挿話85 水の四天王に仕える事になった、ダークナイトのローランド
「お前がローランドか。ウジ虫のように湧き出て来る人間共の勇者たちを十五組倒したそうだな」
「……まぁな」
ゴードンちゃんに連れられ、水の四天王であるデドリックという奴の所へ来たのだが……随分と偉そうだな。
「す、すみません、デドリック様! 言葉遣いと態度はしっかり言っておきますので……」
「構わん。有能であるならば、それも許そう」
「ありがとうございます」
む……この男は気に食わないが、俺の態度のせいでゴードンちゃんが頭を下げるのは、嫌だな。
仕方が無い。ゴードンちゃんの為に、従う振りをしておくか。
「申し訳ありませんでした。デドリック様」
「いや、分かれば良いのだ。ところで、ローランドとやら。お前は人間族だと聞いているが……同族である人間族の管理は出来るか?」
「……どういう事でしょうか」
「うむ。土の四天王ベルンハルトが治める土地が東にあるのだが、何でも人間族に破れてしまったそうでな。今、人間族の奴隷たちの一部を管理させている者に、東の地の奪還任務を出そうと考えている。そこで、お前にその者の代わりに奴隷たちの管理を任せようと思ってな」
奴隷の管理?
あまり楽しくなさそうではあるが、これを断ると、またゴードンちゃんが頭を下げる事になってしまうのだろう。
「畏まりました。その役目は、是非ともこのローランドが担いましょう」
「ふふ。人間族が人間族の奴隷を管理か……これもまた一興。では、この水の城の北側を管理しているレヴィアタンの所へ行け。お前が何をすべきかは、レヴィアタンから聞いてくるのだ」
「はっ!」
ふぅ、こんな所か。
面倒だが、ゴードンちゃんの為にも、奴隷の管理とやらをするか。
そう思って立ち上がろうとしたのだが、ゴードンちゃんが未だ立ち上がらないので、そのまま待っていると、
「デドリック様。ベルンハルト様が敗れたと言うのは本当なのでしょうか?」
「魔王城から直々に連絡が来たのだから、本当であろう。フフフ……奴は四天王の中でも最弱。我が部下であるレヴィアタンにも劣る存在だ。まぁ見ておれ。東の地を取り戻し、より魔王様からの評価を高めてみせよう」
……デドリックとやらは、高らかに笑っているが、実際に行くのはレヴィアタンという奴なんだよな?
まぁ別に俺の知った事ではないが。
ようやくゴードンちゃんが立ち上がって部屋を出たので、俺もそれに倣い、後に続く。
「ローランド、やったね! 北エリアの管理者だなんて凄いじゃないか。そんな大役は中々回って来ないんだけど、タイミングが良かったね」
「そうなのか? まぁまだ何をするか分からないから何とも言えないが、とりあえず北へ向かえば良いんだな?」
「そうだね。場所はボクが知っているから案内するよ」
ゴードンちゃんに案内してもらい、湖に囲まれた綺麗な城を出ると、北へ延びる大きな川沿いに進んで行く。
かなりの距離を歩き、海が見えてきた所で、
「何者だ」
川の中からマーメイドが姿を現した。
「デドリック様の命により、ダークナイトのローランドを連れて参りました」
「なるほど。聞いていた通り、確かに人間だな」
「……アンタがレヴィアタンなのか? こう言っちゃ悪いが、かなり弱そうなのだが」
どう見ても若いマーメイドで、胸の部分を布で覆った程度の格好で武器も何も無いし、戦えるとは思えないのだが。
「あぁ、これは我の意思を人間族に伝える為の姿……まぁ端末とでも思ってくれれば良い。本当の姿では、ちょっとした事で人間たちを殺してしまうからな」
「なるほど。それで、これから俺は何をすれば良いんだ?」
端末の意味はよく分からなかったが、とりあえず別の姿があると理解して話を聞くと、
「やる事は二つだけだ。それさえ守れば、後は好きにすれば良い。一つは、清掃活動だ。水の四天王デドリック様は非常に綺麗好きだ。人間共の棲み家はもちろん、この川と湖を綺麗に保たせるのだ」
意外な答えが返ってきた。
だが、要は掃除をしろという事なのだが、その辺に沢山居る魔物たちの糞尿も奴隷たちに片付けさせるらしい。
魔族や悪魔とは異なり、魔物は知能がないので、その魔物の世話をする為に人間の奴隷が居るそうだ。
「分かった。もう一つは?」
「人間族の人数のコントロールだな。人間族はすぐに死んでしまうから、適度に交尾させて繁殖せねばならない。とはいえ、勝手に出産されても困るので、ここ北エリアでは男だけを飼っている。人間族は年中繁殖期だから、適度に頃合いを見て、東エリアの女たちと交尾させるのが仕事だ。……あぁ、もちろんお前自身が交尾して増やしても構わんぞ。絶滅させなければ、使えない個体は殺しても構わん」
ほほう。どうやら楽しそうな仕事に就く事ができたようだ。
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