第55話 お風呂で状態異常

「んー、大急ぎで作るなら、皆が手伝ってくれれば、四日でなんとか……あ、でも内装とか家具とかは別だけど」

「分かった。皆悪いんだが、タバサとの会話が終わったら、全員でノーラの手伝いを頼む」


 新しい冒険者が来ると分かり、流石にこの小屋では人数的に限界なので、新しい家を建て終わってから来てもらう事にした。

 暫くしてタバサから連絡があったので、その旨を話すと、


「分かりました。当然そちらの都合もあると思いますし、四日後にお送りいたしますね。もちろん、その冒険者の分の食料も、今後の送付分に追加いたしますので」


 一先ず、こちらの要望通りの対応となった。

 それから、エリーとモニカは森で木の伐採。ニナがレールとトロッコを作り、俺とリディアがその敷設。そして、ノーラが家造りという役割分担へ。

 それぞれかなり頑張ってもらい、日が落ちて来たので、今日の作業は終了となった。

 その後、皆で小屋に戻ったのだが、


「お兄さーん! ニナ、頑張ったから褒めてー!」

「ボクもボクもーっ!」


 ニナとノーラが褒めて欲しいと抱きついて来る。

 ある意味、いつも通りなんだが、どうして汗を流す為に風呂へ入ってから……全裸になってから抱きついてくるのか。

 あ、作業で汗をかいたから、綺麗にしてから抱きつきたかった? ……そうだよな。ニナとノーラは、未だ変な事を考えないよな。


「という訳で、エリーとモニカは全裸で抱きつくのは禁止な」

「えぇっ!? アレックス、どうしてっ!?」

「そうですよっ! 何故、私とエリー殿はご主人様に抱きついてはいけないのですかっ!?」


 ニナとノーラに抱きつかれながら、お風呂に浸かっていると、エリーとモニカが全裸で近寄って来たので制止する。

 もちろん、エリーたちに抱きつかれたら、俺の身体が危険な事になるからなんだけど……それは察してくれよっ!


「ほら二人とも、リディアみたいに落ち着いてゆっくりお風呂へ入ろうぜ」

「リディアさんは、今日ずっとアレックスと一緒だったじゃない。絶対に途中でキスしたり、抱き合ったりしてるでしょ? 私たちは、午後からアレックスに会えてないんだから、一緒にしちゃダメよ」

「あー……まぁ、うん。何度かくっついたけど、それは石の壁を出してもらう為であってだな」

「ほら、やっぱり! という訳で、私もニナちゃんたちに混ぜてっ!」


 そう言って、全裸のエリーが横から抱きついて来た。

 服を着た状態でも、大きな胸の柔らかさで大変な事になってしまったのだから、当然……その、臨戦態勢になってしまう訳で。


「アレックスー! えへへ……やっとキス出来たね」

「……? 誰か、ボクのお腹の下を触ってる? 何か硬い物が……何これ?」

「の、ノーラ。それは……その、き、気にしちゃダメだよ。そういう時もあるんだよー」


 エリーに顔を掴まれ、キスされている為、正面に居るノーラとニナに言い訳が出来ないっ!

 というか、今は非常に危険だっ! 危険過ぎるっ! ……そうだっ!


「≪リフレッシュ≫!」


 おぉ! ダメ元だったけど、状態異常を回復する神聖魔法で、通常状態に戻った!

 なるほど。ある意味では状態異常だからな。

 とりあえず、これで凌ごう。


「ねぇ、アレックスー。……見てみて。五年前と比べて、私も成長してるんだよ?」

「≪リフレッシュ≫!」

「……ね、アレックス。アレックスさえ良ければ、触っても良いんだよ?」

「≪リフレッシュ≫!!」

「アレックス。もっとキス……えへっ!」


 エリーは過激過ぎないか!?

 すぐ隣にニナやノーラが居るんだぞ!?

 いや、だからこそ小声で囁いてきているのだろうけど、耳元に話しかけてきているから、くすぐったいし、その都度胸が当たるし……状態回復魔法を連発する事になってしまった。


「ねぇねぇ、ニナちゃん。見てみてー! さっきから、これが硬くなったり柔らかくなったり……面白いよー!」

「え、えっと、ノーラ。それは……と、とりあえず触るのはやめておこうね」

「えっ!? ボクもう触っちゃたけど、ダメだった?」

「触……じゃ、じゃあニナも少しだけ……」


 変な会話が聞こえた直後、小さな手の感触が……って、これはダメ過ぎるっ!


「≪リフレッシュ≫ーっ!! 三人ともお湯から出て、身体を洗うぞっ!」

「えぇーっ! お兄さん、ニナはまだちょっとしか……」

「いいから、出るよ。皆、リディアやモニカみたいに静かに……って、あれ? モニカは?」


 俺たちの対面では、少しぬるめのお湯に、リディアがまったりと浸かっているけれど、モニカの姿が何処にも無い。


「ふふっ、ご主人様。こちらをご覧ください」

「ん? ……って、おい。モニカっ!」

「さぁ、ご主人様! 恋人同士となった今こそ、この私の身体を好きなように、ご堪能くださいませっ!」


 呼ばれて振り向き、顔をあげると、俺のすぐ後ろ……というか真上だが、風呂の縁でモニカが仁王立ちになっていて、色んな所が見えてるよっ!


「やっぱり乳女さんは変態……」

「モニカさんは、寒くないのかな? 風邪ひいちゃうよ?」

「……ノーラ。モニカは……えっと、とりあえず真似しないようにね」


 俺もニナと同意見で、ノーラに見ちゃダメだと伝えると、


「ノーラ、ニナ。身体を洗おうか。リディア、悪いけど水を頼む」

「えぇっ!? ご主人様、スルーですかっ!?」

「……良かった。私、あそこまでは、やらなくて」


 リディアに来てもらい、色々と見なかった事にした。

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