第525話 レヴィアの暇つぶし
レヴィアが出来そうな事だが、この河の幅は問題無いが、浅すぎてドラゴンの姿になると身動きが取れなくなってしまう。
となると、今の人の姿のままで出来る事に限られる。
レヴィアと言えば、強力な水魔法が使えて、竜人族の強靭な身体能力があって……うん。思いっきり戦闘向きだな。
「そうだ、レヴィア。船の中に釣り竿があるんだが、魚でも釣ってみるか?」
「……潜って捕まえた方が早い」
「まぁそう言わずにさ。俺たちは海でレヴィアが船を引いてくれている時に、釣りを堪能したんだ。レヴィアも、俺たちがやっていた事がどんなのかやってみてくれよ」
「……アレックスがそう言うなら、やってみる」
そう言って、レヴィアが船の家の中から釣竿を取ってきて、河の中に針を落とす。
上手く行けば、今日の夕食にもなるし、レヴィアの良い暇つぶしになるだろうし、一石二鳥だと思っていたのだが、すぐにレヴィアが俺たちのところへやって来た。
「……アレックス。これ、楽しくない」
「って、早いな。まだ釣りを始めて、ほんの僅かな時間しか経っていないぞ?」
「……ただ待っているだけ。退屈」
「まぁ釣りっていうのは、そういうものだよ。もう少し頑張ってみなよ」
「……」
レヴィアは分かってくれたの……か?
釣竿を手にしたまま水面を見つめているから、大丈夫だよな?
俺もニースとの穴掘りに意識を戻して、道を進めていると、暫くしてラヴィニアが戻って来た。
「あなた。聞いた話の通り、この先は滝になっているわね」
「そうか。どれくらいの距離だろうか」
「んー、そんなに遠くはないわよ。この辺りで船を泊める事にして正解だと思うわ。もう少ししたら、急に流れがきつくなり始めるから」
「わかった。ありがとう」
「ただ、実は滝の高さがそれ程でもないのよね。まぁ流石に船は落下したら壊れてしまうでしょうけど」
それはダメだな。
この船はニナとノーラが作ってくれた船だ。
不慮の事故でどうしようもなかった……というのならまだしも、この先に滝があると分かっているのに船で突っ込む訳にはいかないからな。
「では、俺とニースはこのまま道を掘り進めて行くから、ラヴィニアは休憩しておいてくれ」
「えぇ、わかったわ。……ところで、レヴィアちゃんとプルムちゃんは何をしているの?」
「レヴィアは釣りをしているはずだが、プルムは見ていないな」
「そうなの? ……って、居たわ」
ラヴィニアの視線の先に目を向けてみると……ベッドの姿になったプルムの上で、レヴィアが寝ていた。
釣りは……レヴィアには合わなかったか。
あのままそっと眠らせてあげよう。
「ラヴィニア。レヴィアは暫くそのままにしておいてあげてくれ」
「いいの? なら、私もこの後に備えて休んでおくわね」
「この後? よく分からないが、わかった」
流石に滝の下まで穴を掘りするめると、それだけで日が暮れそうで、今日は例の洞窟を探索するつもりはないのだが……ラヴィニアが休むと言っているので、休ませてあげる事にしようか。
それから、ニースと再び頑張り……何とか、人が一人分通れるだけの通路を作る事が出来た。
滝のところは坂にしてあるので、ちゃんと戻る事も出来る。
ちなみに、ラヴィニアはそれほどでもないと言っていたが、それなりに高さのある滝なので、滝の裏に隠された洞窟というのが益々信憑性を帯びてくる。
「ニース。もう少しだけ行けるか?」
「うん! ニースは穴掘りが好きだから、全然大丈夫だよー!」
「そうか。じゃあ、もうひと踏ん張りだな」
坂を下って来た所で折り返し、反対方向へ――滝側へ道を掘り進める。
「パパー、凄いねー!」
「あぁ、確かに。滝つぼに近付いてきたから、ここはくれぐれも落ちないように……道を広げておこうか」
こうして滝の近くまで掘り進めてきて分かったのだが、滝の裏にあるという洞窟は……うん、本当にあった。
だが当初の読み通り、もう日が暮れているので、流石に今から内部の探索というのはリスクがある。
石の壁を出して、俺とニースが掘って来た通路を通れないようにて、滝の上へと戻る。
「レヴィア、プルム、ラヴィニア。お待たせ。一旦、戻ろうか」
「……ん。はふ……おはよう。アレックス、洞窟はあった?」
「あぁ、ちゃんとあったぞ。だが、今日は休んで、明日の朝から探索だ」
天后のところに、ステラの人形スティを残して来て居るので、ニースからメイリン経由で連絡してもらい、船を転移してもらうと、
「アレックスさん、お帰りなさい。夕食の準備が出来ていますので、どうぞ」
「アレックス、お疲れ」
「アレックス様。お帰りなさいませ」
リディアとサマンサ、ジェシカが出迎えてくれた。
あくまでアマゾネスの村へ戻って来ただけなのだが、家に帰って来て妻たちに出迎えられたような気になる。
うん、こういうのも悪く無いな。
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