第411話 自警団と六合教

「ぐ……クソッ! 俺は六合教の幹部なのに……」

「ほら、奴が目を覚ましただろっ! ジャーダとジョヴァンナは早く服を……こほん。お前には聞きたい事がある」

「さっきの男か……って、何だこの壁は? どうなっているんだ!? ……あと、変な匂いがするんだが」


 自警団のトップから話を聞きたかったのだが、魅了状態の二人の女性と、ジャーダたちによってそれどころではなくなり……まぁその、満足させる事に。

 途中で別の女性の自警団員が現れ、ポーションを飲んで居ないのに混ざって来て……おそらくだが、男性の自警団員が現れない辺り、一階に居るサクラが男性を止め、女性は通したのではないだろうか。

 その辺りは後で聞くとして、自警団員の女性三人は全員気絶しているし、先にこの男だ。


「さて、どうしてお前が自警団員のトップなんだ? 他の街の――ウララドやエリラドの自警団と同じ様に、闇ギルドの力なのか?」

「闇ギルド? そんなもの知らねーよっ! それより、俺は六合教の幹部だって言っているだろうが! お前たちの家族や友人、一族郎党皆殺しにされたくなかったら、俺を解放しやがれ!」

「はぁ!? お前、六合教を知らないって……他の国から来たのか。まぁいい。教えてやるよ、六合様の事をな!」


 そう言って、男が六合様という神様? の事を教えてくれた。

 何でも、六合様というのはシーナ国の守り神で、平和や調和を司るのだとか。

 しかも公平で、皆を平等に扱うので、成人時に授かるジョブが合っていなければ、その者に適した――心の奥底にある願望を反映したジョブに変えてくれるらしい。

 その為、シーナ国の国民であれば、知らない者は居ないというくらいに、有名な存在……という話だった。


「王都へ来る前にこの国出身の者へ聞いてみたが、六合なんてのは知らなかったぞ?」

「それはお前が騙されただけだろ。六合様の事を知らない者など、居らぬのだ!」


 うーん。さっきこいつから聞いた六合とやらの情報は、話半分に聞いておいた方が良さそうだな。

 そもそも、本当に平和を司る神様なのだとしたら、その教えに従って居るであろう六合教とやらの幹部が、こんな奴な訳がないからな。


「……で、その六合教の幹部であるお前が、どうして自警団のトップなんだ?」

「今、話しただろうが! 六合教はこの国の王族の大半が信者だ。その幹部なのだから、地位の高いポストに就くのは当たり前だろう」

「ふむ。先程の話では六合教の事を知らない者は居ないのだろ? だが、半分程度しか信者が居ないという事か」

「王族の半分が信者だったら、凄いだろうが! 俺たちが六合教を根付かせるのに、どれだけ苦労したと思っているんだ!」


 なるほど。

 大昔からある教会ではなく、こいつらが作ったか、もしくは昔からあったが、広まったのは最近だという事か。


「お前たちの――六合教とやらの目的は何だ?」

「は? 六合様の教えを広める事に決まっているだろ」

「広めてどうするんだ?」

「信者から金……こほん。そんな事、お前に関係ないだろうが!」


 とりあえず、こいつ一人で六合教の全てを判断するのは良くないとは思うが、割とロクでもない教会な気はするな。

 まぁこいつが、その六合教の幹部というのが嘘だったら別だが、対して実力も無い奴が自警団のトップに居る辺り、本当のように思える。


「もう一度聞くが、闇ギルドの関係者ではないのだな?」

「だから、知らないと言っているだろ! しつこいな!」

「お前は、闇ギルドの者が使っていた、身体が大きくなる薬は使わないのか?」

「そんな物があるのか? 詳しく聞かせろ。男でも効果があるのか!?」


 ふむ。これは演技ではなさそうだな。

 六合教と闇ギルドは関係がないのか?

 それとも、こいつが闇ギルドの事を知らないだけか?

 昨日俺たちを襲ったウェイという男も、六合教という名前を出していたように思えるし……調べてみるか。


「もういいだろ。闇ギルドとかいうのが何かは知らないが、俺とは関係が無い。俺をこの壁の中から出せ!」

「それとこれとは別問題だな。お前の処遇については少し考える。そのまま大人しくしていろ」

「はぁ!? おい、ここから出せっ!」


 気絶している女性陣が全員全裸の為、石の壁を目隠しとして使っているだけで、閉鎖スキルで閉じ込めているから、こいつが逃げ出す事はないだろう。

 とりあえず、気絶している女性を起こして、六合教の事を聞いてみるか。

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