第628話 孤児院の地下室

「あ、アレックス様。という訳で、当初の四人とジスレーヌさんたちだけで、あの人数の子供たちを見るのは大変なので、この七人を新たに雇い、合計十二名です。あと、ここには居ませんが、上の部屋にレナさんとツキさんが、い……ます」

「紹介してくれたのはありがたいのだが……順番が間違っていないか?」

「え、えへ……我慢しきれませんでした」


 ケイトに連れられ、孤児院の地下室に入ると、物凄く広い寝室で……ウラヤンカダの村と同じ様に、沢山のベッドが並んでいた。

 最初は子供たち用のベッドなのかと思ったが、子供たちの部屋は二階らしい。

 で、ここは来るべき時が来た時に使う部屋と呼んでいるそうで……まぁその、分身させられる事になり、ケイトが新たに雇ったという七人を紹介してもらう前に、半分くらいの女性陣が気絶する事になってしまった。


「ふふっ。目が覚めたら、こんな楽しい会が始まっているなんてねー! カスミちゃん、ラッキーだったわー!」

「カスミは、ここへ来るまでの間も散々していただろ」

「それはそれ、これはこれよ。目の前で皆がしてたら混ざりたくなるでしょ?」


 いや、俺に聞かれても困るのだが。


「ところで、アレックス様。新たに雇った七名のうち、三人から先程白い霧のような物が出ていたのですが、あれは何でしょうか?」

「いや、俺にもアレが何かは分からないんだ。一応、魔法に詳しい者に聞いてみたところ、何か害のある物ではないそうだ」

「それなら良かったです。向こうで……今は気絶していますけど、彼女は未経験でして、変な霧みたいなのが出てビックリしたと言っていたので」

「その女性は大丈夫なのか?」

「はい。ビックリしたけど、それ以上に気持ち良過ぎてビックリした! こんなのがあったなんて、今まで人生損してた……と言っていたので」


 ま、まぁ無事なら良いか。

 とりあえず、そろそろ終わりにしたいのだが、構わないだろうか。


「お父さん。待ってー! 久しぶりにポーションの材料を直接集められるねん! もう少し頑張ってやー!」

「……って、レナ!? いつからそこに!?」

「え? カスミさんが起きる前からおるよ? これでバケツ五杯目やし。あ、そろそろツキが新しいバケツを買って戻って来てくれるはず……来たー!」


 よく見たら、レイの人形のレナが分身の一人を捕まえて、ひたすらバケツに出させていたのか。

 というか、バケツに出させる為とはいえ、そんな物を握っちゃダメだっ!


「レナ殿。おそくなってすまない。ひとまず、バケツを十個ほど買って来たが足りるだろうか」

「せやなー。お父さんが次にいつ来てくれるか分からへんんし、それ全部を満タンにするくらいに集めときたいなー」

「わかった。では、私も手伝おう。向こうの父上の分身を一体分けてもらおうか……くっ! 固すぎて、下に向かない!」

「コツがいるねん。無理に向きを変えるんやなくて……」


 ツバキの人形ツキが部屋に入って来たかと思うと、レナと一緒に分身のアレを……って、味見をするなー!


「レナ、ツキ。触るのもダメだが、舐めるのはもっとダメだーっ!」

「えー! そう言われても品質のチェックも大事やん? それに、お父さんがもっと来てくれたら、ウチらももう少し控え目にするで?」

「そうです。ケイトさんなんて、父上が来てくれないので、一時期ノイローゼみたいになったんですよ?」


 えぇ……そうなのか。

 レナの言う、アレの品質のチェックって何だよ……って思ったけど、ツキの言葉でそれどころではなくなってしまったな。


「ケイト、すまなかったな」

「いえ、大丈夫ですよ。こうしてアレックス様が来てくださいましたし、物凄く愛してくださいましたから。今の私は、凄く充足しております」

「私たちもです! こうして久しぶりにアレックス様に愛していただきましたが……やっぱり凄い! でも、出来ればもうちょっと頻度を上げていただけると嬉しいです」


 ケイトと、以前から孤児院に居た三人の女性からお願いされ、何かしら手立てを考えなければいけないなと思っていると、


「あ、アレックス様ぁぁぁっ! も、もう無理です。そろそろ誰か交代してくださいぃぃぃっ!」


 グレイスが地下室に入って来た。

 しかも、その後ろから、幼い声が聞こえて来る。


「あー! ここ、はいっちゃいけない、へやなんだよー!」

「ダメ、ぜったい! って、いわれてるよねー!」

「でも、なかは、どーなってるんだろー?」


 日頃の教育の賜物か、扉の前で止まっているようだが、


「中止! 分身解除っ! 全員服を正すように!」


 マッサージ用の分身以外を大慌てで解除し、強制終了する事にした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る