第191話 謎の名前

「熊耳族のビビアナッス。スノーウィさんの遣いと、お手伝いとして暫くお世話になるッス。暫くすると、一旦召喚魔法で呼び戻されてしまうけど、自分はアレックス様の妻になると決めたので、必ず戻って来るッス。どうぞ宜しくッス」


 牛舎の完成後、夕食の途中でビビアナと他の女性陣に自己紹介してもらった。

 ……地下洞窟へ行っていたエリーからジト目を向けられてしまったが。

 口には出さないが、視線で何を言いたいかが分かってしまうが……い、色々あったんだよ。

 エリーと目で会話した後、風呂の時間となったので、


「ビビアナ。ここには風呂が一つしかないんだが……まずネーヴみたく、お湯が苦手だったりはしないよな?」

「大丈夫ッス。むしろ、お風呂は大好きッス」

「わかった。この人数だし、前半と後半に分かれているから、ビビアナは先に入って欲しい」

「了解ッスー」


 ノーラたちと一緒に風呂へ入ってもらう事に。

 尚、種族的に風呂が苦手なネーヴは、いつも前半のメンバーが風呂へ入っている間に、リディアに出してもらった水で身体を洗っていたりする。

 それから、後半メンバーと交代して、俺と共に風呂へ入ったのだが、


「アレックス……何これっ!? こんなの……っ!」

「アレックスさん。い、一体ビビアナさんからどんなスキルを……ら、らめぇれすぅぅぅ」

「アカン……アレックスはん! いつもより、更に凄いぃぃぃっ!」


 エリーがすぐに限界を迎え、リディアとレイが気を失ってしまった。

 分身側でもサクラとツバキが大変な事になっており、その様子を見たメイリンが、優しくして欲しいと、俺の……本体の所へ来る。

 ビビアナは熊耳族で腕力に自信があると言っていたし、力が強くなり過ぎているのか?

 流石に怪我をさせる訳にもいかず、分身を解除しようとして……ミオとモニカに怒られつつ、風呂を終える。


「≪夢見る少女≫」


 それから、いつもの如くフィーネとソフィの時間となったのだが、


「アレックス様ぁっ! 好きっ! 大好きっ!」

「ま、マスター! す、凄いです! いつもより身体の奥に響きますっ! 何か、何か頭の中がおかしくなりそうです! ……あぁぁぁ、見た事のない景色が頭の中に描かれますぅぅぅ!」


 風呂では遠慮していた二人が本気を出してきたのだが、どちらも様子がおかしい。

 やはりリディアの言う通り、ビビアナから得たスキルの影響なのだろうか。

 フィーネが俺の上でぐったりと眠りに落ち、ソフィが自動行動で俺の分身と延々と……い、いつもよりもソフィの痙攣が激しいのだが、大丈夫だよな?

 そんな事を思いながら就寝しようとしていると、部屋の扉が開いた気がする。

 敵意は感じられないが……って、ムギがベッドに上がってきた!?


「ムギっ!? な、何を……じゃない。その、これはだな、俺たちは……」

「知っているニャー。人間の交尾だニャー。それより、この沢山あるミルクを貰っても良いニャ?」

「ミルク? えーっと、まさか……これの事か?」

「そうニャー。このミルクは、凄く美味しいニャー。いつも、お風呂に落ちているミルクを貰っていたけど、今日は足りなくなってしまったニャー。で、他にないかと思って匂いを辿っていったら、この部屋に着いたニャー」


 匂いを辿って来たって、部屋の外までこの匂いが……いや、していてもおかしくないか。

 我ながら凄い量だし、ソフィはともかく、フィーネからは大量に溢れ出ているしな。

 その溢れ出ているアレを、ムギが持って来ていた器にかき集めているのだが……そ、そんな場所をマジマジと見られてしまっているのは、どうなのだろうか。


「……えーっと、かなりの量があるが、ムギはそれを飲むのか?」

「お風呂にあるのと違って、お湯が混ざったりしていなくて濃いからムギも少し貰うニャー。だけど、これはムギの分じゃ無いニャー」

「え? だ、誰の分なんだ?」

「ボルシチの分なのニャー。じゃあ、ムギは戻るニャー」

「ボルシチ? いや、ボルシチって誰なんだ? ムギー! ムギー!?」


 どういう訳か、フィーネのスキルがムギに効いておらず、かつ謎の名前を残してムギが部屋を出て行ってしまった。

 ボルシチって、本当に誰なんだ?

 ……というか、そんな名前の料理があったような気がするんだが。

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