第627話 完成していたエリラドの孤児院

「ば、馬車の揺れが……こ、これはこれでイイわぁっ!」

「母上……一体、どれ程の体力があるのですか?」

「お母さん。そろそろ寝た方が良いと思うよ?」


 エリラドの街へ向かう場所に乗って居ると、カスミに乗られ、サクラとナズナも俺の分身に乗っているのだが、その二人が若干引いている。


「それだけ体力があると良いですよねー。アレックス様にずっと抱いていただけますし」


 そう言って、いつの間にか馬車に乗り込んでいたグレイスも俺の分身に乗っているのだが……今いるメンバーの中では、グレイスが一番元気そうだな。

 まぁ移動中に気を失って、暫く眠っていたみたいだし。

 というか、カスミを筆頭にサクラとナズナの体力が無茶苦茶なのだが。

 そんな事を考えている内に、馬車がエリラドの街へ到着した。


「アレックス様ー! ボクたちはウラヤンカダの村へ戻るねー」

「あぁ、わかった。運んで来てくれて、ありがとう。ネーヴに礼を言っておいてくれ」

「畏まりました。アレックス様、またちゃんと来てくださいねー!」


 そう言って、ジャーダとジョヴァンナが再び馬車を引いて戻って行く。

 その様子を眺めながら、衣服を整えたサクラとナズナ、グレイスと歩き、馬車の中で俺の上に乗りながら力尽きて眠ってしまったカスミを抱きかかえて、孤児院へ向かう。


「アレックス様。その……母がすみません」

「いや、気にしないでくれ。カスミにはいつも世話になっているしな。それに……今は俺も助けてもらっている訳だし」

「お母さん……いいなぁ。私もアレックス様に抱っこしてもらいながら、して欲しい……」


 馬車の中で出していた分身たちは解除したものの、クワラドの街の屋敷に居るイースとイリスからのマッサージは受けたくて、分身を一体残している。

 だが、このマッサージを受けるようの分身に対して、未だにクワラドの街の屋敷に残っているメイドさんたちや、ヘレナにクララと、屋敷に残っているザシャとシアーシャが代わる代わるいろんな事をしている訳で。

 なので、アレを眠っているカスミに……うん。起きたら謝ろう。

 そんな状態ではあるものの、何事もなく孤児院へ。


「おぉ……孤児院が完成している! まぁ北の大陸へ出発して、数日経っているからな」

「そうですよー! もう、アレックス様……会いたかったですぅーっ!」


 孤児院の敷地に入るなり、カスミを抱きかかえているというのに、横からケイトに抱きつかれ、激しくキスをされるのだが……何か物凄い視線を感じる。

 ケイトが落ち着いて離れてくれたので、視線を感じた方向へ目を向けると、幼い女の子たちが、大勢俺を見ていた。


「いんちょーせんせーが、キスしたー!」

「あのひと、だれー!?」

「せんせーのこいびとー!?」


 前に来た時は、まだ仮設の住居だったが、孤児院が完成したからか、子供の数が凄い。

 確かケイトに加えて、以前エリラドへ向かう馬車の中で孤児院で働いてくれるという女性が三名加わり、更にメイドのジスレーヌの合計五名が成人として働いているはずだ。

 だが、今俺が見ているだけで、この場に女の子が十人以上居る。

 孤児院の建物も大きいのだが、五名で運営出来ているのだろうか。


「あ、そうだ。皆ー! 今日は、このサクラお姉ちゃんと、ナズナお姉ちゃん、グレイスお姉ちゃんと遊ぼっかー!」

「なっ!? け、ケイト殿っ!?」

「匂いからして、サクラさんたちはお楽しみの後ですよね? ここはお願いしますね」

「くっ……しょ、承知した」


 ケイトが無茶ぶりしたと思ったけど、サクラが折れ、ナズナとグレイスも仕方ないか……と言った感じで頷くと、


「はーい! 皆、集合ー! 今から、お昼ご飯までこの三人のお姉ちゃんが遊んでくれますよー!」

「わーい! あそんであそんでー!」

「え……ちょ、ケイト殿!? 向こうから子供たちが沢山……ケイト殿ぉぉぉっ!」


 どうやらここに居た子供たちは、まだ一部だったようで……二十、いや、三十人近くの幼女たちが現れる。

 こ、これは……凄いな。ケイトたちには本当に頭が下がるな。


「さぁ、アレックス様! レナさんが設計してくれた孤児院ですが、何故か地下室が物凄く広い寝室なんです。参りましょう」


 レナ……そんなところまで考慮しなくて良かったんだぞ?

 ひとまず、未だに眠っているカスミを抱きかかえたまま、ケイトに連れられて孤児院の地下へと連れて行かれる事になってしまった。

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