挿話112 剣を握るダークナイトのローランド
「ローランドー! 大変! デドリック様からお呼び……って、相変わらずだね」
「ん? ゴードンちゃん! ……仕方ない。一旦ここで中断だ」
「そ、そんなぁ……」
俺の七人の天使達におあずけをさせるのは心苦しいが……ゴードンちゃんの用事は最優先だからな。
しかし、七人の天使に俺を加えた八人で寝転び、輪になって連なるのは中々良いな。
「で、ゴードンちゃん。今回は何の用件なんだ? あのデドリック……水の四天王とやらは」
「それがね。レヴィアタン様を探しに行ったヴォジャノーイ様からの連絡が途絶えたらしいの」
「ふむ。つまり、今度は俺にレヴィアタンやヴォジャノーイを探しに行けという事か」
ゴードンちゃんが無言で小さく頷くが……面倒だな。
せっかく七人の天使……俺の親衛隊を作ったというのに。
「面倒なので断るという選択肢は?」
「そんなの無いよ。デドリック様の命令は絶対だよっ!」
このまま俺が呼び出しを無視すれば、ゴードンちゃんが怒られてしまう。
とはいえ、行けば天使たちとは離れ離れ。
ゴードンちゃんと天使たちを連れて逃げる……というのは、ゴードンちゃんが嫌がりそうだし、何より逃げるというのが気にくわない。
ならば、残された道はただ一つ。
「……わかった。一応確認だが、もしも俺がレヴィアタンを探しに行けと言われたら、ゴードンちゃんはついて来てくれるだろうか?」
「デドリック様次第かな。行けと言われれば行くし、別の任務を与えられたら行けないかな」
やはり、思った通りだ。
これで俺の考えは固まった。
「わかった。ゴードンちゃん、先ずはデドリックの所へ行こう」
「うん、そうだね。十中八九、今の任務の話だと思うけど、もしかしたら違う話かもしれないしね」
屋敷を出ると、ゴードンちゃんと共にデドリックが居る水の城へ。
何度か来て、すっかり道を覚えてしまった通路を通り、デドリックの許へとやって来た。
「よく来たな、ローランドよ。ヴォジャノーイの事は聞いているか?」
「あぁ」
「うむ。レヴィアタンに続き、ヴォジャノーイまで音信不通となったのだから、第四魔族領を奪った人間族にやられたと考えて良いだろう」
「残念ながら、その可能性は高いな」
「そこでだ。その二者と同じレベルの魔族を補充したいと考えている」
ん……なんだ? 俺はてっきり、第四魔族領に行ってこいと言われると思い、ゴードンちゃんや天使たちと離れ離れになるくらいなら、デドリックを倒し、この地の支配者になろうと思っていたのだが……違うのか?
「そこで、西側の統治を任せている者に、魔王様の所へ行ってもらうつもりだ。その者が新たな魔族を連れて戻って来るまで、ローランド……お前には西側の地を任せたいと考えている」
「……それは構わないが、第四魔族領は良いのか?」
「これ以上、俺の手駒が減っては困るからな。第四魔族領を治めていたベルンハルトは、そういう事を面倒臭がる奴だったが、俺は違う。先ずは自分の牙城をしっかり守った上で、攻めるべきだという考えだ」
なるほど。俺を第四魔族領に行かせて、北側を統治する者が居なくなる方が困るという訳か。
「ん? つまり俺に北と西の二か所を治めろという事か?」
「いや、西だけで良い。この第三魔族領で、人間どもが攻めて来るのが西側だからな。いわば最前線だ。北と東の奴隷エリアは、南を治めている者に任せる。本来は、ローランドを魔王様のところへ送るのが最善手だが、流石に人間族を送る訳にはいかん。魔王城へ入る前に、確実に死ぬからな」
「……北エリアで見繕った、俺の親衛隊が居るのだが、西エリアへ連れて行くのは構わないのか?」
「好きにしろ。だが、さっきも言った通り、最も戦いが激しい場所だからな」
「わかった。一先ず、西へ向かおう」
「そうしてくれ。西を統治している者には、早急に魔王様の許へ出発させたいからな」
デドリックに頭を下げ、城から出る。
……ゴードンちゃんとも、天使たちとも離れ離れにならなくて良いのか。
デドリック……意外と良い奴じゃないか。
とりあえず、お気に入りは全員連れて行こう。要は俺が守れば良い話だからな。
早速ゴードンちゃんと西へ向かい、先ずは引継ぎを受ける事にした。
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