第736話 ドワーフの国へ
「ニナ。ちょっと良いか?」
「お兄さん、どうしたのー?」
エリーたちが落ち着いたので分身を解除し、ニナの元へ。
早速用件を伝える。
「西の大陸にドワーフ族の国があるらしくて、これからそこへ行きたいんだ。ニナも一緒に来てくれないだろうか」
「えっ!? ドワーフの国……ニナのおうちに行くのっ!? 行く行く! ニナも行くーっ!」
「そうか。俺としても、ニナが居てくれた方が助かるし、故郷へ帰れるのなら帰してあげたいしな」
「うん! ニナも、パパにお兄さんを紹介したいもん!」
ニナのお父さんに紹介……そうだな。
ニナはエリーやステラたちを除けば、リディアに次いで二番目に魔族領へ来てくれたからな。
あの小屋しかない状態から一緒に頑張った仲だし、家族のように思ってくれているのかもしれない。
「ところでお兄さん。西の大陸って物凄く遠いと思うんだけど、どうやって行くの?」
「あぁ、それならモニカの転移スキルで……あぁっ! しまった! モニカの転移スキルで一緒に移動出来るのは俺だけか!」
「えーっと、モニカの転移スキルって、アレ……だよね? ニナには無理かなー」
そう……だよな。
モニカの転移スキルは、この中では俺しか一緒に移動出来ないから、ニナをどうやっても連れていけない。
唯一方法があるとすれば、ヴァレーリエにもう一度第一魔族領から飛んでもらう事だが、身重という事もあるし、余り無理をさせたくない。
レヴィアに来てもらうという手もあるにはあるが、船だとレヴィアに運んでもらっても結構時間が掛かってしまうんだよな。
「まったく。アレックスよ……仕方がない。我が助けてやろうでは無いか」
「シェイリー?」
「ふふ、忘れたのか? 我は転移の魔法陣を作る事が出来るのだ。必要な聖水も、ユーディットのおかげでそれなりにあるし、足りるであろう」
「なるほど。それなら、西の大陸に直接……いや、安全な場所で、かつ部外者が入って来られない場所でないと困るな」
シェイリーの魔法陣は双方向だからな。
幾らここに強いシェイリーが居るとはいえ、無関係な者や魔物が来てしまうと困る。
となると、天后の居るアマゾネスの村だろうか。
「まぁ我としては、どこに作っても構わぬぞ? ゆっくり決めるがよい」
「いや、大丈夫だ。大体の場所は決めたから、後は細かい場所だけ相談してくるよ」
「ふむ。では先に魔法陣の準備をしておくか。そうだな……この辺りにするか」
そう言って、シェイリーが既にある魔法陣の隣に立つ。
しかし、これで魔法陣も四つ目か。どれが何処へ行く魔法陣かわからなくなってしまいそうなので、看板か何か欲しいところだな。
そんな事を考えている内に、シェイリーが聖水で複雑な魔法陣を描いていくのだが、突然その動きが止まる。
「むぅ……」
「シェイリー、どうかしたのか?」
「うむ。どうやら、我とした事が、少し量を見誤ったようだ。聖水が足りぬ」
「えっ!?」
「仕方ない……アレックスよ。ユーディットと乳女を呼んで来てくれぬだろうか」
「わ、わかった」
とはいえ、モニカはすぐ近くに居るので……って、完全に寝ているな。
よく考えたら、ヴァレーリエに運んでもらった時も、眠っていて途中で起きたんだ。
……モニカが一晩中、ナターリエと謎の戦いをしているからこんな事になるんだが。
「お兄さん。ニナはユーディットを呼んでくるねー!」
「あぁ、頼むよ」
ニナが走ってくれたので、俺はモニカを抱きかかえる。
「……モニカ、起きてくれ」
「ん……もうお腹いっぱいですぅ」
「いや、朝食すら食べていないのに、どうして満腹な夢を見ているんだよ」
「いえ、ご主人様のでお腹が……すぅ」
モニカが俺の言葉に反応したが……起きているのか!?
……いや、本当に寝てるな。
寝言で会話とは、器用な事を。
「旦那様ー! 呼んだー?」
「あぁ。すまないが、少し聖水を分けて欲しいんだが、そこで作れないだろうか」
「えっ!? だ、旦那様のえっち!」
そう言って、ユーディットが何処かに飛んで行ってしまった。
……うん。最近は俺もモニカに……というか、この状況に慣れ過ぎてしまったのだろうか。
普通の感覚だと、ユーディットの反応が正しいよな。
後でユーディットに謝ろうと反省していると、モニカが目覚めた。
「ん……あ、あれ? ご主人様。二回戦……いえ、三回戦ですか?」
「何の事かはわからないが……モニカ。すまない。何処かで聖水を作ってもらう事は可能だろうか」
「良いですよ。何処で作ります? 今すぐここで? ご主人様、私が聖水を出す所をどうぞご覧ください」
「…………シェイリーのところで頼む」
「あ、魔法陣ですか。残念……ご主人様が聖水プレイを御所望かと思ったのに」
ダメだ。一刻も早く、普通の感覚に戻らなければっ!
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