挿話59  サキュバスモードのソフィ

「≪夢見る少女≫」


 お風呂へ後で入った皆様方が戻って来られると、すぐさまフィーネ様がいつも通り睡眠スキルを発動させた。

 いつもならば、ここで私も他の方々に併せて寝た振りをして、フィーネ様とマスターが別の部屋へ行かれた後で、こっそり覗かせていただいく。

 だけど、今日からは違う。

 私も、フィーネ様と同じ事をマスターとするのだ。


「じゃあ、アレックス様。行きましょーっ!」

「お待ちください、フィーネ様」

「あ、あれー? ソフィさん? どうして夢魔族のスキルが効いてないのー?」

「申し訳ありません。マスターには既に謝罪致しましたが、実は私にはそのスキルが最初から効いておらず、今までずっと寝た振りをしておりました」

「そうなんだー。じゃあ、ソフィさんも一緒に行くー?」

「つきましては、非常に申し訳ないのですが……はい? あ、あの、フィーネ様? 今、何と?」

「だからー、ソフィさんも向こうの部屋で、アレックス様に愛してもらおうよー」


 何と……フィーネ様は何て慈悲深いお方なのでしょうか。

 フィーネ様とマスターがされている事は、人間において愛を育む重要な行為のはず。

 今の時代の人間社会が一夫多妻制という事はマスターたちの行為から認識しているけど、その中でもフィーネ様は毎晩二人っきりで愛し合う、マスターにとって特別な存在なのに、そこへ招いていただけるとは。


「フィーネ様。お心遣い、誠にありがとうございます」

「え? あ、うん。とりあえず、早く行こうよー!」

「……二人共、ほどほどに頼むな」


 何故かマスターが困惑……というか、何かを諦めた顔になっていますが、それはさておき間近でフィーネ様の動きを見学させていただきましょう。


「はぁ……≪分身≫」

「えっ!? マスターがお二人に!?」

「あれ? ソフィさんは見た事ない? アレックス様は、凄いんだよー。こうやって二人になって、二倍愛してくれるのー!」


 凄い。

 これなら、私が見学せずともフィーネ様と同時にマスターから愛していただけるのでは?

 ……いやいや、勘違いしてはならない。

 あくまで私は、あの謎の白い世界のデータを見る為に、マスターから魔力をもらうのだ。

 それに、特別な存在はフィーネ様であり、私はフィーネ様からおこぼれをいただいている。

 だから、私がマスターにご奉仕させてもらい、おまけとして魔力をいただく……そこを勘違いしてはならない。

 自分の考えを正し、マスターへのご奉仕がどのような作法なのかとフィーネ様の動きを見逃さないようにと、しっかり見ておく。

 ……いつも、暫くしてから寝室を抜け出して覗きに来ていたから、どのように始まるかは知らないのだが……なるほど。先ずは、口でマスターのを……っと、私もしなくては。


「……そ、ソフィ。無理にフィーネと同じ動きにしなくて良いんだぞ? そもそもフィーネとソフィはこれまでの回数が全然違うし、そもそも身体の大きさも違うんだからな」


 そう言って、マスターが私の頭を優しく撫でてくれた。

 身体の大きさ……私のデータによると、一般的に人間の男性は胸の大きな女性を好む傾向にあるという。

 実際、フィーネ様はモニカ様、エリー様に次いで三番目に胸が大きい。

 一方の私は胸だけでなく、身体も小さいので……もっと頑張らなくては!


「そ、ソフィ!? 無理を……フィーネも張り合わなくて良いから! そんなに激しくされると……っ!」


 頑張ったおかげか、マスターのアレが喉の奥に出され……体内の魔力量が一気に増えた。

 さて次は何をするのだろうかと思い、チラっとフィーネ様の様子を伺うと……胸! 胸でマスターのアレを挟みながら飲んでいる!?

 くっ……私の小さな胸ではマスターの大きなモノを挟む事が出来ない。

 だけど、これがマスターへのご奉仕の作法だとすれば、無理だと分かっているが、形だけでもやっておかなければ。


「……ソフィ。いや、何でもない。ありがとう」


 私の想いが伝わったのか、マスターが感謝の言葉をくださった。

 ……決して、私の胸の小ささに同情したりした訳ではないと思う。……きっと。

 そうこうしている内に、フィーネ様はマスターの上に乗ろうとしていて……ちょっと待って! な、何!? フィーネ様から透明な液体が溢れている。

 でも、そのままマスターの上に乗り……ここからは私も知っている動きだ。

 けど、さっきの謎の液体は何? あんなの私には……あれ? フィーネ様程ではないけど、私からも出てる?

 おそらく、身体の大きさの違いで、私は量が少ないのかもしれない。一先ず、これは気にする必要はないだろうと、そのままマスターの上に乗り、そこからはフィーネ様と同じ様に動く。


「ちょっ! 二人して同じ動きを……これだと、俺と分身とで感覚が倍に……な、何だこれは!? す、凄いぞ!?」

「ソフィさん。アレックス様に褒められてるよっ! このまま一緒に頑張ろうねっ!」

「はいっ! フィーネ様!」


 全てはマスターやフィーネ様に喜んでいただく為。フィーネ様の動きに合わせて、私も身体を動かして居ると、時折マスターが魔力を下さる。

 魔力を大量に貰いながら、フィーネ様と同じ事をしていると、


「……アレックス様。ありがとうございます……くぅ」


 フィーネ様がそのまま――アレを挿れたまま、マスターの胸の上で眠られてしまった。

 私はどうしよう。よく見れば、マスターも眠っていらっしゃるけど、私は体内に魔力が有り余る程残っている。


「意識が白い世界には何度か行ったけど、あの続きが未だ見れていない。……続行、かな」


 私は継続してマスターから魔力をいただく事にしたんだけど、


「~~~~っ! アレックス様ぁ……素敵ですぅ」


 眠るマスターが私に魔力を注いでくださる度に、眠っているはずのフィーネ様の身体が寝言と共にビクンと動くのは何なのだろうか。

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