第291話 長くて太いナニか
一晩中、鬼畜モードの分身たちに攻められ続けたビビアナたちが正気に戻るまで襲われ……大変だった。
分身の使い方は、本当に気を付けないと。
それから家に戻ると、
「アレックス、お帰りー! 朝ごはん出来ているんよ!」
エプロン姿のヴァレーリエに出迎えられた。
「そうか。今朝はヴァレーリエが食事を作ってくれたんだな」
「そうなんよ。早く食べて欲しいんよ」
戻って来るのが遅くなってしまった事を詫びながらリビングへ行くと、見た事のない料理が並ぶ。
「いただきます……おぉっ!? なかなかクセになる味だな。初めて食べるけど、旨いぞ」
「リディアに頼んで、竜人族の村に生える香草を出してもらったんよ」
スープの中に麺が入ったフォーという料理や、いろんな野菜を炒めた料理だったり、油で揚げていたり、知らない料理ばかりだ。
「この春巻というのも、旨いな」
「本当はお米の粉で皮を作るんだけど、流石にお米作りからは難しいから……本来の味とはちょっと違うんだけど、喜んでもらえて嬉しいんよ」
ヴァレーリエの美味しい料理と、竜人族の料理は香草を沢山使うという新たな知識を得た所で、人口急増問題に対応すべく人形たちと共に壁と畑を拡張していく。
ちなみに、ステラはエリーやユーディットと行動を共にしてもらい、ティナは、
「あ、アレックスさんの普段のお仕事を見学させて欲しいです」
と、ついて来ている。
暫く作業をしていると、
「あ、あの……エルフのリディアさんが魔法で石の壁や作物を生み出すのは分からなくもないのですが、どうしてパラディンのアレックスさんまで、石の壁を作り出せるんですか?」
恐る恐るティナが聞いてきた。
「あぁ、俺は他の人のスキルがランダムで一つ使えるというスキルを持っているんだ」
「ほ、他の人の!? そ、そんなの聞いた事がないんですけど……どうやったら使えるようになるんですか?」
「えーっと、その、ある程度親しくなったら……かな」
「……親しくかぁ。どれくらい親しくなれば良いんだろ?」
ティナが不思議そうに呟いているが……ちょっと答えられないかな。
いや、答えは持っているんだけどさ。
それから、お昼になったので家に戻ると、今度はエプロン姿のテレーゼに出迎えられた。
「お兄さーん! お疲れ様ーっ! ご飯にする? お風呂にする? それとも、私?」
「え? ご飯……だよな?」
「もぉー、アレックスさんのいじわるー」
テレーゼが何を言っているのか分からないが、リビングへ行くとヴァレーリエに負けず劣らずの料理が並んでいた。
「私が住んでいた地方の料理は、ウインナーを使うのが特徴なんです。とはいえ流石に無いものは使えませんが、ウインナー抜きでも美味しいですので、どうぞ」
いろんな野菜を煮込んでいたり、平らなパスタで野菜を包んでいたりと、手の込んだ料理が多いように思える。
勿論味も美味しくて、皆で絶賛していると、
「では、メインディッシュをお持ちしますね」
そう言ってテレーゼがキッチンへと姿を消す。
手伝うと言ってフィーネも後を追い、二人が料理を運んで来たのだが、二つのポテトの間に香ばしい焼き色の付いた、長くて太いホワイトアスパラが置かれた料理だった。
「本当はアスパラガスではなくて、太くて長いウインナーを使い、白いソースをかけて食べるのですが、今回は代用という事で」
「えーっと、テレーゼこれは……」
「あ、先端からパクッと食べてくださいね。ナイフで切ったりするのは、私の住んでいた所では御法度でした」
いやその、この配置と食べ方って、あからさまにアレに似せている気が……って、夢魔族の村の料理なのか!?
ノーラやムギ、ティナは気にせず、テレーゼに言われた通りに食べているが、モニカやカスミは俺に見せつけながら……いや、普通に食べてくれ。
とりあえず、出された以上残す訳にはいかず、何も考えずに無心で食べていると、
「あ! 何かに似ているなーって思ったら、旦那様のアレみたいなんだー! 旦那様の方がもっと大きいけどー」
「……ぶっ!」
ユーディットの無邪気な言葉でステラが噴き出した。
頼むから、ステラやティナの前で変な事を言うのはやめような。
「こ、これより大きいんですか!?」
あと、ステラもホワイトアスパラと俺を交互に見るのはやめて欲しいんだが。
美味しかったけど、色々と困った食事になってしまった。
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