第83話 黒髪の一族の村で見つけた、新しい仲間?

「ここが、黒髪の一族の村……」

「あぁ、シェイリーの話では、かつて黒い髪の人たちが住んでいたそうだ」


 メイリンを連れ、村の跡地へとやって来た。

 前に来た時は、すぐにオークの群れが現れてしまい、ちゃんと調べる事が出来て居なかったので、今回は奥の方まで行ってみる事に。

 盾に灯した照明を頼りに進んで行くと、かつては壁だったと思われる物が所々にあり、時々何かの破片のような物が落ちていたりする。

 全てを見て回った訳ではないが、この村は地上にある東エリアの三倍くらいの広さだろうか。

 それなりの人数が、この場所で暮らしていたと思われる。

 そして村の一番奥には、かなり劣化しているが、ギリギリ建物の形を残している物があった。


「これは、家……いや、窓などが無いから、倉か?」

「旦那様。一先ず、中へ入ってみても良いでしょうか?」

「あぁ、構わないぞ。ただ、何があるか分からないから、俺の後ろについて来てくれ」


 最悪、この中に魔物が居る可能性だってあるので、警戒しつつ扉に近付くと、何かが動く気配がする。

 咄嗟に後ろへ下がり、盾を――灯りを向けると、


「ゴーレムだっ!」


 どこから現れたのか、扉のすぐ傍に、俺の三倍くらいの背丈がある大きなゴーレムが居た。

 おそらく、前にシェイリーの社の前で遭遇したゴーレムと同じタイプだろう。

 どういう仕組みかは知らないが、この倉を守っているのだと思われる。


「エリー! ゴーレムの攻撃は俺が防ぐから、魔法で……待った。どういう事だ?」


 盾を構えて攻撃に備えたのだが、突然ゴーレムが動きを止める。


「アレックス、何かしたの?」

「いや、何もしていないんだが」

「突然、壊れたとか?」

「その可能性も無くはないが、シェイリーの社では、普通に動いていたしな……もしかして、メイリンが居るからじゃないか? 黒髪の一族は襲わないとか」


 試しにメイリンが一歩下がれと言ってみると、ゴーレムが指示に従い、その通りに動く。

 だが、


「じゃあ、ゴーレム。一歩左へ! ……って、私の指示には従わないのね」

「ゴーレム、ジャーンプっ! ……えぇー、動かないよー?」

「ゴーレム。一歩前へ……って、俺の言葉には従うのか」


 色々試した結果、メイリン以外の言葉には従わないが、何故か俺の指示には従うらしい。


「妾と旦那様の命には従う……これはつまり、旦那様が妾の夫――黒髪の一族の王だと認識しているからでは!?」

「違うでしょ。アレックスが、メイリンさんの人形に指示するスキルを持っているからじゃないの?」

「む……まぁその可能性もあるが、いずれにせよ旦那様は、黒髪の一族の王に相応しい資質を持っているという事ですね」


 なるほど。人形指示スキルの効果か。

 確かにエリーの言う通りかもしれないが、どうしてゴーレムが従うのだろうか。

 ゴーレムも魔法人形と呼ばれているし、単純にスキルが適用されたのか、このゴーレムが黒髪の一族によって作られたからか?

 ただ、仮に黒髪の一族がゴーレムを作ったとしたら、どうやってだ?

 流石にゴーレムの子種なんて無いだろうし、そもそもどうやって動いているんだ?

 疑問は沢山あるが、一先ずゴーレムを待機させ、倉の中へと入ってみる。


「魔物などは……居ないようだな」

「先ほどのゴーレムが魔物を近付けないようにしていたのかもしれませんね」


 メイリンの推測に頷きつつ、警戒しながら中を調べた結果、


「おそらくここは、食糧庫だったのではないでしょうか」


 俺には読めないが、所々に彫られた黒髪の一族の文字から、この倉が何だったのかが判明した。

 とはいえ、大昔の食糧庫なので、今は何も残ってはいないが。

 特に得るものは無く、一先ず地上へ戻ろうとして、


「旦那様。このゴーレムはどうしましょうか。妾や旦那様の命に従うようですが」


 メイリンが、巨大なゴーレムの処遇について聞いてきた。


「そうだな。何も残っていない倉を守らせても意味がないし、ゴーレムの好きにしろ……っていうのも出来ないだろうしな」

「力仕事が出来るなら、地上へ連れ帰っては如何でしょうか」

「そうだな。一先ず、俺やメイリンが居なくても暴走しない事が確認出来てからだが」


 とりあえず、暴走しないのかと、何が出来るのかを確認する為、色々と指示を出してみる。

 踊らせたり、全力でダッシュさせてみたり、その場で足踏みをさせたまま、俺たちは姿を消してみたり。

 色々やってみて分かったのは、メイリンの人形とは違い、自分で考えて行動したりはせず、あくまで指示された事に従うのみ。

 空を飛べとか、魔王を倒せ……などという実行不可能な指示を受けた時は、動かずに硬直し、暴走したりはしないようだ。


「では、お主にはゴレイムの名をやろう。旦那様と妾の為に、尽くすのだ」


 一先ず、地上へ連れ帰る事になり、メイリンが名前を付けると、喋りはしないが、なんとなく喜んでいるように思える。

 ……しかし未だに謎なんだが、このゴレイムは大昔から今に至るまで、どうやって動いているのだろうか。

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