘違いなどではありませんか? アレックスさんが、そのような事をするとは思えないのですが」
「聞こえてきた状況からすると、間違いないと思います。毎晩中に出すと言っていましたし……」
「そ、そんな事を!?」
「はい。それで、向こうにはプリーストが居ません。妊娠したとなれば、プリーストが近くに居た方が良いかと思いまして」
「ま、待ってください。それなら、四人をこちらへ戻した方が……あ、今は出来ないと」
タバサさん曰く、今は四人をフレイの街へ戻す事も出来ないし、四人全員が知っているプリーストが、私しか居ないから、白羽の矢が立ったらしい。
「分かりました。命に係わる万が一の場合は、向こうへ行く事もやむなしだと思いますが、そもそも本当に妊娠しているかどうかの確認が先かと」
「あ、確かに。毎晩三人も相手にしていたら、薄くなっていますよね。そうしたら、妊娠しない可能性も……?」
「そ、それは私には分かりませんが、今の私にはベラさんとグレイスさんというパーティがありますので、行くのであれば、本当に必要かどうかを確認してからでないと……」
「わ、分かったわ。じゃあ、今度……何とかエリーちゃんたちに聞いてみるわね」
た、大変な事になってしまった。
私はプリースト。神に仕える身だから、治癒魔法には長けて居るけど、出産……というか、子供を作る行為すらした事がないのにっ!
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