第18章 悪を潰してスローライフ

第838話 目的は攫われたドワーフたちの救出

 ドワーフの国で人攫いをしていた者たちを捕まえたので、人身売買組織を潰し、拐われたドワーフたちを救出する事に。

 ドワーフの国の船で海を渡り、西大陸の更に西にある人間の国へ来たのだが、助けたブラックドラゴンのオティーリエがブレスで海を凍らせてしまい、船が動けなくなってしまった。

 警護を兼ねて船に泊まる事となったのだが……


「……フョークラ。精力剤は今後製造禁止だ」

「えぇっ!? どうしてですかっ!? 普段のアレックス様も凄いですけど、優しさや気遣いを無くした、無慈悲な鬼畜の突き……これも捨てがたいのに」

「そのせいで、ドワーフの女性たちが全員気絶しているんだが」


 夕食にフョークラ特製、ダークエルフの精力剤が盛られており、意識が戻った今、大変な事になっている。


「アレックス様。ご心配なく! モニカさんとモニーちゃんはミオさんの結界できちんと守られていましたから」

「……マリーナが守られてなくて、今もそこで分身たちと一緒にいるんだが」

「マリーナちゃんは、むしろ混ぜないと泣いちゃうので。あと、船を綺麗にしてくれますし」

「いや、船を綺麗に……って、マリーナに何をさせているんだよ」

「え? 自ら美味しいって……ただ、飲むのも良いですけど、私は直接出していただく方が好きです」


 フョークラに精力剤を作らないように話していると、ブレアが近付いてきた。

 ブレアは俺の分身からしっかり逃げていたようで、全く衣服が乱れておらず、いつでも出発出来そうだ。


「クックック……アレックスよ。正気に戻ったようだな」

「ブレア……醜態を晒してすまない。上手く逃げてくれていたようで、何よりだ」

「あの、ブレアさんは短期集中型というか、一番声が大き……な、何でもないです」


 何だろうか。

 ブレアが自身の腰の剣の存在を確かめるように触れると、何故かフョークラが怯えたように口を閉じる。

 もしかして、ブレアに斬られるとでも思ったのだろうか。

 だがこれは、戦いを生業としている者の癖というか、習性みたいなものだからな。

 相棒とも言える自身の武器がいつもの場所にあるかどうか、無意識のうちに確認してしまうんだ。

 俺も、盾が無いと違和感を覚えるしな。


「……こほん。とにかく、もう出発出来るのであれば、分身を消して、早く行かないか? 回りでそんな事をされていたら羨ま……もとい、目障りだ」

「そうだな。本当にすまない」


 という訳で、ブレアから苦情も来ているし、モニカも結界の中で不快に思っていそうなので、早速分身を解除しておいた。


「むっ!? アレックスよ。酷いのじゃ。我はまだ六回目なのじゃ」

「いや、十分だろ。それに、朝を迎えて海を覆っていた氷も解け、氷塊に変わっている。これなら、船を動かせるんじゃないか?」

「氷が解けたのは朝になったからではなく、オティーリエが氷上プレイに挑戦したからなのじゃが……まぁ結果は同じなのじゃ」


 ……ミオから文句と共に意味不明な言葉が聞こえてきた気もするが、そのオティーリエはどうするのだろうか。


「オティーリエ。居るのか?」

「ん……いるけどー、ミオさんの話だと、赤竜族や海竜族の子たちとお昼前くらいまでし続けるらしいじゃない。どうして、今日はこんなに早く終わっちゃうの?」

「いや、俺たちは元々メリナ商会を潰して、攫われたドワーフたちを助けに来たからな」

「……あっ! アレックスのが凄すぎて、すっかり忘れていたけど、アイツらは許せないわ! 未だに人の姿だと見えないままだし! アレックス! 私も連れて行ってよ」

「……それは構わないんだが、逸れたりしないのか? ミオたちが魔力も感知できないんだろ?」

「それなら大丈夫よ。ドラゴンの力を封じていた首輪がはずれたからね。私が故意に魔力を放出すれば良いだけよ。こんな風に」


 オティーリエがそう言うと、近くにいたミオとフョークラが顔をしかめる。

 おそらく、オティーリエが放出しているという魔力を、二人は感知しているのだろう。


「ミオ、フョークラ。俺にはよく分からないんだが、オティーリエの存在はわかるのか?」

「うむ。分かるが……何というか、ネガティブな負の感情が混ざっておるのじゃ」

「正直、気持ちの良いものではないかな」


 ミオは耐えられない程ではないが、フョークラはかなり辛いそうだ。

 あれかな? 白虎を救出する前の第二魔族領みたいなものなのだろうか?

 空気が重いというか、あの場に居るのが辛い……みたいな。


「あ、ごめんねー。つい、捕まえられてた時の事を思い出しちゃってさー。普通に魔力を出すねー」

「ふむ。これなら問題ないのじゃ」

「そうですねー。ただ、どっちにしろ私にとっては魔力が多過ぎますけどねー」


 ひとまずオティーリエが何処にいるのかは分かるようになったらしいので、逸れたりもしないだろう……という事で、衣服を整え、出発する事にした。

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