第17話 地下洞窟の探索に出発。中は予想通り魔物だらけで……どうする!?

「では、少しだけ隙間を作って、出入り口を塞ぎますね」

「あぁ、頼む」


 この地下洞窟に魔物が居たとして、万が一ニナが掘ったトンネルから魔物が地上へ出ると非常に困るので、リディアに頼んで出入り口を塞いでもらった。

 とはいえ、昨日みたく完全に閉じた訳ではなく、ニナの光る苔の明かりで場所が分かるようにするため、少し隙間を開けているが。


「では、先頭は俺が行くから、次にリディア。ニナは最後尾を任せて良いか?」

「うん、大丈夫!」

「じゃあ、出発しよう。かなり広そうだから、先ずは壁に沿って進んでみよう」


 照明を灯した盾を前に向け、壁沿いに歩いて行く。

 今回は、開拓作業時に着ている革鎧ではなく、本来の装備である鋼の鎧を着てきた。

 そもそも鎧が活躍するような場面にならなければ良いのだが……その考えは甘かったらしい。


「アレックスさん。前から何か来ます!」

「分かった。前の敵は俺が倒すから、ニナは周囲を警戒していてくれ!」

「了解!」


 剣と盾を構えて居ると、明かりの中に沢山の細い脚が映る。


「アレックスさん! グリーン・スコーピオンです! あの尻尾には、相手を麻痺させる毒があるはずなので、気を付けてくださいっ!」

「あぁ。だが……俺に毒は効かないっ!」

「え? あ、倒しちゃった」


 俺の腰くらいまである、大きなサソリが現れたが、パラディンである俺に状態異常攻撃は殆ど効かない。

 なので、ためらう事なく突っ込んで行き、サソリの身体を真っ二つに両断した。


「あの、アレックスさんに毒が効かないというのは……それもパラディンだからですか?」

「その通りだ。とはいえ、完全防御という訳ではないけどな。それより、さっきのサソリがまた来たぞっ!」

「……あ、アレックスさん! じゅ……十数匹居ますっ!」

「くっ……やはり、地上と違って魔物が多いかっ!」


 一般的に魔物は闇を好むらしく、夜になると活発に動き出したり、昼間よりもパワーアップしたりする奴も居る。

 そのため、この光の無い地下洞窟では魔物が集まり、かつ大量に繁殖しているのではないだろうか。

 幸い、そこまで強くない魔物だが、とにかく数が多い。

 奥の手を使う程ではないが、面倒だな。

 そう思った直後、


「≪風の刃≫」


 リディアが魔法を使い、大量のサソリを一気に倒す。


「流石、リディアだな」

「いえ。それより、アレックスさん。どうやら私の魔法が効かなかった魔物が居ます」

「あれ……か」


 リディアの視線の先を見てみると、緑色のサソリ――グリーン・スコーピオンよりも二回り程大きな、灰色のサソリが近寄ってきた。

 とはいえ、サソリには違いないので、一気に近づき、一刀両断……出来ない!?


「くっ……硬い!? ニナに強化してもらった剣なのに!」

「アレックスさん! おそらくあれは、アイアン・スコーピオン……外皮が鉄で出来ていると、本で読んだ事があります」

「大きな鉄の鎧を斬れって事か!? それは、剣では難しいな」


 攻撃スキルを沢山持つ勇者のローランドや、剣に特化したソードマスターなどと言ったジョブならば、普通の剣で鉄をも斬れるのだろう。

 だが俺はパラディンであり、悪魔や魔族には強いが、こういう聖属性が弱点ではない敵を攻撃するのには向いていない。


「リディア。俺がアイツを引き付けるから、魔法攻撃を頼めるか?」

「えっと、虫タイプの魔物は寒さに弱いので、氷属性で攻撃するのが有効なんですが……私は氷系の魔法はあまり得意ではないんです」

「そ、そうか。他の魔法だとどうだ?」

「や、やってみます……≪大地の槍≫」


 リディアが地面から土の槍を生み出し、僅かにダメージを与えたようにも思えるが、余り効いているようにも思えない。

 幸い、この魔物は攻撃自体は大した事が無い……俺と同じ防御特化の魔物のようだ。

 スピードも大した事が無いし、撤退しようとした所で、


「えいっ!」

「ニナ!? ……え? 効いた!?」


 後ろから飛び出してきたニナの振るったツルハシが、あっさりアイアン・スコーピオンの身体に穴を開ける。


「お兄さん! この穴から、魔物の内側へ攻撃してっ!」

「分かった!」


 ニナが開けてくれた穴に剣を突き刺し、そこから穴を広げていくようにして攻撃して、


「とどめだっ! ≪ホーリー・クロス≫!」


 広げた穴から、内部に攻撃スキルを放ち、ようやく倒す事が出来た。


「ニナ、凄いな。よく、あんな硬い外皮を壊せたな」

「お兄さんが、あれを鉄の鎧って表現してくれたからだよ。鉄なら……鉱物なら、ニナの≪掘削≫スキルで壊せると思ったの」

「なるほど、掘削か。……とりあえず、かなり広い事と、魔物が多い事が分かった。色々と準備が必要そうだし、一度戻ろう」


 俺たち三人のジョブと、相性が良くない魔物が現れると分かったので、今回は一旦戻る事にして、リディアの魔法で出入口を塞いでもらう。

 数も多いし、氷属性の範囲攻撃が出来るエリーが居てくれたら……と、心の中で無い物ねだりをしてしまった。

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