第889話 幼学校のお風呂
「ふぅー……やっと、童たちの入浴が終わったのじゃ」
「ミオちゃん、ありがとうねー! あとは先生たちがするから、ゆっくり浸かってね」
子供たちがお風呂を上がり、ミオが一人湯船の中へ。
ミオが大勢の女の子を相手に頑張っていたのを知っているので、暫くゆっくりさせてあげようと……俺たちも少し離れたところで湯に浸かる。
皆、まったりくつろいでいたのだが、一人になって暫くしたら、ミオがお風呂の中で泳ぎだした。
「ふふっ、ミオもあの子供たちみたいに泳ぎたかったんですねー」
「まぁ今はミオの一人の時間なんだし、見なかった事にしておこう」
「じゃあ、マリも泳ぐー!」
太陰と話していると、ミオを見たマリーナも泳ぎ始め……助けた少女も一緒になって泳ぎ始める。
なので、俺の両隣に太陰とデイジー王女がいるだけなのだが……太陰は変なところを触らないでくれ。
触ろうとする太陰と、それを防ぐ俺……デイジー王女にバレないようにと、お湯の中で静かなバトルを繰り広げていると、こっちへ泳いできたミオが、突然抱きついて来た!?
「えっ!? 太陰!? 姿を消す効果はまだ続いているよな!?」
「う、うん。そうだけど……どうして、ミオは私の力が効いているアレックスの位置が正確にわかったんだろー?」
「あの、ミオさんは何をされているのでしょうか? アレックス様の聖なる槍に腰を押し付けているように見えますが」
とりあえず、太陰もミオも場所がダメだ!
デイジー王女が居るところで、そんな事はしないでくれっ!
「ふっふっふ。アレックスよ。我が気付いていないとでも思ったのか? あの声が聞こえた後、魔力を探ったらすぐにわかったのじゃ」
「あ……そうか。ミオは姿を取り戻す前のオティーリエの位置もわかっていたよな」
「その通りなのじゃ。しかし、アレックスたちが別の場所へ行っている間に太陰の力の効果が切れ、見つかった時には焦ったのじゃ。まさか、童たちと一緒にお遊戯をさせられるとは思ってもみなかったのじゃ」
話を聞くと、この幼学校の生徒たちより遥かに大きいミオだが、容姿が十歳くらいという事もあり、連れて来られる場所を間違えられた女児と思われたそうだ。
だが既に外は暗いので、今晩はこのまま幼学校で過ごしてもらう事になったそうで、五歳児くらいの女の子に混ざって遊ばされ、甘い味付けの夕食を食べ、一緒にお風呂へ入っていたらしい。
「今回、多くの子供たちと接し……意外にも子供というのは可愛いという事がわかったのじゃ。という訳でアレックスよ。早速子供を作るのじゃ!」
「あ、私も作るー! ねぇねぇ、分身してよー!」
「あの、よろしければ私にも子供を作っていただけないでしょうか。作り方をご存知なのでしたら、是非ご教授いただきたいのですが」
ミオと太陰の二人が掛かりで攻められ、すぐ隣でデイジー王女が興味津々に見つめてくる。
マズい。ここへマリーナが加わったら、大惨事になってしまう!
「ミオ、わかった。この後、そういう時間を設ける。約束するから、今はやめてくれ」
「本当じゃな? 約束じゃぞ? とりあえず、二十人は作るのじゃ」
「わ、私は三人くらいが良いです。男の子と女の子……」
ミオの横で、デイジー王女が嬉しそうに家族構成を語っているが、まだ十歳だろ?
そういう事を考えるのは早過ぎると思うので、何とか止めたい。
「太陰。ミオの姿も隠してくれ。一旦、フョークラたちと合流しよう」
「えぇっ!? ここでしないのー?」
「しないって」
頼むから、太陰は……あとミオも、俺から離れて欲しい。
今はマリーナが少女と一緒に遊んでいるけど、二人が気付いたら更に面倒な事になる。
「それから、デイジー王女。一度、王宮へ戻りましょう。ご家族も心配されているでしょうし、もうデイジー王女へのザガリーの脅威は無いはずです。明日改めて、この三つの施設にいる子供たちについて相談させてください」
「それは、アレックス様が明日も会ってくださるという事でしょうか?」
「はい。ここの子供たちをそのままにはしておけませんから」
「そういう事でしたら、承知致しました」
よし! ひとまずデイジー王女は何とかなりそうだ。
あとは、マリーナと一緒に遊んでいる少女を……どうしようか。
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