第410話 謎のポーション
扉から中の様子を伺ってみると、女の子を人質に取っている男が、手の甲から血を流している。
ジャーダの話では、サクラがこの自警団のボスを刺したという事だから、まさかあの男がこの自警団のボスなのだろうか。
だとしたら、ここの自警団はやはり腐っているのだろうが……全員が腐っている訳ではないと信じたい。
実際、男とサクラの間に二人の女性が立っていて、
「おい! 俺の命令は絶対だ! その女を魔法で吹き飛ばせ!」
「しかし……」
「うるさい! いいからやれっ!」
ボスと思われる男から、サクラを攻撃するように命じられているが、それに反発して留まっている。
まぁ幼い女の子を人質に取るような男の命令には従いたくないよな。
一先ず、女の子の安全が最優先なので、部屋の中に飛び込むと、
「≪ディボーション≫」
真っ先に女の子へパラディンの防御スキルを使用し、ダメージを俺が肩代わり出来るようにした。
その直後、サクラが跳躍し、一気に男との間合いを詰める。
「なっ!? お前たち、このガキがどうなっても良いみたいだな! 悪いが俺は女子供でも容赦しねぇっ!」
男が剣を持った手を動かそうとしたが、それより先にサクラが剣を弾き飛ばす。
そのまま女の子を抱きかかえると、男を蹴った勢いで、俺の後ろへ。
「サクラ、ありがとう。そのまま後ろへ。その子を頼む」
「承知しました」
一先ず、これで女の子は無事だろう。
次は、あの男から話を聞くか。
だが、男が発狂したかのように、女性の自警団員たちを怒鳴りつける。
「くっ……おい、お前たち! お前たちがアイツらを攻撃しないから、俺が攻撃されたじゃねーか! 今すぐ攻撃しないとクビだっ! 早くしろっ!」
「うぅ……ご、ごめんなさい。≪アイシクル・スピア≫」
「……≪ウインド・カッター≫」
二人の女性から、氷と風の魔法が放たれたが、氷の槍を剣で叩き落し、風の刃を盾で防ぐ。
「え……魔法を斬った!?」
「風の刃が防がれた……」
「お、お前たち! 何をしているっ! アレだ! 今こそアレを飲めっ! 能力向上ポーションだっ!」
俺が魔法を防いだからか、唖然とする女性二人に男が声をかけ、ハッとした様子の二人が小瓶を取り出す。
何処かで見た事のある容器の中身を一気に飲み干すと、
「はっはっは! こいつらが飲んだのは、副作用無しで飲むだけで能力が向上するという究極のポーションだ! 女にしか効果が無いのは残念だが、これでお前らも終わりだっ!」
男が得意げに叫びだした。
だが、そのポーションはおそらく……
「あ、あれ? ど、どうして!? こ、この人の事が愛おしくてたまらないです……」
「抱いてください」
やっぱりかぁぁぁっ!
その容器と効果……商人ギルドが買い取ったステータスアップ・ポーションじゃないかっ!
「は……? いや、お前たち何をしているんだ!? そいつは敵で……何故、服を脱ぐ!? お、おい、その男を倒せって!」
男が一人で焦っているが、とりあえず黙らせるか。
この男は女の子を人質に取るような奴で、大した力はないと思われるので、軽く……本当に力を抜いて、一発殴っておいた。
「げふぅっ! ま、待て! 俺が誰だか……」
「知らん。とりあえず、この自警団の長なのだろう? あと、女の子を人質に取った時点で、何を言おうと許さん!」
「こ、これ以上俺に攻撃すると、六合教が黙ってないぞ!? 俺は六合教の幹部なんだっ! ……がはっ!」
「そんなの知らないし、関係無い。……が、困ったな。自警団のトップがこれか。何処に突き出せば良いんだ?」
思わず二発殴って気絶させてしまったので、逃げられないように閉鎖スキルで動きを封じ、治癒魔法で起こそうと思ったのだが、
「凄い……格好良いです。好き!」
「強い人って好きです。早くお願いします」
魅了状態になっていると思われる女性二人が迫って来る。
「お兄さん。今朝の続きをするのー? ボクも混ぜてー!」
「私もお願いしまーす!」
ジャーダもジョヴァンナもしないから。混ざろうとしない……いや、押し付けないでくれってば。
とりあえず、魅了状態の二人をどうにかしなければ……と思っていると、
「……なるほど。エッチな事って、あぁやって裸で迫らないといけないんだ」
「って、何を感心しているんだよっ! サクラ、その子を一階へ連れて行ってくれ」
「私が居ない所でエッチな事をする気なんだーっ! ちょっとくらい見学させてよーっ!」
「そんな事しないし、見学もさせないって。……って、こっちはこっちで脱がそうとするなっ!」
助けた女の子が変な事に興味を持ってしまった。
あと、サクラも羨ましそうにするなよ。本当に何もしないから……しない、しないってば!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます