第488話 和解交渉?

「……あー、つまり貴方は、女性を惹きつけてしまう体質だと?」

「そうなんだ。このせいで、街や村へ行く度に、これに近い事が起こっているんだ。ただ、こういう事になってしまった相手に、責任はしっかり取らせてもらう」

「……取らせてもらうと言いますが、軽く数十人の女性が居るのですが」


 分身を使い、何とか最悪の事態――既婚者だけは避ける事が出来た。

 ただその代償として、村の独身女性の殆どを気絶させる事になってしまったが。


「ひとまず相談だが、各女性に三つ提案しておいて欲しい」

「……と、言いますと?」

「あぁ。先程も言ったが、俺が近くに居ると、女性が冷静で居られなくなってしまうようなんだ。ある程度離れていると大丈夫だから、俺が居ない所でこの話を伝え、それぞれで答えを出して欲しい」


 村の村長へ、責任の取り方について三つ提示する事に。

 一つは、これまで通りこの村で過ごしてもらうという話だ。

 どれくらいの頻度で来られるかは分からないが、定期的に来る事を約束するという話を伝えた。


「あの、出来れば村の既婚女性や、その夫……というか、村の若い男衆たちの為にも、あまり来て欲しくないのですが」

「既婚女性については、絶対にこのような事とならないよう、全力で死守する事を誓おう」

「というか、貴方のアレの凄さを見てしまっているので、既婚女性が羨ましそうにしていますし、夫は比較されて悲しんでいますし、未婚の若い男衆は自信を喪失していて……割と既に手遅れなのですが」


 ん? 村長は何を言いたいのだろうか?

 村の既婚女性は全員死守したし、男性に至っては何の関係があるのだろうか。


「よく分からないが、二つ目の話だ。これは別の大陸になってしまうが、俺の家に来てもらうという案だ。別大陸なので、行き方については別途相談させてもらいたい」

「べ、別の大陸!? 貴方は何処から、どうやって来たのですかな!? 見ての通り、この大陸は魔王の怒りに触れ、海から遠くかけ離れ、何人も寄せ付けない大陸となっているのですが」

「魔王の怒り!? その話を詳しく聞かせてもらえないだろうか」

「え? えぇ。構いませんが……それより先に、責任の取り方の話をお伺いしたいのですが」

「そうか。わかった。では、この話が終わった後に、必ず頼む」


 村長から物凄く気になる話が出たものの、一先ず要望に答える為、三つ目の話――金銭による和解について提示する。


「それはつまり、村の女性側の求める金品で、無かった事にしろと」

「無かった事というか、もう俺に関わりたくないという者も居るだろう。今後、その者に近寄らないようにするが、それでは俺が何もしていない事になってしまうので、そういう手段を取らせてもらうという話だ」

「なるほど。村としては、三つ目が一番嬉し……こほん。しかし、仮に全員が三つ目の案を選択した場合、相当な金額になると思われますが、よろしいのですかな?」

「あぁ。何としてでも、要求に応えられるようにしよう」


 最悪、レイに頼んであのポーションを作る事も辞さないつもりだが、一旦魔族領へ戻らないといけないというのがネックだ。

 何とか、途中で見つけた小島にあった霊樹から、ドロシーの所へ戻れるように、レヴィアへ頼まないといけないな。

 ……というか、そもそもレヴィアたちとの合流が先だが。

 そんな事を考えていると、ラヴィニアが何か感じ取ったのか、補足だけど……と口を開く。


「金銭に関しては大丈夫よ。私の夫は、別の大陸にある一国の王だから」

「えっ!? お、王様なのですか!?」

「そーだよー! パパは王様なのー! ものすごーく広い土地があってー、奥さんもニースのママ以外に沢山居るもん! ……えっと、百人くらい?」


 ラヴィニアの言葉で長老が驚き、ニースの言葉で近くに居た男性たちが卒倒した。


「……百人を満足させられるって、どういう事だよ。それに、アレの大きさと量と体力は人間じゃないだろ! 実はオークなんじゃないのか!?」

「……そもそも分身スキルってなんだ!? 増えてたぞ!? というか、さっきのあの様子からすると、百人くらい楽勝な気がするな」

「……今更だけど、あの男にずっと抱きついている娘が天使族なんだが。つまり、あの人魚族の奥さん以外に、天使族の妻も居るって事だろ? もう人間の枠を超えてるよ!」


 何故か周囲から凄い目を向けられている気がするのだが……それより早く、さっきの魔王の怒りの話を聞かせてくれないだろうか。

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