第159話 突然現れた全裸幼女

「≪転移門≫」


 ヨハンナさんが聞きなれないスキルを使用し、祭会場の一角――元々はユーディットが作った魔法陣のあった場所が白く光輝きだした。


「では、私たちはこれで一旦帰ります。……ユーディットちゃん。ユーリちゃん。またすぐ来ますからね」

「アレックスさん……天使族の村の守りを再編成したら、また来ますので、どうかまたお願い致します!」

「アーシア。そこは副隊長である私に譲ろうという気持ちは……え、無いの!? それとこれとは別!? ……ふっ、ならば決闘ね」


 ヨハンナさんはともかくとして、アーシアさんとルーシアさんは何を言っているんだ?


「ユーディットはこの村に居ますので、いつでも会いに来てください」

「ママー! また来てねー!」

「ばーば、どこかいっちゃうのー?えー、ヤダー」


 帰ろうとしているヨハンナさんが、ユーリの言葉で踏みとどまってしまったが、ルーシアさんたちに引っ張られ、無理矢理魔法陣の中へ。

 普通の地面に謎の模様が描かれているだけだったはずなのに、深い穴があるかのように天使族たちが飛び込んでいく。

 暫くすると、白い輝きが消え、元の魔法陣へと戻った。

 ちなみに、興味津々と言った感じで、ノーラが魔法陣へ駆けて行き、


「んー、やっぱり天使族じゃないとダメなんだ」


 その上で飛び跳ねたりしていたけど、ヨハンナさんのいう通り、中へ入る事は出来ないようだ。

 一先ず、ユーディットやユーリを除き、天使族は無事に全員帰ったようなので、歓迎パーティの後片付けをする事に。


「そういえば、ユーディットは久々に家へ帰ったりしなくて良かったのか?」

「うん。だって、旦那様と一緒に居る方が良いもん。あ、でも、二人目が出来たら村に帰っておいでーってママには言われたけど」


 ま、まぁ帰れるなら、たまには家に帰った方が良いと思うが。

 一先ず、皆で後片付けをしていると、


「み、ミオ様ー! 大変な事になっちゃったニャー!」


 突然、猫耳で尻尾の生えた幼い女の子が現れ、ミオの所へ駆け寄る……って、全裸!?


「お、おい。ミオ、その子は……って、とりあえずこれを」


 全裸の女の子に慌てて俺の上着を被せると、


「……? む、ムギを捕まえる気なのニャっ! 離すのニャっ!」

「え!? 違うぞ。裸だから、服を着せようと……」

「そんなの着たくないのニャ! ムギは裸が良いのニャっ!」

「よく分からないが、とりあえず服を……」


 麦を捕まえるとか、麦は裸が良いとか、意味不明な事を言いながら女の子が暴れだす。

 だが、少しすると、


「……ニャ? この匂い……知っているのニャ! ミオ様の……交尾相手なのニャ!」

「こう……えぇっ!?」


 ミオよりも幼い、十歳くらいの女の子が、交尾がどうとか言い出し、だが動きを止めて暴れなくなった。

 ただ、相変わらず上着は嫌そうにしているが、何故か俺の事を知っているらしい。


「ミオ。この子は、誰なんだ?」

「……いやー、さっぱり分からないのじゃ」

「えぇーっ! そんなー! ミオ様、ムギですニャ。ちょっと変わった味のミルクを飲んだら、こうなったのニャ」


 女の子の方はミオの事を知っているみたい……というか、ミオしか知らないみたいだけど、肝心のミオが分からないと言う。

 どうしたものかと困っていると、


「あれ? マスター。この肌色と黒い瞳に銀髪……その上、黒と肌色と銀色が混ざった尻尾って、もしかしてムギちゃんでは?」

「ムギちゃん? ムギちゃんっていうと、ソフィやユーディットが可愛がっていた、三毛猫……え?」

「あーっ! いつも頭を撫でてくれる女の子ニャ! ムギの事を分かってくれるのニャ?」


 謎の女の子改め、ムギがソフィに抱きつき、すりすりとソフィの胸に顔を押し付ける。


「ちょ、ちょっと待ってください。ムギちゃん、くすぐったいです」

「にゃーん!」

「ま、マスター。か、可愛いのですが、その、当り所が悪くて、くすぐったいというか、変な感じがするというか……た、助けてください。私にはムギちゃんを引き離す事が……」


 とりあえず、ソフィが困っているので、ムギを後ろから抱きかかえて離したのだが、


「……にゃ? そこを触られると、ムズムズするのニャ」


 胸に手が当たってしまっていて……わ、わざとじゃないんだ。

 だから、ソフィは羨ましそうな目を向けないでくれ。

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