第890話 小学校のお化け
ひとまず、ミオとデイジー王女が説得出来たので、お風呂から上がる事に。
そろそろ腹も減ってきたし、フョークラたちも待っている事だろう。
脱衣所に沢山タオルがあるので拝借し、着替えを済ませる。
「さて、君もそろそろ家に帰ろうか」
「やだーっ! 私もお兄ちゃんと一緒に行くのー! あと、君なんて呼び方やだー! 私も名前で呼んで欲しいっ! トレーシーだよっ!」
「すまない。だが、トレーシー。俺たちはこの国の者ではないんだ。他に仲間も大勢居るし、見たところこの小学校という場所はそれほど悪くはないと思うんだ」
幼学校と小学校と呼ばれている、この二つの施設については、デイジー王女にそのまま任せても良いのではないかと思っている。
女児しか居ないというのが良いかどうかは意見が分かれるところではあると思うが、孤児院として、また学校として悪くはないはずだ。
もう一つの、中学校は大問題なので、あっちは早急に改善してもらう必要があるが。
「違うのー! お兄ちゃんは、あの幼学校と小学校の夜の事を知らないからだよー!」
「どういう事だ?」
「どちらも、夜は大部屋に集まって寝るんだけど、私見たんだもん! 夜中に物音がして目が覚めたら、大きな人がお友達をどこかへ連れて行くのを」
これは……ザガリーめ。
あんなに幼い子供たちに何をしているんだっ!
トレーシーに何て言うべきかと考えている俺を他所に、ミオが口を開く。
「ふむ。そのお友達は、翌朝になったらどうなっていたのじゃ?」
「え? 朝はいなくて、お昼くらいになったら普通に戻ってきたよ? でも、何も覚えてないっていうの。おかしいでしょ? お昼まで寝ていたとは思えないし」
なるほど。ザガリーが支配の王笏の力を使い、女児の記憶を消したのだろうか。
今となっては何があったかわからないが、その女児が心に傷などを負っていない……と思いたい。
「まったく。アレックスから話は聞いておったが……己のモノで相手をモノに出来ず、変な棒に頼るなど男の風上にも置けぬのじゃ」
「ミオお姉ちゃん。変な棒って?」
ミオも俺と同じ事を思ったみたいだが、それはトレーシーに言わないで欲しかったんだが。
「あー、こほん。それよりも、その大きな人はもう現れないから安心してくれ。そいつなら俺が倒したから」
「えっ!? そうなの!? お兄ちゃんが倒したっていう事は、あの大きな人はお化けとかだったの!?」
「まぁ、そんな感じだ。だけど、俺が倒して塵のように消えていったから、もう大丈夫……」
「えぇぇぇっ!? あれって、お化けだったのっ!? やだやだやだ! お兄ちゃん、一緒に居てよぉぉぉっ!」
しまった。
トレーシーが怯え、俺にしがみ付いてくる。
うーん……トレーシーを小学校へ戻す為、安心させようとしていたのに、逆効果になってしまったか。
「ねぇねぇ、アレックスー。トレーシーちゃんが怖がっているしー、今日は一緒に寝てあげたらー?」
「うんうん。マリちゃんの言う通りだよー! でも、わがままを言っちゃうけど、幼学校と小学校は怖いから、お兄ちゃんのお家に連れて行って欲しいな」
「アレックス。別に良いのではないか? というか、私もアレックスの家に連れて行って欲しいんだけど……私の今の力だと、この街から出るのは厳しいかなー? だから、アレックス。この街のどこかで宿を取るのが一番良いんじゃない?」
マリーナとトレーシー、太陰がそれぞれ色々と言ってくるが、三人の意見を聞き、かつフョークラやグレイスたちと合流するには……またレイチェルの家に泊めてもらわないといけないのだろうか。
流石に、王宮に泊めてもらうのは無理があるしな。
「……ひとまず、デイジー王女を王宮へお送りしてから結論を出そう」
「ふむ。では、急いで行くのじゃ。我は早くアレックスの子を作りたいのじゃ」
「アレックス様。明日、きっと迎えにきてくださいね? 私も、侍女たちに子供の作り方を聞いて勉強しておきますので」
ミオの言葉を聞いて、デイジー王女がとんでもない事を言い出したので、ひとまず止めたのだが……声を掛けられた侍女さんが良識のある人だと願う事にした。
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