第227話 久々の召喚

 ミオが久々に謎の板を取り出し、十二体居る凄い存在の誰かが来るスキルを使ってしまった。

 以前、ミオが使った時のようにシェイリーが来てくれたのなら大丈夫だが、それ以外のが来ると非常に困る。

 ハラハラしながら見守っていると、宙に巨大な影が現れた……って、おい。コイツは……ダメだろ。


「ふふふ……ミオは、全く成長していないじゃない。前に勝負した時と同じ、燃える蛇なんて召喚して、一体どうする気なの? その式神は確かに強いでしょうけど、コントロール出来なければ、無意味よ!」


 勝利を確信した笑みを浮かべたマミの言う通り、炎に包まれた空飛ぶ蛇――騰蛇が現れた。

 というか、以前に勝負したという時も騰蛇が現れたと言っていたが……前に訓練場でこのスキルを使った時も現れたし、騰蛇の割合が多くないか?


「む……騰蛇か。これは、微妙なのじゃ」

「ミオ。マミは騰蛇を倒せる程の魔物? を召喚出来るのか?」

「いや、以前にマミと勝負して騰蛇が出た時は、我の言う事を聞かずに何処かへ行ってしまったのじゃ。それで、不戦敗という事になってしまったのじゃ」


 あー、前も騰蛇がミオの言う事を聞かず、結局エリーの人形たちによる氷魔法の連打で倒したんだよな。

 ……って、魔法陣の周囲に建物を作ってくれているノーラの手伝いの中に、エリーの人形は居ない。

 メイリンも来ていないから、ここからサクラに魔法陣まで走ってもらって、人形経由でエリーの人形たちに来てもらって……って、かなり時間が掛かってしまう!

 どうしたものかと思っていると、騰蛇の姿が前に見た子供の姿に変わり、


「アレックス! あの……会いたかった! やっと会えたーっ!」


 いきなり抱きついて来た。


「え? ……ど、どういう事なのっ!? 式神が子供に!? しかも、あれだけの巨大な力を持っている式神が、あの男に懐いている!?」

「アレックスぅー! 前みたいに、俺様の中に沢山出して欲しいんだ! お願いっ! あれ以来、アレックスの事が忘れられなくてさ!」

「……は? いや、あの式神は神獣クラスの力を持っているのに。ど、どういう事なの? み、ミオ! 説明しなさいよっ! ……い、いえ。それより、あの式神は既に勝負を放棄しているわね! わ、私の勝ちよっ!」

「……そこのお前、五月蠅い。せっかくのアレックスとの再会なのに、邪魔をするなっ!」


 騰蛇がそう言った直後、止める間もなくマミに向かって炎を放ち、


「いやぁぁぁっ! へ、≪変化≫!」


 何かのスキルを使ったらしく、小さな子供の姿になったマミが何とか炎を回避する。

 ただ、マミが召喚していたブルーオークとかいう魔物は、跡形もなく炭になってしまい、後ろにあった石の壁も壊れてしまったが。


「な、何て威力なの!? これが召喚士同士の戦いなんですね。……ま、マミさん? 大丈夫ですか? ……しかし、そのお姿は?」

「む、無理ポン! あの魔力は何ポン!? というか、ミオが制御出来ない炎の蛇を懐かせている、あの男は一体何者なのポン!?」


 子供の姿になったマミを見てジュリが困惑しているが、そのマミはもう完全に戦意を失っている。

 あと、マミが子供になってから、語尾がおかしいんだが。


「ちょっと待ちなさいよ! いきなり現れて、ウチのアレックスとしたいだなんて、図々しいんよ! アンタは何者なの!? それと、そもそもアレックスとは先にウチがするんよ! 今朝からずっと我慢しているんだからっ!」

「ん? 俺様に言っているのか? ……まぁアレックスの女の一人っぽいし、無礼な態度は許してやろう。俺様は、騰蛇! アレックスの女だ!」

「女……? 男の子に見えるんよ」

「くっ……まぁいい。で、アンタは誰なんだ?」

「ウチ? ウチは、赤竜種の竜人族であるヴァレーリエよ。アレックスの子供を授かる……予定よ」

「なんだ。要はレッドドラゴンか。俺様の仲間みたいなもんじゃないか。よろしくな!」


 ……って、こっちはこっちで、どうして俺に抱きつきながら互いに自己紹介しているんだ!?

 今は、そんな事をしている場合じゃないだろ!


「レッドドラゴン!? ほ、本当なの!? だったら、私たちが討伐……」

「止めるポン! レッドドラゴンだけなら、まだ勝ち目はあったポン! でも、あの蛇……騰蛇? は無理ポン! 格が違い過ぎるポン!」

「し、しかし、私は自警団の副隊長として、レッドドラゴンを討伐する為に……」


 なるほど。ジュリとマミは南の街から派遣されたレッドドラゴンの討伐隊だったのか。

 しかし、二人でドラゴンと戦おうとするなんて……いや、マミが対ドラゴン用の何かを召喚するつもりだったのかもしれないな。

 とりあえず、レッドドラゴンは街を襲うつもりがない事を伝えなければと思っていると、不意に騰蛇が俺から離れる。


「まったく。あっちの二人は、本当に五月蠅いなぁ」

「待った! 騰蛇! あの二人には攻撃するな!」

「えぇー! でも、あの銀髪の女の方は、戦う気らしいよ? ……ふふ。じゃあ、アレックスから突いてもらう前に、あの女にわからせてあげないとね」

「お、おい! 騰蛇!?」

「大丈夫。命は取らないよ……命はね」


 騰蛇は何をする気なんだ!?

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