第239話 空中での攻防戦

 ツバキの人形ツキと共に南へ向かうと、


「アレックスー! お待たせー!」

「アレックスさん。お迎えに参りました」


 大きな鳥が居て、その横に大人の姿のマミとジュリが立っていた。


「マミは子供の姿じゃないんだな」

「ごめんね。アレックスは子供の姿の私の方が好きかもしれないけど、街でお仕事をする時は、こっちの格好の方が都合が良くて。二人っきりの時は、子供の姿になるね」

「待った。俺はただ姿が違うと言っただけで、変な意味はないからな?」


 何だか物凄く誤解されているように思えるんだが。


「アレックスさん。では、子供の姿になっていただけますか? 早く早く」


 ジュリが何かを期待する目を俺に向けてくるのだが……この二人は大丈夫なのだろうか。

 一先ず変化スキルを使って、子供の姿になるも、


「きゃー! アレックスちゃん! 可愛いーっ!」

「アレックス。後で、沢山しようね」

「父上……可愛いです!」


 ジュリに抱きしめられるのは予想していたが、ツキにまで抱きつかれた。

 ……いろんな意味で大丈夫かと思っていると、


「アレックスさん。ちゃんと戻ってきてくださいね?」

「アレックス。戻ってきたら、そやつらとした分と同じだけしてもらうのじゃ」

「私も幼女になって、ご主人様から愛されたいっ!」


 いつの間に来ていたリディアやミオたちが、変な誤解をしていた。

 一人、モニカだけは大きく間違っているが。


「じゃあ行ってくる。何かあれば、ツキを通じて連絡してくれ」

「畏まりました。アレックスさん、本当にお気をつけて」

「アレックスなら大丈夫なんよ。最悪、何かあったらウチが飛んでいって、全てを燃やし尽くしてアレックスを助けるんよ」


 リディアは普通に見送ってくれたけど、ヴァレーリエの言葉が、本気でやりそうで、怖いんだが。

 

「ではアレックスとツキ? は、この中に入ってください」

「……樽?」

「はい。元々は飲み水が入っていた樽です。この中に隠れていただいて、ウララドの街へ入っていただきます」

「魔法で調べられたらアウトな気がするんだが」

「ジュリさんが一緒なら大丈夫です。自警団の副団長ですし、まず調べられませんよ」


 なるほど……と、納得したところで樽の中へ。

 六歳の姿でも結構狭いな。


「父上、失礼します」


 更にツキが入ってきて……胡座をかいて座る俺の上にツキが乗り、密着する形に。


「では、アレックスさん。マミさんが呼んでくれている鳥に載せます。到着するまで少しの間、我慢してくださいね」


 そう言って、ゆっくりと樽が持ち上げられ、何かで固定されている感じがする。


「では、出発します!」


 マミの言葉で一気に大きく上昇した。

 だが、暫くするとツキの呼吸が荒くなる。


「大丈夫か? まさか、高所や閉所がダメなのか?」

「……ち、違います。その……」

「無理はしないでくれ。何か俺に出来る事はあるか?」

「で、では、優しく抱きしめていただけますか?」


 なるほど。シノビだから言えなかったが、実は閉所恐怖症なのかもしれないな。

 俺が抱きしめればハグスキルで癒せる。

 とりあえず、ツキの望み通り抱きしめると、


「ハァハァ……ち、父上っ! やはりダメです!」


 更に苦しそうにするツキがギブアップを告げてきた。


「わかった。マミに言って引き返してもらおう」

「いえ、ここで大丈夫ですから、どうかその父上の大きなモノで私を……もう我慢出来ませんっ!」

「は? ……って、胸を出すな! 変な所を触るなーっ!」


 狭い中で、ツキが器用に服を脱ぎ、小さな胸を俺の顔に押し付けてくる。

 というか、さっきから息が荒くて苦しそうだったのは、こういう理由かぁぁぁっ!


「わぁ……父上のは、本当に凄いです。こんなに密着しておりますし、もう良いですよね? ほら、私も準備は整っておりますし、何より我慢出来ないですし」

「胸はともかく、そっちを押し付けるなっ!」

「あぁっ! そんな所で喋られると、ますます濡……」

「そんな報告はしなくて良いよっ!」


 暫くツキと攻防を繰り返していると、


「あのね、アレックスちゃん。もうすぐ街に着くから、ちょーっと静かにしてね。後でお姉ちゃんが、大人な事を色々教えてあげるから」


 樽の上からジュリが声を掛けてきて、蓋を閉める。

 とりあえず、後でツキにお仕置きかな。

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