第892話 レイチェルの家のマナー
「アレックス様ぁぁぁーっ! 遅いですよぉぉぉっ! でも、帰ってきてくださって嬉しいです」
「アレックス様! お帰りなさいませ! ホールにはベッドや毛布、ソファにマット……様々な体位やプレイに必要そうな家具をご用意しておきました」
「アレックス様。今宵は娘だけでなく、私もお願い致しますね」
昨晩泊めて貰ったレイチェルの屋敷へ戻って来ると、真っ先にグレイスが抱きついて来て、レイチェル母娘が続く。
しかし、レイチェルがわざわざ寝具を用意してくれたというのは申し訳ないな。
……って、何か変な事も言っていた気がするが。
「わぁー! お兄ちゃんの家って、貴族様のお屋敷みたいー!」
「いや、ここは俺の家じゃないんだ。レイチェルたちの好意によって、泊めてくれているだけなんだ」
「アレックス様。私と結婚してくださったら、ここはアレックス様のお家ですよ? というか、結婚していただかなくとも、毎晩泊まっていただきたいですが」
トレーシーの言葉を聞いて、レイチェルがそっと抱きついてくる。
いや、レイチェルの母親や、グレイスに太陰、フョークラが連れて来た三人の女性騎士たちまで……って、ちょっと待った。
この騎士たちは腐っていない方だろ? どうして様子がおかしいんだよ。
「フョークラ。あの三人の女性騎士にも何か薬を飲ませているのか!?」
「いえ。何もしておりません。ただ、私とオティーリエの話を聞いて、いろいろと期待しているのかと」
「えぇ……」
腐ってはいないが、騎士としてどうなんだ?
いや、勿論他の騎士とは比べるまでもないんだけどさ。
「ねーねー、お兄ちゃん。どうして、みんなお兄ちゃんを囲んでいるのー? あと、何かプレッシャーが凄いんだけど」
そう言ったトレーシーのお腹がくぅっと小さくなる。
「……あ! すまない。すっかり忘れていたけど、夕食がまだだったんだ。トレーシー、フョークラにオティーリエも、食事に行こう」
「お待ちください。もちろん、アレックス様や皆様のご夕食もご用意しております。当家で待たれていた方々は、既に夕食を済ませておりますので、ご安心を」
レイチェルの母親に案内されて食堂へ。
空腹だったので助かる……って、何故か椅子が無いんだが。
「これはまさか……」
「当家のマナーでございます。アレックス様。どうか、皆の為に分身を……」
「……トレーシーと二人で、個別に食事をしても良いか?」
「分身はお願いしたいです」
昨日、かなりの大人数を泊めてもらったし、大半の者は一日経って帰ったようだが、ここで俺が戻って来るのをずっと待っていた者も何人かいる。
はっきり言って、レイチェルの母親にはかなり迷惑を掛けているな。
「わかった。俺とトレーシーの分だけ個別で運んで来てもらえないだろうか」
「承知致しました。では、お部屋へ案内致します」
広い屋敷の中をトレーシーと二人で移動し、大きなベッドやテーブルがある部屋へ案内された。
「アレックス様。それでは、今晩はそちらのお嬢様とこちらのお部屋をお使いいください」
「わぁ! すごーい! お姉さん、ありがとー!」
「いえいえ。では、後ほどお食事をお持ち致しますので、アレックス様は例の件をお願い致します」
くっ……仕方がない。
トレーシーが凄い! と叫びながら、大きなベッドに飛び込んだところで、分身スキルを使い、分身たちを廊下から出す。
「ありがとうございます。では、後ほど我が家のメイドが参りますので、暫しお待ちを」
レイチェルの母親が部屋を出た途端に……くっ! これは……部屋の外でミオが待っていたのか!
幼学校から、ずっと子供が欲しいと言っていて……いや、早過ぎるだろ!
まだ廊下を歩いている頃だというのに、レイチェルの母親も……いや、太陰やグレイスの感覚もある。
少しすると、空腹だと言っていたフョークラやオティーリエの感覚も加わり……いや、確かにマナーだと言っていたが、二人共従うのか。
「失礼致します。お食事をお持ち致しました」
「わーい! お兄ちゃん、ごはんごはんー!」
丸いテーブルに、大きなクロスが掛けられ、その上に食事が並べられる。
「お兄ちゃん! 食べよー!」
「そ、そうだな……っ!?」
何か変な感じがすると思ったら、テーブルの下に先程のメイドさんが居て……いや、俺の隣にトレーシーがいるんだが!
いつも結衣が頑張ってくれている事を、メイドさんが……この家はどうなっているんだ!?
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