第54話 エリーとモニカのスキル……と、新しい住人?

 シェイリーの所から戻り、昼食となったんだけど、


「ねぇ、アレックスぅー……何が食べたい?」

「んー、この前作ってくれたピザは美味しかったな」

「もぉー、そこはエリーを食べたいって言って欲しかったなー」


 洞窟へ行った前後で、エリーのキャラが変わり過ぎなんだが。

 本当に、あの社の中でシェイリーとモニカから何を言われたんだ?


「乳女さん。一体エリーさんに何を吹き込んだんですか?」

「いや、普通の事を言ったまでなのだが。もしかしたら、ご主人様がエリー殿から得たスキルが、あんなのだったから、態度を改めようとしているのでは?」

「あー、確かにそれは有り得ますね。というか、乳女さんからアレックスさんが得たスキルも大概ですよ?」

「はっはっは。あれは確かに少し反省した。だが、後悔はしていないっ!」

「やっぱり変態じゃないですか」

「断じて私は変態ではない! ただ、ご主人様への愛が深いだけだっ!」


 リディアとモニカがエリーについて話しているんだけど……これは、キスに夢中でエリーの耳に入ってないな。

 ちなみに、シェイリーに見てもらった話では、エリーとモニカから得たスキルは、バーサークと冷気耐性。

 バーサークは、狂戦士とも呼ばれるバーサーカー……程ではないだろうが、怒ると物理攻撃力と魔法攻撃力が上がるというスキルらしい。

 もう一つの冷気耐性は、その名の通りで寒さに強くなるスキル。

 以前にエリーが暴走した事と、モニカが全裸でベッドにいたり、常日頃から胸を露出していたり、ミニスカートで過ごしている事から、各スキルをどちらから得たか、一目瞭然となった訳だ。


「あーっ! エリー、ズルいっ! ご飯作るって言いながら、お兄さんとキスしてるっ! ニナもーっ!」

「じゃあボクも、お兄ちゃんとチュー!」

「見つかっちゃった! 仕方がない。じゃあ、アレックス……また後でね」


 エリーとリディアが料理を始め、今度はニナとノーラに迫られる。

 この家に住む全員と恋人になったからか、誰の目をはばかる事なく、オープンにキスされるようになってしまった。

 これは、こういう時間を制限しないと、日々の作業に支障が出てしまうかもしれないな。実際、昨日の午前中は、予定していた作業が完了しなかったし。


「えへへ……お兄さん」

「お兄ちゃん……あはっ。チューって良いねー!」

「ちょ、ちょっと……私も! 私も混ぜてくれっ! というか、尻尾でガードするのは反則だっ! モフモフ……モフモフがぁーっ!」


 誤解が解け、ちゃんと恋人関係になったモニカだが、ノーラが尻尾ガードという新たな技を使うようになり、近付けないでいる。

 だが、俺もそのモフモフに埋もれたい……あ、キスが嫌っていう訳ではないからね?

 それから昼食を済ませ、それぞれ午後の活動に移ろうかという所で、


「アレックスさん。今、居られますか? あと、エリーさんとモニカさんも」


 天井付近からタバサの声が聞こえてきた。


「……タバサ? あぁ、いるぞ。エリーとモニカの二人も居る」

「タバサさん。お久しぶり……でもないか。とりあえず、私たちは元気にしているわよ」


 タバサから通話魔法があり、こちらの音声が聞こえるからか、リディアとモニカが俺から離れる。

 だが、それをチャンスと捉えたのか、リディア、ニナ、ノーラの三人が俺に抱きついて来た。

 抱きつくのは良いけど、キスはダメだからな?


「あの、モニカさんは……だ、大丈夫でしょうか?」

「私か? もちろん大丈夫だ。ご主人様と一緒に暮らせて、満足しているぞ」

「ご主人様……満足……あー、そういうプレイなんですね。やっぱりアレックスさんは獣……」


 おい、タバサ! ニナやノーラの前で何を言い出すんだ!

 ……と、思ったけど、二人が理解していなさそうだから良いか。

 今、反論すると、余計に変な事を言われて、二人の教育に良くなさそうだしな。


「とりあえず、エリーさんとモニカさんは、仲が悪くないんですよね?」

「ん? もちろん、そんな事は無いぞ?」

「そうですか。一先ず、そちらが修羅場になっていなくて良かったです」


 修羅場? 一体タバサは、こっちをどういう場所だと思っていたのだろうか。


「えーっと、それでは本題に入りたいのですが、アレックスさんとエリーさんに、ある新米冒険者を助けて欲しいんです」

「ん? どういう事だ? 俺たちは暫くフレイの街へ戻れないんだろ?」

「はい。ですから、新人冒険者をそちらへ送ろうかと。あ、本人とギルドマスターからは了承を得ていて、アレックスさんなら任せても大丈夫だろう……と」


 おいおい、ここは魔族領なんだが。

 しかし、あのギルドマスターには駆け出しの頃から世話になっているからな。仕方がないか。


「……分かった。しかし助けると言うのは、どういう意味だ?」

「はい。その冒険者は、ウィッチという珍しいジョブを授かっているのですが、魔法職っぽいのに魔法が使えず、珍し過ぎて、私たちもどう育成して良いか分からず、困っているんです」

「あー、つまり、俺がその冒険者を守りつつ、エリーに魔法の指導をしてもらいたい……と言った感じか」

「その通りです」

「分かった……が、少しだけ相談させてくれないか?」

「分かりました。では、一時通話魔法を中断しますね。暫くしたら、こちらからご連絡させていただきますので」


 そう言って、タバサの声が聞こえなくなった。


「ノーラ。少し相談が……って、ノーラ!? キスじゃなくて……んんっ!?」


 違う、違うんだっ!

 キスして欲しいって話じゃなくて、人が増えるから新しく作る家が、いつ頃完成するのかっていう……ノーラっ! ニナとリディアも、便乗しなくて良いから、話をさせてくれーっ!

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