第18話 やたらと魔力を求めるリディアと、仲間外れが嫌なニナ……に挟まれる俺
「ふぅ……一先ず無事に戻って来たが、地上とは違って、とにかく魔物の数が多かったな」
「そうですね。あと、よりによって虫系というのが嫌ですね。私は、水、土、風、木の精霊とは仲が良いんですけど、虫系に効きやすい火や氷は、仲が良い訳ではないので」
「という事は、いつも料理の時に火を使うのは苦労させているのか? すまないな」
「い、いえ。料理は好きですし、というかその……好きですから」
俺に気を遣っているのか、リディアは料理好きを二回も言わなくて良いのに。
でも、よく考えたらリディアはエルフだからな。
森で暮らしていた訳だし、火も氷も、あまり使わなかったのだろう。
しかし、エリーの攻撃魔法のように、弱点を突いた範囲攻撃が出来ないのは辛い。
いっその事、地下洞窟の探索を諦め、ニナに鉄がありそうな所まで直行してもらおうか。
そんな事を考えて居ると、
「お兄さん。とりあえず、この鉄はどうする? そこまで量は多くないけど、何か作る?」
「え……鉄!? ニナ、いつの間に鉄を掘ったんだ!?」
ニナが土や石専用のストレージスキルから、一抱え程ある鉄の塊を取り出した。
「えっと、さっきお兄さんが倒してくれた、鉄の蠍から採取したの」
「アイアン・スコーピオンから鉄を採取……って、そんな事が出来るのか!?」
「うん。魔物から採れた物でも、鉱物に違いは無いからね。それに、何故だか鉄の質も良いし」
「なるほど。正直、あの地下洞窟を無視しようかとも思っていたんだが、魔物を倒す事は無意味では無いのか」
「んー、そういう意味なら、これも見てよ」
そう言って、ニナがストレージから土? を出してきた。
「ニナ、これは?」
「粘土だよー。これをコップとか、お皿とかの形にして焼けば、器を作れるんだー。それでね、あの地下洞窟の一部が良い感じの粘土だったんだー」
「凄いな。知らない間に、そんな物まで採取していたのか」
「あ、えーっと……お兄さんたちが緑の蠍と戦っている間にね。その、緑のは楽勝そうだったから」
ニナが苦笑いしながら頬をかくが、どうやら俺たちがグリーン・スコーピオンと戦っている間、ずっと粘土を採取していたらしい。
まぁ確かに数が多いだけで強くは無かったし、全員無事だから良いんだけどさ。
「ニナ。とりあえず、そういうのは戦闘が終わってからにしような」
「はーい、ごめんなさーい。……でね、この粘土を採取する為にも、地下洞窟の探索はアリじゃないかな。それと、この粘土と鉄で何を作る? 流石に大きな物は作れないけど」
ニナは本当に反省しているのか? と思いつつも、器が作れるというのは良いな。
「リディア。何かニナに作って貰いたい物は……」
「はいっ! お鍋が欲しいっ! あと、大きなお皿と、小鉢にコップ……」
「ま、待ってよ! そんなに沢山言われても無理だよーっ!」
顔を輝かせるリディアはニナに任せるとして……元々小屋にあった食器は、小さな器とコップが四つだけか。
とりあえずコップはあるから良いとして、
「俺は急須というか、ヤカンというか……飲み物を入れておける大きな容器が欲しいかな」
いつもの食事で、あれば良いなと思う物を伝えてみた。
「あー、それニナも分かるー。ご飯食べてる時に、お水をお代わりする度にリディアへ頼むのも悪いもんねー」
「べ、別に私はその都度、精霊魔法を使っても問題無いですよ? その……アレックスさんが魔力を分けてくだされば」
「でも、寝る前のくつろいでいる時なんかはともかく、ご飯を食べながら時々手を繋ぐのも、どうかと思ってさ」
リディアの体内にどれくらい魔力があるのかと、精霊魔法で消費する魔力の量が分からないので何とも言えないが、最近魔力を分ける頻度が増えている気がする。
魔力を分けるのは全然構わないのだが、少し水を出せば手を繋ぎ、火を使えば手を繋ぎ……リディアが魔法の使い過ぎで疲れていたりしなければ良いのだが。
「え? だ、ダメですか?」
「いや、ダメって訳じゃないんだが」
「だったら、ご飯を食べる時も隣同士でくっついて食べましょう。そうすれば問題解決です」
「……それはそれで、どうなんだ?」
いやでも、思い返してみれば、エリーもやたらと魔力供給を求める時期があった。
魔法をよく使うジョブには、そういう時期があったりするものなのか?
「えっ!? それって、何だかニナだけ仲間外れみたいでヤダ。だったらニナもくっつく」
「ニナさんは、食事の際に魔法を使ったりしないじゃないですか!」
「でも、イヤだもん。ニナも一緒がいいのっ!」
その後、一休みして食事になったのだが、小さなテーブルの前にイスを並べ、俺の右隣にリディア、左隣にニナが座り、常に互いの脚が触れ合っていて……ニナ! 早く急須を作ってくれーっ!
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