第56話 新しい家の間取りを決めたリディア

 女性陣で話し合いがあり、風呂でやり過ぎたペナルティ? という事で、下段のベッドで俺とリディアとニナとノーラ。上段のベッドでエリーとモニカ……要はこれまでと同じように就寝し、朝を迎える。


「お兄ちゃん、おはよーっ!」

「お兄さん……お、おはよ」


 ノーラはいつも通りだけど、ニナは顔が赤いな。

 風邪かな? と一瞬思ったけど、そうでもないらしい。


「え、えっと、久しぶりにお兄さんの上で眠ったから……」


 言われてみれば、昨日はニナが俺の上でノーラが横だったな。

 寝る時は嬉しそうだったけど、朝になって冷静になったら、恥ずかしくなったという事だろうか。

 そんな事を考えつつ、今日も全員で家造りに励む。

 昨日と違う点として、午前中にニナが全てのレールとトロッコを完成させる。


「ニナ、ありがとう。お疲れ様」

「ニナ、頑張ったよーっ! だから、ご褒美のキス……えへへ」


 暫くニナとくっいた後、ノーラの応援に行ってもらうと、次はレールの敷設予定の場所を、石の壁で囲み終わった。


「アレックスさん……ふふっ。やはり、愛する方とのキスは良いですね。幸せですっ!」


 リディアもノーラの応援に回ってもらい、午後にはレールとトロッコの設置も完了。

 エリーとモニカが切り倒してくれている木材を、トロッコで新しい家の建設予定地へ運んで行く。

 その翌日の昼過ぎには、木材が十分だという話になり、俺とエリーとモニカもノーラの手伝いに加わる。


「凄いな。既にここまで出来ているのか」

「うん! 皆が手伝ってくれているからねー! それに、部屋の間取りとかはリディアお姉ちゃんが決めてくれたから、ボクは作るだけで良いしね」


 建築途中の家を見る限り、現在寝泊まりしている小屋よりも、かなり広い。

 部屋数も八部屋くらいありそうで、その中にはキッチンや風呂もあるようだ。

 ちなみにノーラ曰く、もう一人建築スキルを持つ者が居れば、二階建てに出来たと。

 まぁ今回は時間が無かったしな。


「ちなみに、この部屋だけ他より広いんだけど、何の部屋なんだ?」


 リビングにしては場所が少し違う気がするし、そもそもキッチンのすぐ隣にリビングらしき部屋が既にあるんだよな。

 間取りを考えたリディアに聞いてみると、


「そこは寝室です。流石に一人一人の個室というのを、ノーラさん一人で短い期間に作るのは難しいと思いましたので」

「あー、なるほど。個室が欲しいって思う者も居るかもしれないが、仕方がないな」

「まぁ、そことは別に小さな寝室もありますので」

「ん? 皆が寝る場所とは別の寝室?」

「ふふっ……きっと、これから必要になると思いますから」


 何故かリディアが顔を紅く染めているのだが、一体何だろうか。

 ……ゲスト用の寝室とかか? シェイリーの?

 一先ずノーラの指示に従って、俺も木材を運んだり支えたり、出来る手伝いをして、夜まで頑張って今日は就寝とする。


 翌朝、ノーラは予定よりも少しだけ早く、今日中に出来るのでは無いかと言い、今日も皆で家作りを頑張る。

 そんな中、


「……ん? アレックス……あれ、何かな?」

「エリー、どうしたんだ? あれって?」

「ほら、向こうを見てよ。何か大きな……鳥? が飛んでない?」


 エリーに言われて西の空へ目を向けると、確かに大きな黒い鳥のような何かが飛んでいる。

 魔族領には何も――鳥が休める場所も無いので、鳥が飛んでいるのを見るのは初めてかもしれない。

 だけど、


「……ねぇ、お兄さん。あの鳥……ちょっと大き過ぎない?」

「そうだな。しかし、鳥というより、翼の生えた人……って、ちょっと待て!」


 この魔族領へ初めて来た時、あんな感じの、黒い翼が生えた奴が居なかったか!?

 で、そいつを倒したら、神様みたいな声が聞こえてきて……


「皆、俺の後ろへっ! ≪ディボーション≫!」


 真っ直ぐにこちらへ向かってくる者を敵と推測し、慌ててパラディンの上位スキルで皆を守る。

 剣はあるが、盾は持って居ない……今から小屋へ取りに行くには、距離があり過ぎる!


「ニナ! 簡易な物で良いから、残っている鉄で、何か盾のような物を作れないか!?」

「ちょ、ちょっと待ってね! すぐに作るからっ!」

「エリー、攻撃魔法の準備を。敵だと確証が得られたら、すぐに頼む!」


 エリーが返事の代わりに魔力を集中させ、襲撃に備える。

 その直後、大きな翼を持った黒い人型の何かが、俺たちの前に降り立った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る