第761話 イベール国の王女
「ここが、イベールの王宮みたいな場所か」
ヴェロニクが居た場所のように、地下ではあるものの大きな建物があり、二人の女性兵士が入り口に立っている。
「すまない。この国の王女に面会をお願いしたいのだが」
「王女様に!? 人間族や獣人族が!? 一応、ドワーフも居るようだが、どういった用件だ」
「となりの魔族領について話を聞きに来た。国境の兵士たちに確認してもらっているが、ドワーフの本部にいる女王から、魔族領へ行くように言われているんだ」
「本部の女王様に!? 少し待ってくれ。確認する」
そう言って、兵士の一人が中へ入り、少しして戻って来た。
「国境の兵士と、我らが王女様に確認が取れた。入っても良いが、粗相のないようにな」
「わかった。ありがとう」
そう言って、戻って来た兵士が案内してくれる事に。
兵士について歩いて行き、クネクネと複雑な道を進んで、謁見の間のような場所へとやってきた。
ヴェロニクの時と違い、豪華な椅子に腰掛け、部屋の壁際に兵士たちが並んでいるので、間違いなく王女だろう。
「失礼します。王女様……先程ご報告した、本部からやってきた者たちです」
「許す」
「失礼します。俺……私はアレックスという者ですが、魔族領について教えていただきたく、参りました」
同じドワーフの王女でもヴェロニクとは大きく違い、威圧感がある……気がする。
まぁ部屋の雰囲気とか、周囲を兵士たちに囲まれているというのも、そう感じる一因かもしれないが。
「何でも、女王の命で魔族領に居る魔族を倒しに来たと聞いたのだが」
「えぇ。ですので、この西大陸の魔族領を治める魔族が、どのような者なのかを教えてもらいたいのです」
「……なるほど。そういう事であれば、我々としても協力したいと思う」
「ありがとうございます」
「だが、魔族領の奪還は、先々代の王女――私の祖母によって禁止されている。そのため、我々にも情報がないのだ」
「その話は聞きました。しかし、過去の文献などがあるのでは?」
「探せば、もしかしたら出て来るかもしれぬ。だが、調査すらも禁止され、その教えをしっかり守っているが故に、その類の資料がどこにあるのかも定かではないのだ」
なるほど。協力してくれるようではあるのだが、王族だから特権的に法律を無視……などという事はなく、きちんと守っているのか。
王としてはあるべき姿なので、非常に良いのだが、困ったな。
「それでは、この国にある古文書の類を読ませていただく事などは……」
「国に関する機密事項もあるから、全てを開示する訳にはいかん。だが、そうでない物なら好きにするが良い」
「ありがとうございます。では我らの中から数名を、文献の調査に充てさせていただければと」
「ふむ。構わぬが、他の者はどうするのだ?」
「直接、この目で見てこようかと。我々が魔族領へ入る事は構いませんか?」
「それも好きにして良い……が、祖母の教えを守る為、そこのドワーフの少女は、魔族領へ赴く事を禁ずる」
まぁ何かしらの理由で、ドワーフが行ってはいけないという理由があるのかもしれないな。
ちょっと残念そうなニナを宥め、ひとまず俺と共に魔族領を偵察するチームと、ニナを中心に古文書を調べるチームに分ける事とした。
「では、後はこちらの者に聞くがよい。以上だ」
「ありがとうございました」
ひとまず王女に礼を言い、謁見の間を後にすると、先程王女から指示されたドワーフの女性が話し掛けてくる。
「では、古文書については私が同行致します」
「わかりました。急いでメンバーを決めるので、少しだけ待ってください」
とりあえず、ニナは連れて行けないとして、ガブリエラとグレイスも、ニナと一緒に古文書を調べてもらおう。
そしてミオとザシャ、シアーシャは魔族領に来てもらおうか。
「残るはレミとモニカか」
「おとん! ウチは絶対におとんと一緒におるで! 何かあった時に、みんなへ周知するのがウチの仕事やし」
「わかった、わかった。じゃあ、レミは俺と一緒に行こう」
「うんっ!」
レミが意地でも離れないといった感じで抱きついてきたので、優しく抱きかかえ……最後はモニカか。
「魔族領は地下だと思うのだが……こちらの女性が立ち上がったり出来る程の高さはあるのでしょうか」
「すみません。王女が話した通り、誰も行った事がないので、何とも言えず……」
それはそうか。
もしも、立って動けないのであれば、モニカは戦闘不可だな。
「じゃあ、モニカはニナと一緒に……」
「ご主人様ぁぁぁっ! 嫌ですっ! 私はご主人様と一緒が良いのですぅぅぅっ!」
「ちょ、モニカ……胸に顔が埋まるっ! 息が……モニカぁぁぁっ!」
子供の姿でモニカに全力で抱きしめられ、胸で窒息し掛けてしまった。
……ふぅ。とりあえず、モニカも魔族領へ連れて行く事にしたが、本当に大丈夫だろうか。
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