第226話 南からの使者
「あれは……鳥か? いや、それにしては大きいな」
「む……げっ! あやつは……」
「ん? ミオは、あの鳥が何か知っているのか?」
「う、うむ。あの鳥は、式神なのじゃ。そして、この魔力……あの鳥の背に、我の知人が乗っているようなのじゃ」
ミオの知り合いか。
式神と言っているし、狐耳族なのかもしれないが……ミオが顔をしかめているな。
苦手な相手なのだろうかと思っているうちに、上空の鳥が急降下してきた。
地面に降り立った大きな灰色の鳥から、二人の女性が降りると、その鳥が一瞬で姿を消す。
そして、二人の女性のうち、銀髪の女性が近寄って来たのだが、何故か突然怒りだした。
「貴方たちは、こんな所で何をしているのですか!? ここは立入禁止区域です! その上、赤竜の目撃情報もありましたので、急いで壁の中に戻ってください!」
「壁?」
「えぇ。方法は後で聞かせてもらいますが、壁を乗り越えて、ここへ侵入したのでしょう? 私は自警団の副団長、ジュリです。指示に従わないのであれば、貴方たちを力づくで壁の中へ連れ戻します!」
ふむ。壁の中へ……というのは分からないが、南の空からやって来た事と、連れ戻すという言葉から、俺たちが南の街からやって来たと思われているのか。
「何か誤解しているようだが、俺たちはこの地に住んでいる者だ。この先にある街へ行きたいと思って……」
「この地に住んでいる!? 災厄級の魔物が大量に居る魔族領に……ま、まさか魔族!?」
「魔族な訳がないだろう。俺はアレックス。冒険者ギルドから来たパラディンだ」
「なっ!? 貴方が、あの侵略者の……」
いや、侵略者って。
どういう意味か聞こうと思った所で、後ろにいた、もう一人の女性が歩み寄って来る。
「ジュリ殿。此奴らが敵だと分かりました。後は、私にお任せください」
「マミさん……分かりました。すみませんが、お願い致します」
マミと呼ばれた、茶髪の中から丸い耳が生えている女性が前に出たところで、俺の後ろに居たミオも前に。
何をするのかと思っていると、
「何が、私にお任せ下さい……なのじゃ!」
「ふふっ……魔力ですぐに分かったわ。ミオ……どうやったのかは知らないけど、こんな所に逃げていたのね」
「逃げた訳ではないのじゃ。色々あって、ここでアレックスの手伝いをしているのじゃ!」
突然ミオがマミに向かって叫びだす。
暫くミオとマミが睨み合っているが……身長差があり過ぎて、親子のケンカのように見えてしまうのだが。
一先ず、知り合いではあるが、仲が良くない事は分かった。
あと、マミの耳は丸いので、ミオと同じ狐耳族でもないようだ。
耳だけで判断すると、ビビアナの耳に似ているから、熊耳族……なのか?
「あの、マミさん。そちらの子供は?」
「ジュリさん。見た目に騙されてはいけません。このロリB……こほん。見た目こそ幼いですが、九尾の……」
「何を言っておるのじゃ! お主の方こそ、訳の分からぬ格好をしているのじゃ! 普段はそんな姿ではないのじゃ!」
二人が一触即発……今にも飛び掛かりそうな様子だったので、一先ずミオを抱き上げる。
「あ、アレックス! 待つのじゃ! 我が可愛いのは分かるが、そういう事は、こやつを追い払ってからにするのじゃ」
「いや、何をする気なんだよ」
「何って、もちろん子作りなのじゃ。だが、そっちの銀髪の女はともかく、こいつだけは混ぜてやらんのじゃ!」
どうしてミオの中では、初対面の女性を混えて、皆でする事になっているんだよっ!
というか、そもそもそんな事はしないって!
……サクラもヴァレーリエも期待した目で俺を見ないように!
あと、リディアはジト目を向けないっ!
「なっ!? こんなに幼い子供と、そのような事を!? しかも、初対面の私をその様な目で見ていたのですね!? ……へ、変態ですっ!」
「違うぞっ! いや、まぁ確かにミオとは……げふんげふん」
「そうだ。今のはミオ殿が言っただけで、ご主人様が言った訳ではないであろう! そもそも、私程ではないが胸の大きな貴殿が、ご主人様の愛を易々といただけると思うな! ご主人様は、幼女がお好きなのだっ!」
モニカ……頼むから、もう喋らないでくれ。
ジュリの目が、生ゴミでも見るかのような冷たい目になっているじゃないか。
……リディアの目も冷たくなっているんだが、リディアは誤解だと分かってくれるよな!?
「幼女好きの男だなんて、これは放ってはおけませんね。ミオ、私と勝負よ! ミオが勝てば、その男は見逃しましょう。しかし、私が勝ったら、その男の事を好きにさせてもらいます!」
「ふっ……言っておくが、我の事を以前のままだと思わぬ方が良いのじゃ!」
「そっちこそ、私に負けて奴隷にされた事を忘れたの? まぁいいわ。こっちから行くわよ! ≪招来≫!」
って、ミオ!
俺に何の断りも無しに、勝手に勝負を受けるなよ!
それに、ミオが奴隷にされた原因……って、本当なのか!?
マミはマミで、変態は許さない! と言わんばかりに俺を見てくるし……って、ちょっと待て! 突然何か現れたんだが。
「どうかしら。私が召喚したのは、ブルーオークよ」
「ふっ。甘い、甘すぎるのじゃ! 次は我の番……≪六壬≫!」
いやいやいや、ミオの使ったスキルって、何が現れるか分からず、しかも言う事を聞かない奴が召喚されるかもしれないスキルじゃないかっ!
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