挿話4 アレックスを慕う二人の少女から詰め寄られるギルド職員タバサ
通話魔法を終え、アレックスさんとの会話を終了した。
良かった事は、アレックスさんが魔族領で予想通り無事に開拓してくれている事だ。
でも悪かった事として、追加要員の転送を断られてしまった。
「まさかアレックスさんに断られるなんて、想定していなかったよ……」
エリーちゃんに話をした直後、ローランドさんから聞いたのか、モニカさんがアレックスさんとパーティを組みたいと言ってきた。
アレックスさんが既に遠い地で依頼を受けている事を伝えても、命の恩人だからと、引き下がってくれそうにない。
私個人としては、駆け出しの頃から相談に乗っているエリーちゃんと上手くいって欲しいけど、モニカさんが頑なにソロだったのは、アレックスさんと組みたいからだと聞かされてしまって……結果、アレックスさんに決めてもらう事にしたというのに。
「……失礼。そろそろアレックス様との会話が終わった頃合いではないだろうか」
「だ、ダメですよ! 終わるまで外で待っててって言われたじゃないですかー!」
あぁぁ……モニカさんとエリーちゃんが部屋に入って来たーっ!
「タバサ殿。私とエリー殿。アレックス様は、どちらを選ばれたのだ!?」
「そ、それがですね。実は……」
グイグイくるモニカさんと、口には出さないものの、かなり目に力が篭っているエリーちゃんに迫られ、アレックスさんとの話をかいつまんで伝えると、
「えぇっ!? アレックスが一人で良いって言ったんですかっ!?」
「む……私とエリー殿を選んでもらう話まで出来なかったと言う事か。つまり、最初から私の名前を出してくれれば、アレックス様の対応も違うはず」
「そ、それなら、私だって! タバサさん! 追加要員なんて表現ではなくて、私がそっちへ行くと言っていると、アレックスに伝えて欲しいです!」
二人が二人とも、自分の名前を出せば態度が違うはず……って、どっちも圧が凄い!
「と、とりあえず二人とも落ち着きましょう。向こうは魔族領です。おそらく、悪魔や魔族……聖属性以外の攻撃は通じ難いのではないでしょうか。お二人とも複数の属性を扱えるジョブですが、聖属性は不得手のはず。ですから……」
「確かに、マジックナイトは聖属性を扱えない。つまりアレックス様は、私の身を案じてくださっていると言う事か。あぁ、アレックス様は、離れていても私の事を気に掛けてくださっているのね」
「あ、あの……アレックスさんにはモニカさんの名前を伝えていないんですけど」
モニカさんは思い込みが激し過ぎない!?
「わ、私は対魔族として力不足でも、料理や掃除が出来るもん。これまで一緒に行動して来たし」
「でもアレックスさんは、いつの間にかパンやパスタ、それにアップルパイまで作れるようになっていたみたいですよ?」
「それなら、二人で色んな料理やデザートが作れるねっ!」
エリーちゃん。
確かに二人で料理は出来るかもしれないけど、そもそも食材が少ないから、メニューは限られると思うよ?
私の作戦は、あくまでアレックスさんが料理出来ないっていう前提だったからね?
モニカさんもエリーちゃんも引き下がる気配は無い。
かと言って、聖属性を扱えず、戦力にならない人を送ってしまうと、アレックスさんの負担になり、最悪の場合、治癒魔法で治せない程の怪我を負ってしまうかもしれない。
パラディンのアレックスさんは、低位の治癒魔法は使えるだろうけど、高位の治癒魔法は使えないはず。
この二人も攻撃寄りのジョブなので、治癒魔法は使えないだろうし、これまでの話からすると、アレックスさんに拒否されている以上、冒険者ギルドとして二人を送る事は出来ない。
仕方が無い。二人を一旦冷静にさせるため、さっきは話さなかった事を伝えよう。
「二人とも、心して聞いてください。実はアレックスさんから、食料に加えて女性の服を送って欲しいという要望がありました。つまり、今のアレックスさんは飢えた野獣……そう、今お二人が向こうへ行けば、獣のように襲われてしまいますよっ!」
「私のこの身体はアレックス様へ捧げる為にある。経験は無いが、アレックス様の為ならば、どんなハードな要望にも応えてみせるっ!」
「わ、私だって、覚悟は出来てるもん! むしろ、今まで全然手を出してこなかったんだから、そ、そういう事をそろそろしても良いと思うの」
……あ、あれ? 冷静にさせるため、引きそうな事を伝えたのに、二人とも更に乗り気になった!?
待って! とりあえず、もう一度アレックスさんと話をさせてっ!
無断で向こうへ送ったら、私が怒られちゃうからっ!
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