第21話 リディアの美味しいご飯と、危険な自己紹介タイム

「ちょ、ちょっと何してるのよっ! 今は私がアレックスと感動の再会を果たしている所でしょっ!」

「何が感動の再会ですかっ! 先ほどまでの話からすると、たかだか数日振りですよねっ!? 感動も何もないでしょっ!」


 エリーとリディアが、俺に抱きつきながら口論を始めた。

 しかし、確かにリディアの言う通り、感動の再会という程、時間は経っていないな。

 だが、これは再び俺が沈黙魔法を使わなければならないという事だろうか。


「お兄さん。ニナも抱きついているのに、二人から仲間外れにされてる」

「いや、これには混ざらない方が良いと思うぞ……という訳で、二人ともストップ。リディアは夕食を頼む。エリーは、一旦落ち着こう。それから、どうしてエリーがここへ来たんだ?」

「うぅ……アレックスの反応が、想定していたよりも薄い。……こほん。えっと、ここへ来たのには色々あってね」


 一先ずエリーとリディアを止め、俺から一旦離れてもらう。

 仮のキッチン代わりの一角――と言っても、食材の入った大きな箱があるだけだが――へ移動すると、リディアにも聞こえるように話す事と、突然抱きついたりしないという事をエリーが約束し、ようやく事情を聞ける事になった。


 話を聞くと、何でも俺が抜けた後に、エリーがローランドに襲われかけ、愛想が尽きて俺の所へ来たとの事だ。


「……そうか、ローランドがそんな事を」

「うん。突然、私をベッドに押し倒してきたから、ステラたちにも気を付ける様に伝えて、パーティを抜けて来たの」

「だけど、ローランドとエリーは恋仲ではなかったのか?」

「違うわよっ! 誰があんな男と! それはローランドが一方的に言っているだけで、私はアレッ……あれよ。その……とにかく、ローランドと恋仲だなんて、大嘘なのよ。信じて、アレックス」


 そう言って、エリーが顔を赤く染めながら、俺の顔をジッと見つめてくる。

 エリーは顔を真っ赤に染める程、嘘を吐かれた事に対してローランドへ怒りを募らせているようだ。


「わかった。そういう事なら、俺たちと一緒にこの魔族領の開拓をして欲しい」

「えぇ、任せて! ……だけど、その魔族領に、どうして女の子とエルフが居るの? 誰も居ない場所なんじゃなかったの?」

「あぁ、それなんだがな……」


 エリーの疑問は至極当然なので、新たに得た奴隷解放スキルの事を説明すると、


「……な、何なの!? そのスキルは! そんなの聞いた事が無いし、どうして女の子ばかり解放されているのっ!?」

「いや、それを俺に言われても困るんだが」


 何故か物凄く不機嫌そうに詰め寄って来る。

 そんなタイミングで、


「アレックスさん。火を使いたいので、魔力をお願い出来ますか」

「あ、あぁ。分かった。エリー、ちょっと待っていてくれ」

「ど、どこに行くのっ!?」


 リディアに依頼され、小屋の外へ。

 すぐそこだと伝えると、エリーもついて来たので、リディアの料理する様子を皆で見学する事に。


「……本当なら、その役は私がするはずだったのに……って、アレックス!? どうして、その女性の腕を触っているの!? 触りたければ、私の腕を触れば良いじゃない!」

「いや、別に腕を触りたい訳じゃなくて、魔力を分けているんだよ。エリーにも、よく分けていただろ?」

「あー……って、どうしてずっと魔力を分け続けてるのよっ!」

「ここは魔族領だからな。燃やせる物が無いんだ。だから、こうして火を出し続けて貰って居るんだ」


 しかし、今までこうして毎日リディアに料理を作って貰ってきたけど、エリーの攻撃魔法だと、こうはいかないかもしれない。

 アークウィザードの扱う魔法は、使用時の威力は凄いけど、持続して使い続けるタイプの魔法はあまり無かったはずだ。


「出来ましたっ!」

「旨そうな匂いだな。リディア、いつも有難う」

「……それも、私が言ってもらうはずだったのに」


 何故か頬を膨らませているエリーに声を掛けて小屋へ戻ると、ニナが食器を並べ終えていて、


「ごっはん、ごっはんー」

「今日はニナさんが作ってくれたお鍋で、初の煮込み料理、ポトフを作ってみましたー! ……えっと、エリーさん? 貴女もどうぞ」


 ポテトやブロッコリーなどが沢山入ったスープが並べられた。


「とりあえず、食事をしながらお互いの事を紹介するという事にして、先ずは早速食べようぜ。いただきます!」

「いっただっきまーす」

「……いただきます」


 ニナとエリーが俺に続き、リディアの作ってくれた料理を口へ運ぶ。


「うん。流石はリディアだな。凄く美味しいよ」

「えへへ、ありがとうございます。調味料の中にコンソメがあったので、前から使いたかったんですけど、やっと使えました」


 それから、暫し食事を進め、


「では、今日から俺の幼馴染のエリーが、ここで一緒に暮らす事となったので、互いに自己紹介をして貰いたいんだが……じゃあ、ここへ来た順でリディアから」


 自己紹介を始める事にした。……したんだが、


「リディアです。見ての通りエルフです」

「……って、それで終わりなのか?」

「では……得意としている精霊魔法を用いて、アレックスさんに愛情たっぷりの美味しいお食事を作っています。それと、同じく精霊魔法を使い、アレックスさんのお身体を綺麗にし、夜は抱き合って眠り、互いを温めあって……」

「ちょっと待った! ま、間違いでは無いんだか、少し表現がおかしくないか!? というか、次はニナに行こう。さぁニナ、頼む!」


 リディアの自己紹介が、色々と誤解を招く内容だったので、終わらせる事に。

 それからニナが自己紹介を始め、


「ニナはドワーフだから、鉱物を扱うのが得意。お兄さんは命の恩人ではあるけど、全てを見せ合った仲だし、もう家族みたいな感じかなー」

「……全てを見せ合った? アレックスは、ここで一体どんな生活をしていたの? 是非、詳しく聞かせて欲しいんだけど」

「エリー? な、何か変な誤解をしていないか!? エリーっ!? エリィィィっ!」


 戦闘時に使う、魔力を増幅させる杖こそ持っていないものの、何故か手に魔力を集めだしたエリーを全力で止める事になってしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る