第14話 鉄を探して地面を掘るニナが見つけた何か
「お兄さん。じゃあ、ニナは地面を掘って、地下にある鉱物を取りに行ってくる」
「それは有難いんだが、くれぐれも無理はしなくて良いからな?」
「うん、大丈夫」
シャドウ・ウルフに驚いたニナを小屋へ運び、リディアの美味しいお昼ご飯をいただいた後。
ニナが、土の中の方が安全そうだし、落ち着くからと、鉄を求めて地下へ行くと言い出した。
しかし、ドワーフなので土を掘るのは慣れているのかもしれないが、ここへ来た時もツルハシを振るって居たし、奴隷の時と同じ作業をさせてしまう事になるのではないだろうか。
「あ、もしかして、お兄さん勘違いしてる? ニナは穴を掘るのが好きなの。来た時も、強制的に穴を掘らされて居たんじゃなくて、ストレス発散の為に、鉱山で思いっきり穴を掘っていたんだよ」
「そ、そういうものなのか?」
「うん。ドワーフだからね」
そう言って小屋を出ると、ニナが少し離れた場所から斜め下に向かって穴を掘り始めた。
ブラックスミスのスキルで強化したツルハシを使っているからか、スプーンでゼリーをすくうかのように、ニナが硬い地面を簡単に掘り進めて行く。
ロープもハシゴもないので真下には掘れないけど、落盤を防止するスキルがあると言っていたし、何よりニナが掘り慣れているみたいなので大丈夫だろう。
「じゃあ、俺たちは畑作りを頑張るか」
「そうですね。結構色んな作物を作りましたし、そろそろ違う系統の野菜を作っても良いですか?」
「ん? というと?」
「あのですね。もしもニナさんが鉄を見つけて、深手の鍋を作ってくれたら、煮込み料理とかも出来るじゃないですか。浅いフライパン一つだと、出来る調理も限られていましたけど、料理の幅が広がるというか、いろいろ楽しみが増えるというか」
「そういう事か。食事に関しては全面的にリディアへ任せてしまっていて悪いけど、代わりに……という訳でもないが、好きな料理を作ってくれて構わないからな」
リディア曰く、今までは焼いたり炒めたりする調理方法に合う作物を中心に植えていたそうで、これからは違う作物も作るのだとか。
俺としては、現時点でも十分に美味しいご飯を作ってもらっているのだが、リディアとしては、まだまだやり足りないらしい。
一先ず、今日新たに耕した場所をダイコン畑にして、他の作物に水をあげていく。
それから少しして、リディアが夕食を作ってくれたので、ニナを呼びに行く事に。
「くっ……これはちょっと、窮屈だな」
ニナは自分が通れるだけの穴を掘っているから、俺の胸辺りまでの高さしかなくて、かなり屈んで進まなければならない。
ニナのスキルなのか、所々が淡く光っているので、真っ暗ではないものの、腰が痛くなってしまったので、暫く進んだ所で足を止める。
そして、奥に向かって大きな声で叫んでみると、
「ニナー! 晩ご飯だから、戻って来てくれー!」
「お兄さん! 大変! 来てっ!」
逆に切羽詰まった様子のニナから呼ばれてしまった。
正直に言って辛いが、助けを求めている様子だったので放っておくわけにもいかない。
屈みながらも真っ直ぐと北へ向かうトンネルの中を進み、
「お兄さん……ちょっと、見て」
狭いトンネルの中で、何とかニナと身体を入れ替える。
ニナが居た場所の更に奥を見てみると、一番奥の壁に細い割れ目があり、その奥に広い空間が広がっていた。
「地下洞窟?」
「そうみたい。魔物とかが居るかどうかも分からないし、何があるか分からないから、一旦止めたの」
「分かった。今から探索するには、時間が遅いから、この先を調べるのは明日にしよう。この壁を塞ぐ為、リディアを呼んで来てくれないか?」
ニナが急いでリディアを連れて来てくれたので、早速石の壁で塞いでもらった。
この隙間を通れる小さな魔物だとしても、このトンネルを通って壁の内側に出てきて欲しくないからな。
「じゃあ、一旦戻るか。リディアの作ってくれたご飯が待っているぞ」
「やったー! ご飯、ご飯」
「食事が三人分になったので、沢山作れて楽しかったですよ」
適当に雑談しながらトンネルを戻って行く最中、ふと思う。
「ニナ。そういえば、この掘った土って、どこに消えたんだ?」
「消えてない。ドワーフのスキルで、一時的に退避しているだけ」
「退避……って、どういう事だ?」
「ニナも詳しい仕組みは知らないけど、土を別の空間に収納出来る。後で、地上に出たら、その辺に捨てる必要がある」
「空間収納……≪ストレージ≫スキルか! 凄いじゃないか。それはかなりのレアスキルだぞ!」
「でも、土や鉱物以外は入れられない。それに、ドワーフなら誰でも使える」
土専用のストレージか。
ちょっと惜しい感じはするけど、それでも凄い事には変わりない。
地上へ戻り、リディアのスキルで穴を掘ってもらって、そこへニナが掘った土を……
「って、リディアが掘った土は何処へ消えたんだ?」
「……どこなんでしょう?」
やはりスキルや魔法は、まだまだ解明されていない事が多いみたいだ。
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