第369話 新村長のお披露目

 モニカの聖水で、毒の葉を生やす樹が三本程枯れた。

 だが、


「ご主人様。もう、これ以上は出ませんよ」


 まだ数十本残っているのに、早くもモニカが白旗を上げる。

 モニカは元々喉がカラカラだと言っていた上に、コップ一杯の水しか飲んでいないからな。

 少し休ませて、水分を採ってもらおうかと思ったのだが、モニカが目を輝かせながら口を開く。


「あ、でも私が自分で出す聖水では無くて、ご主人様に触っていただいて出てしまう聖水でしたら、幾らでも出る気がします」

「よし。じゃあ、モニカが飲めるだけ水を飲んでもらおうか。とりあえず、バケツ二杯分くらいの……」

「ご、ご主人様ぁぁぁっ!」


 まぁ今のは流石に冗談だが、早めに毒の葉は何とかしたいな。


「……うーん。私のでは枯れたりしないですね」

「ナズナ……モニカはふざけている訳ではなくて、聖水生成というスキルを持っているんだ」

「えっと、一応私も試しておこうかなーと思いまして」


 いや、ナズナは試さなくて良いから。

 あとモニカに対抗して、俺に見せつけるようにしなくて良いからな?


「そういえば、サンゴ。ステラはどれくらいで到着するのだろうか」

「それがねー、移動前にステラちゃんから一言あったみたいでー……エリーちゃんとユーディットちゃんに、ボルシチさんを置いて移動して良いの? ……だってー」


 う……確かに。

 ステラには、妊娠しているエリーとユーディットが心配なので、来てもらった。

 それなのに、その妊婦たちを差し置いて、離れるのか? と聞かれると、非常に心苦しい。

 魅了効果を受けている者たちは、ステラの高位の神聖魔法でしか治らない訳ではなく、レイが作るポーションでも治る……と思う。たぶん。

 そうでなくても、プリーストがステラしか居ない訳ではないので、ウララドやエリラドの街に、シーナ国の王都を探せば、他にもプリーストが居るかもしれない……というか、大きな街なのだから居るだろう。


「わかった。ステラはエリーたちの元で待機していて欲しいと伝えてくれ。こちらの者は、こっちで何とかしてみよう」

「はーい。伝えておくねー! ……これで、こっちの村はチャンスが沢山だねー。……こほん。な、何でもないよー」


 何故かサンゴがちょっと喜んで居たが……とりあえず、この村の毒の葉を何とか出来次第、王都へ出発だな。


「そうだ、サンゴ。レナやツキ。ジュリの所に居る俺の分身たち経由で、シーナ国に居る者へ、高位の神聖魔法を使える者を探して欲しいと伝えて欲しいのだが」

「ステラさんの代わりだねー。伝えておくねー」


 これで代わりが見つかれば良いのだが。

 ……というか、エリラドの街に居るジスレーヌや解呪ポーションを飲んだ少女たちと同じで、俺が近くに居なければ、魅了効果は発動しないのか。

 だったらこの村を纏め、運営出来るようにした時点で俺がここを発てば良いのか。

 そうすれば、例のポーションを飲んでしまった者たちも、魅了効果が発動する事無く普通に暮らせるよな。

 カスミが俺の事を新たな村長だと説明してしまっているから、誰かを村長代理にして、運営してもらうか。

 ……既にカスミが適任な気もするのだが、本人の意志もあるだろうし、先ずは話を聞かないとな。

 そんな事を考えていると、カスミがやって来た。


「お兄さーん! 一先ず、あの家で働いていた女性たちは、全員残るってー!」

「そうか。しかし借金の立て替えや給料となると……こういうのが得意そうなのは、レイやメイリンなんだがな」

「んー、カスミちゃんの見立てだとー、レイちゃんは商売に走っちゃって、給料とかを値切っちゃいそうだから、メイリン様の方が良いと思うけどなー」

「だが、メイリンは人形たちの事もあって、来られないだろう」

「まぁそうよねー。となると……ブリジットちゃんとかは、どうかしらー」


 なるほど。ブリジットは熊耳族の長だからな。

 元々村長というポジションに近いものがある。

 だがブリジットは熊耳族も纏めているから……ビビアナが熊耳族を纏めてくれるのであれば、それでも良いかもしれないが、いずれにせよ本人に確認しないとな。


「ちなみに、カスミはこの村の村長をする気はないか?」

「お兄さんが一緒に居てくれるなら、やるわよー?」

「いや、俺が居ると問題が起こりそうだから……」

「だったらヤダー! カスミちゃんは、お兄さん無しでは……って、そうだ! お兄さん、来て!」


 カスミが何かを思い出したらしく、村長の家に引っ張って行かれる。

 何か家の中で重要な物でも見つけたのだろうか……と思っていると、寝室らしき部屋に連れて行かれ、


「さぁ、みんなっ! さっき話した、新しい村長アレックス様のアレのお披露目よーっ!」


 そう言って、物凄い早業で俺のズボンを脱がしてきた。


「――っ!? す、凄いっ!」

「えっ!? 私が前に見たアレって、一体何だったの!?」

「ご主人様ぁぁぁっ! 私も混ぜてくださーい!」


 メイドさんたちに、モニカやナズナたちも混ざり……カスミは何て事をするんだよっ!

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