第370話 一時帰宅

 カスミの罠? により、メイドさんたちの殆どから慕われるようになってしまった。

 スキルも幾つか得る事が出来たのだが、良かったのだろうか。


「もちろんよー。カスミちゃんは一切強要していないし、皆自分の意思でお兄さんの所へ来たのよー」

「あー、俺はこの家に居なかったし、例のポーションを飲んだ者も、自分の意思で来たという事か」

「そういう事ー!」


 メイドさんたちの中には凄く激しい者が居て、未だに分身から離れない者が何人か、居る。

 おそらく、彼女たちは魅了状態なのだろう。


「……って、待った! 離れていない者の中に、あの二人の冒険者が居るんだが」


 エミリアとロザリーと言っていたが、口数の少ないロザリーという少女は、未経験だったぞ!?


「起きていたから、一応声を掛けたら来るって言うしー、まぁいっかーと思ってー」


 いや、良くは無いと思うが……リーダーを捕らえた俺が言うのもなんだが、もう一人の男も全裸で何処へ走り去ったし、実質パーティは崩壊しているか。

 俺が離れて魅了が解除された状態で、これからどうするか考えてもらおうか。


「それより、お兄さん! 聞いてよー! あの捕まえた男は、このエミリアちゃんの恋人じゃないらしいよー! 向こうが勝手に思い込んでいるだけなんだってー。カスミちゃんは、寝取られだと思って楽しみに……げふんげふん。何でもないわよ?」


 果たしてそれは、楽しむものなのだろうか。

 まぁ触れないでいよう。


「カスミ。俺は一度家に戻って、今後の事を相談してこようと思う。明日には戻るので、この村を任せて良いか?」

「一晩なら……あ、分身は残してくれるよねー?」

「いや、分身でも置いていくと、ポーションを飲んでいる者が大変な事になってしまうだろ?」

「えぇーっ!? じゃあ今晩は……明日の朝には戻って来てよー?」

「あぁ。この村をどうしていくか、ちゃんと考えないといけないからな。必ず戻ってこよう」


 一先ず、今日は村をカスミたちに任せる事にして、家に戻る事にしたのだが、


「ご主人様。さぁどうぞ」

「何を……あ、帰還スキルか」

「はい! さぁ遠慮なさらずに! ドンと来て下さい」

「そういう風に言われると、物凄くやりづらいのだが……頼むよ」

「どうぞ……んんっ! 流石はご主人様っ! 奥まで……」

「いや、そういうのは良いから早くスキルを頼む」

「もう少しだけお願いします! もうちょっとで……〜〜〜〜っ! ……ふぅ。では、参りますね。≪帰還≫」


 モニカのスキルによって、一瞬で魔族領の家に戻って来られたのだが、もう少し使い勝手が何とかならないだろうか。

 有用なスキルだけに、少し勿体ない気もする。

 そんな事を考えていると、ふと視線を感じ、ゆっくりと顔を向けると、


「アレックスぅぅぅっ! 突然居なくなって……酷いよぉぉぉっ!」


 レヴィアが凄い勢いで飛び込んできて……結構な衝撃だったんだが。

 これ、防御力の高い俺でなければ、最悪死んでいたのでは?


「ふっふっふ。思った通り、アレックスはこっちへ帰って来たんよ。さぁアレックス。子作りするんよ!」

「ヴァレーリエ!? ニナを元兎耳族の村へ送って行ったんじゃないのか?」

「もちろん送ったんよ。で、そこからドラゴンになって飛んで来たんよ。という訳で、アレックス。ご褒美が欲しいんよ」


 やるべき事はやったと言わんばかりにヴァレーリエが胸を張り、抱きついてくる。

 未だにモニカと抱き合ったままだったので全く説得力は無いが、そういう事をする為に帰ってきた訳ではないんだよ。

 あの村の村長代理として適任ではないかと思う者を思いついたので、直接話しに来たのだが、モニカが離れようとしない。


「ご主人様ぁ! もう一回……もう一回お願いしますぅぅぅっ!」

「アレックス、早く分身ー! レヴィアたんもするのーっ!」

「アレックス。私も早くして欲しいんよ」


 レヴィアとヴァレーリエも迫ってきて、


「アレックス様。ぜひ私にもお願い致します」


 ソフィを家まで送ってくれた、サクラも混ざってきた。

 そのサクラを見たモニカが、


「あぁ、可哀想なご主人様。先程までは、大きな胸の者に囲まれていたのに、私を除いて、胸の小さな者に囲まれるなんて」


 物凄く余計な一言を発してしまい……あ、これは家が潰れるかも。

 分身っ! 分身するから落ち着いてくれっ!

 怒りのオーラが出そうになっている女性陣を、宥める事になってしまった。

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