第11話 再び利用可能になった奴隷解放スキルを、早速使ってみた

 タバサと魔法で会話した際、南に街があると聞いたので、畑を南に向かって伸ばしていき、それに合わせて壁や堀を作っていく。

 ここへ来た直後は小屋を中心に畑や果樹園を作っていた事もあって、南へ向かい始めて数日経った今は、上から見るとマッチ棒みたいな形状に開拓されていた。

 しかも、ここ数日はずっと同じ方向に向かっているからか、


「アレックスさん。では、石の壁を開きますよ? 準備は良いですか?」

「あぁ、いつでも大丈夫だ」

「では……開けました! アレックスさん! 二体居ますっ!」

「任せろっ! ≪ホーリー・クロス≫!」


 朝になると、開拓している南側の壁の近くに、いつもシャドウ・ウルフが集まっていた。

 とはいえ、こちらもそれが分かって居るので、リディアがシャドウ・ウルフ一体だけが通れる隙間を壁に開けている。

 そのため、連戦になるとはいえ、一体ずつ戦えるので、


「≪ホーリー・クロス≫っ!」


 聖属性の攻撃スキル連打で全て倒す事が可能だ。

 朝のシャドウ・ウルフ退治を終えると、


「では、今日も私を守ってくださいね。アレックスさん」


 リディアが俺の背中に乗り、おんぶしたまま先ずは畑一つ分の壁と堀の拡張を行う。

 途中で現れるシャドウ・ウルフを俺が倒しつつ、先ずは壁を作って安全な場所を確保する事が出来た。

 いつもなら、この後クワを使って新しい畑を耕していき、新しい作物を植え、既存の畑の様子を見て回るのだが、


『エクストラスキル≪奴隷解放≫のクールタイムが終了しました。再使用可能です』


 唐突に、あの声が聞こえて来た。


「リディア。今の、聞こえたか?」

「え? 何がでしょう? 壁の外にシャドウ・ウルフが現れたんですか?」

「そうではなくて……いや、聞こえていないのであれば、別にいいや。俺にだけ聞こえたのかもしれないし」

「はぁ……えっと、何が聞こえたんですか?」

「初めて出会った時に言った、リディアを奴隷から解放したスキルが、また使えるようになったってさ。すっかり忘れていたけど、七日に一度使えるスキルみたいなんだ」


 一旦リディアと一緒に小屋へ戻りつつ、奴隷解放スキルについて、俺が知っている事を説明する。


「つまり私みたいに、この世界のどこかで奴隷扱いされている誰かを奴隷から解放して、ここに召喚する……という事ですか?」

「あぁ。はっきり言って、誰が来るかは分からない。それに、俺たちの位置が位置だから、来た人が家に帰る事も出来ず、この小屋で一緒に生活する事になる」

「……わかりました。私もアレックスさんに助けてもらった身です。本当は、このまま二人きり……こほん。その、食料や小屋のスペースの事もあって、人が増えるのは厳しいですが、奴隷にされている人を助けてあげたいですもんね」

「リディアには、食事や水などで負担が増えてしまうかもしれない。だが、俺も出来れば助けてあげたいと思っている。だから、そのスキルを使っても良いか?」

「はい。ですが、万が一危ない人が来てしまったら……ま、守ってくださいね?」


 当然だ! とリディアに答え、念の為俺の後ろへ移動させると、


「≪奴隷解放≫」


 スキルを発動させた。

 その直後、大きなツルハシを振りかぶった子供が現れたので、全力で制止する。


「ストーップ! 待った! それを振り下ろすなっ!」

「えぇぇっ!? ちょ、どうなって……危なっ!」


 俺の声で、振り下ろそうとしたツルハシを止めようとして……だけど急には止められず、体勢を崩してしまった子供とツルハシを何とか受け止める。


「大丈夫か?」

「お兄さんは誰? それに、ここは……どこ? 鉱山……じゃない? どこかの、家?」

「順を追って話そう。だがその前に……俺はアレックス。そして、こっちがリディアだ。君は何て名前なんだい?」

「……ニナ。えっと、あの……」


 ニナと名乗る子供が戸惑い、俺の腕から抜け出そうと、もがき始めた。

 だが未だにツルハシから手を放していないし、先ずはこのまま話して落ち着かせた方が良いだろう。


「突然の事で混乱しているだろうけど、俺たちはニナの味方だ」

「いや、それはそれとして、何て言うか……」

「ニナは、俺のスキルで奴隷から解放されて、おそらく遠く離れているであろう、この家に召喚されたんだ」

「そ、それは本当なの!? ……だとしたら凄く嬉しいんだけど、あの……暴れないから離して欲しい。お、男の人に抱きしめられたの……は、初めてだから」


 ニナが恥ずかしそうにそう言った直後、


「アレックスさん。……気付いていないのかもしれませんが、見た所ニナさんはドワーフ族ですよ? 人間からすれば子供に見えるかもしれませんが、立派な成人女性です」

「……え!?」


 背後から不機嫌そうなリディアの声が聞こえて来た。

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