第839話 昨日の二の舞?
フョークラたちが衣服を整え、ミオがモニカを守っていた結界を解除すると……出て来たモニカが物凄く不機嫌だった。
まぁ周囲で俺の分身たちがやらかしまくっている中で、一晩過ごす事になったんだ。
いくらミオの結界に守られているとはいえ、かなり不快だったのだろう。
「モニカ、すまないな。フョークラには精力剤を作らないように言っておいたので、許して欲しい」
「……」
謝罪するも、モニカが口を聞いてくれない。
「……父上。母上は混ぜてもらえなかった事を不満に……」
「ん? モニーは何を……」
「な、何でもない。それより早く出発するのだ」
モニーが何か呟いていたのだが、よく聞こえなかったのと、モニカから促された事もあり、出発する事に。
だが、ドワーフの女性兵士たちから待ったがかかる。
「お待ちください。我らは皆、昨晩のアレックス様に深く愛していただきました。その激しさの代償として、足腰が立たず、まともに任務が出来そうにありません」
「そ、それは本当にすまない」
「そこで、昨日の追ってなどが来ても大丈夫なように、護衛としてアレックス様の分身を何体か置いていってほしいのです。出来れば十体……いえ、せめて五体ほど」
うーん。いやまぁ言い分は分からなくはないのだが、昨日分身を護衛として残して行ったら大変な事になったばかりなんだが。
「ミオが結界を張るというのは?」
「それでは、我々も外に出られません。海を渡り、この女性たちを国へ帰してあげたいのです」
「なるほど。では仕方がないが……あくまで護衛だからな?」
「はいっ! 勿論です!」
兵士たちの要望に応えて分身を五体出すと、
「では、出発しようか」
今度こそ出発する事に。
馬車に皆を乗せ、オティーリエが乗っている事を確認し、馬車を引き始める。
「クックック。アレックスよ。私もパートナーとして、体力作りの為に馬車を引かせてもらおう」
「あぁ、構わないぞ」
「あら。移動中は見ているしか出来ないと思っていたけど、そんなオプションもあるのね。私もアレックスに密着……もとい、馬車を引くわ。私の力なら、これくらい余裕だし」
そう言って、ブレアとオティーリエが俺の横に並ぶ。
……並ぶと言っても、オティーリエの姿は見えていないので、自身がここに居るとアピールしているのか、物凄く密着してくるが。
いや、オティーリエだけではないな。
何故か昨日と違って、ブレアもやたらと近い上に、顔が紅くて息が荒い。
「ブレア。もしかして体調が悪いのか? それなら無理に馬車を引かずに中で休んでいてくれ」
「クケッ!? ち、違うんだ。これはその、昨日の事を思い出し……こほん。は、早く悪を倒したくて、身体が疼いているんだ!」
「そうなのか? だが、悪を倒したいと逸る気持ちは分からなくもないが、戦いにおいては冷静であるべきだぞ。……まぁ俺も人の事を言えないが、極力平常心で居られるようにした方が良い」
「そうだな。冷静になるためにも、こうして身体を動かして発散した方が良いのだろう。という訳でアレックス。暫くこのままで頼む」
結局、ブレアがそのまま馬車を引き続けるのだが、本当にこのままで良いのだろうか。
……って、そんな話をしていると、身体に違和感が。
これは、昨日と同じで分身たちが襲われているのだろう。
「すまない。少しの間だけ、馬車を任せて良いだろうか」
「アレックス。どうしたんだ?」
「いや、ドワーフの女性たちが、船に残した俺の分身に良からぬ事をしているみたいだから、少し注意して来ようと思うんだ」
「わかった。その間、本体が動けないという事か。オティーリエも居る事だし、大丈夫だろう」
一旦、移動はブレアとオティーリエの二人に任せ、馬車の中へ。
座席に座ると、すぐにマリーナが俺の膝の上に座ってきたので、一刻も早くドワーフの兵士たちを止めないと……と、分身に視点を切り替える。
甲板の警備にあたっている分身に視線が切り替わり……ここは何とも無いようだ。
船が流氷の中を慎重に進んでおり、万が一に備えてなのか、誰も甲板に出ていない。
という訳で、次の分身は船内で……攫われた女性たちが固まって、船の無事を祈っているようだ。
更に次へ切り替えると船の操縦室で、ドワーフの兵士たちが慎重に船を動かし……次も異常なし。最後の五体目……も何もされていないな。
「……どうなっているんだ? 分身は五体しか出していないのに」
首を傾げながら本体へ戻ると、
「次はマリーナの番なのー!」
「まぁまぁ。私は昨日初めてアレックスを知ったばかりなんだ。少し譲っておくれよ」
「まったく。透明な事を良い事に、オティーリエはやりたい放題なのじゃ」
マリーナが泣き出しそうな表情を浮かべ、ミオは呆れ……って、犯人はオティーリエかっ!
ドワーフの皆さん、疑って申し訳ない。
とりあえず、オティーリエを大人しくさせるか。
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