挿話49 夜の散歩を楽しむマジックナイトのモニカ

「ご主人様。約束ですよぉ」

「くっ……モニカは酒を飲んでいるし、途中で寝ると思っていたのに」


 エリー殿とサクラ殿と私の三人で、ご主人様に愛を注いでもらっていると、最初にエリー殿が脱落した。

 リザードマンの歓迎の席で出されたお酒を飲み過ぎたのだろう。

 飲んだ事の無い酒だったが、かなり薄めてあったみたいだし、飲み易いからと、ついつい進んでしまったのだろうな。

 だが、今日の私は違うっ! ご主人様と愛し合うために、最初の一杯……それも半分も飲んでいないのだ。


「では、ご主人様。夜のお散歩へ参りましょう」

「わかった……が、どうして全裸なんだよ」

「大丈夫ですよ。夜ですし」

「そういう問題ではないんだが……はぁ、仕方が無いか」


 ユーディット様が眠ったからと、分身に代わって来てくださった本物のご主人様と全裸の私が揃って家を出る。

 希望を言えば、タバサ殿が言っていたように、首輪をつけて欲しかったが……一先ず、ご主人様と共にこのようなプレイが出来るだけでも嬉しいので、首輪は次回の楽しみにとっておこう。

 家を出ると、生まれ故郷のフレイの街とは違い、魔法の街灯は無く、家から漏れる灯りも殆ど無い。

 生まれたままの姿の私は、月明かりしかない暗闇の中、服を着ているご主人様の横を歩く。


 ……あぁっ! 改めて今の自分の姿を考えると、とてつもない事をしているな。

 考えてみれば、いつも家の中でしか愛してもらった事がない。

 例外的に地下洞窟でした事はあるけれど、あそこには魔物しか出て来ず、人が居ない場所だったからな。……まぁ事後でソフィ殿は現れたが。

 しかし今のように、いつご主人様以外の誰かに見られてしまうかもしれない場所で愛してもらうなんて……想像しただけで、興奮してしまう。


「ご主人様。どの辺りまで行かれますか?」

「いや、とりあえず村の中を一周するくらいで良いだろ?」


 な、なんと! それはつまり、場所を変えながら、村の色んな所で愛してくださるという事ですか!?

 凄い。では先ず、最初は控え目に物陰で……って、この村に物陰は家の傍しかないっ!

 こ、声を我慢すれば何とか気付かれずに出来るか!?

 しかし、夢中になってしまったら、どうしても声が我慢出来なく……いや、そんな事は後で考えよう。先ずは、愛してもらわなければ!


「ご、ご主人様。では、あちらへ」

「ん? あっちを歩くのか? 良いけど、余り人の家の近くには行くなよ? 迷惑が掛かるからな」


 それはつまり、いきなり難易度の高い、道の真ん中とかで……という事ですかっ!?

 流石、ご主人様ですっ!

 さぁ、いつでもどうぞっ!


 ……あれ? 何故、何もしないのですか!?

 周囲にリザードマンの気配はありませんよ?

 今ならやりたい放題ですよ?

 ……はっ! そうか。タバサ殿は全裸に首輪と言っていた。

 アレは、犬の散歩なのかっ!

 つまり、私が犬のように振る舞わなくてはダメ。犬が二足歩行で歩いたり、喋ったりする訳ないじゃない!

 ようやく、それに気付き、即座にその場で四つん這いになると、


「くぅーん、くぅーん」


 ご主人様の脚にすりすりする。

 さぁ、ご主人様! 今すぐ私を犬のように、獣の如く襲ってくださいませ!

 ……って、スタスタ歩いて行くのっ!?

 これは、先ずは犬の様に散歩してからでないと、ご褒美はあげられないという事ですか!?

 くっ……気付くのが遅かった!

 四つん這いのまま、犬の様な格好でご主人様の後を追い……速いっ! ご主人様、歩くのが速いですっ!

 だが、これもきっと愛の鞭。その分激しく愛してくださいますよね?


「わんわんっ!」


 ご主人様が待ってくださっていたので、何とか追いついて、わんちゃんスタイルをアピールすると、


「ん? 新手の魔物かと思ったら、人間族の客人か? 何をしているんだ?」


 リザードマンだぁぁぁっ!

 暗闇で見間違えたっ!

 というか、全裸っ! どうしよう! ご主人様以外の人に、裸を見られたっ!

 とりあえず立ち上がり、少し距離を取ると、両腕でいろんな箇所を隠す。


「あ、あの……えーっと、い、家が……泊めていただいている家の場所が分からなくなってしまって」

「あぁ、それなら案内しよう。こっちだ」


 あれ? 襲われない?

 助かった。客として来ているし、リザードマンたちが、ご主人様と友好的になりたいと考えているから、我慢しているのだろう。

 ただ、ご主人様以外の男に裸を見られてしまった事に変わりはないが。


「しかし、知らなかったよ。人間族も我々と同じ卵生だったんだな」

「へ?」

「こんな夜中に外で四つん這いになって……卵を産む場所を探していたんだろ? 我々は水辺に卵を産むが……思い出すなぁ。旦那と一緒に、良い産卵場所を探した事。あ、着いたよ。この家が客人用の家さ。じゃあ、頑張ってな」


 えーっと、旦那……って事は、今のリザードマンは女性?

 ご主人様以外の男性に裸を見られた訳ではなかったみたいで、それは良かったけど、


「リザードマンに、人間が卵生だっていう誤った知識を与えてしまったけど……ま、まぁいいか」


 何とか家に戻り、身体の汚れを落とす。

 今度こそご主人様に愛してもらわなきゃ……って、寝てるっ!?

 ご主人様!? ご主人様ぁぁぁっ!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る