第12話 十二歳くらいに見える、ニナが出来る作業
奴隷解放スキルで来たばかりのニナに、冒険者ギルドからの依頼で第四魔族領を開拓している事、街を目指して南に向かっている事、ギルド側が召喚魔法で街へ転送してくれるのは二か月先になる事を伝えると、
「状況は理解した。お兄さんはニナを奴隷から助けてくれた命の恩人。ニナも、この地の開拓に協力する」
ニナも開拓に協力してくれると申し出てくれた。
「ニナは料理とか作れたりするのか?」
「……た、食べる方が得意」
「じゃあ、聖属性で攻撃する術を持っている?」
「え……聖属性!? 流石に聖属性で攻撃出来るスキルは……無い、かな」
「それなら、農業をやった事があるとか」
「しゅ、収穫なら出来そうかも」
……って、あれ? やる気はあるものの、ニナが出来る事って殆ど無い……のか!?
先日タバサと会話した時、女性を送ると言われたものの、リディアが無言で心配していた通りの状態だ。
ニナはドワーフという背の低い種族らしく、見た目は十二歳程度の子供で、力があるようにも思えない。
そのため、クワを振るって畑を耕すというのも厳しい気がするし、どうしたものだろうか。
「待って。ニナは、お兄さんが挙げた作業は得意じゃなかったり、やった事がなかったりするけど、他に出来る事がある」
「実はリディアみたいに、精霊魔法が使えるとか?」
「精霊魔法っていうのは知らないけど、ニナはブラックスミス――鍛冶師――っていうジョブ。鉱物を加工したり、探し出す鍛冶魔法が使える」
「鍛冶魔法? そんな魔法があるのか」
「うん。奴隷紋があると魔法が封じられるから使えなかったけど、そこのツルハシを強化したり、鉄や鋼なんかを変形したり出来る」
ニナ曰く、ドワーフという種族自体が鉱物の扱いを得意としているそうで、地下や鉱山で暮らして居るのだとか。
エルフが森の中で暮らし、自然や植物の扱いに長けているのと同じようなものらしい。
「あ! じゃあ、アレックスさんの使っている剣や盾の修理が出来たりするのかしら?」
「どれ? ……これなら、特殊な金属とかではないから大丈夫。剣は切れ味を上げたり、盾は強度をそのままに軽量化出来たりもする」
「それは助かる。日々の手入れは行っているけど、最近は剣の利用頻度が高いからな。壊れたらどうしようかと思っていたんだ」
ここへ来るまでは、盾を使う事はあっても、剣を振るう回数はかなり少なかった。
ところが、今では剣を使わない日は無いからな。
「お兄さんはパラディン……って聞いたけど、鎧は着ていないの? 鎧の軽量化も出来るよ?」
「あぁ。いや、もちろん持っているし、小屋の隅に置いてあるんだが、訳があって今は予備の革鎧を着ているんだ」
最近は剣も振るうが、それ以上にクワを振るう事と、リディアをおんぶする事の方が多く、革鎧を着ている。
流石に、鎧を着たまま農作業は辛いしね。
「ま、待って。ニナさんは金属を加工出来るって言ったけど……もしかして、お鍋とかも作れるの!?」
「もちろん。材料さえあれば、家だって作れる」
「本当!? ここにはお鍋がフライパンしかないから、是非作って欲しい!」
料理好きのリディアが、目を輝かせてニナに依頼する。
しまったな。リディアが美味しい料理を作ってくれているから失念してしまっていたけれど、調理器具も足りていないんだった。
前回、タバサに食料とは別に衣類を送ってもらったから、リディアが俺のシャツ一枚だけで過ごすという、極力変な目を向けない修行はしなくて良くなったけど、必要な物をちゃんと確認しなければ。
そんな事を考えていると、
「鍋なんて、すぐに作れるけど、材料はある?」
「あ……そうか。ニナ、後で小屋から出れば分かるけど、外は本当に何も無いんだ。おそらく鉄なんかは手に入らないかも」
「そう? ちょっと待って……≪鉱物探索≫」
そう言って、ニナが知らないスキルを使用する。
パラディンというジョブなので、パーティ外でも多くの冒険者を助けた事があるけれど、まだまだ知らないスキルが沢山あるようだ。
「この辺り一帯、地面の下に色んな鉱物がある。第四魔族領は更地だって聞いた事はあるけど、元は山だったのかも」
「それってつまり、地下に向かって掘っていけば、鉄が手に入るって事?」
俺の問いにニナが小さく頷く。
更に詳しく話を聞くと、ニナのスキルで落盤を防ぐようにして掘る事が出来るのだとか。
リディアの精霊魔法だと、穴は掘れても、トンネルのような掘り方には向かないそうだ。
「ニナ。俺も手伝うから、その鉱物探しをお願いしても良いか?」
「うん。お兄さんの為なら、何でもする。……さっきの続きでも」
「さっきの続き?」
ニナが鉄を入手してくれるのは有り難いけど、続きって何だ?
「一体、何の話なんでしょうね!」
あと、このタイミングで、どうしてリディアが不機嫌になるんだよっ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます