第562話 落ち込むラヴィニアの父親
翌朝。目覚めると、ラヴィニア以外に人魚族の女性が水路に十人程居たのと、何故か俺の上にトゥーリアが居た。
人魚族の女性はまだわかる。
だが、トゥーリアが居るのはどういう事なんだ?
「まさか、もうレヴィアたちが天后のスキルで戻って来たのか!? ……って、だとしても、どうしてトゥーリアだけがここに居るんだ?」
起こして話を聞こうかとも思ったが、ぐっすり眠っているので、一瞬起こすのをためらう。
だが、思いっきり俺のを挿れながら眠っていて、時折ビクンと身体を震わせるので、すぐに分身を解除してトゥーリアを起こす。
「トゥーリア。そろそろ朝だと思うんだが」
「まだ外は暗いよー……ぐぅ」
「いや、窓も無いのに、わからないだろ」
とはいえ、俺も体内時計で朝だと思っているだけで、正確な時間は分からないが。
とりあえず、人魚族の水路はともかく、俺が眠っていたハンモックやその周辺の床を汚しまくっているのは申し訳ないので、水魔法で掃除する事に。
「≪アクア・バブル≫……えっ!?」
泡を出して周辺を綺麗にする水の初級魔法を使ったのだが、泡魔法の効果範囲が以前より広くなっている。
これは……ここに居る人魚族の内の誰かからもらったスキルによるものだろうか。
ラヴィニアが水魔法を得意としているし、水魔法の効果が向上とか、そう言った類の気がする。
部屋が綺麗になったところで、改めてトゥーリアを起こそうとしたのだが、その前に部屋へ誰かがやって来た。
「アマンダちゃん、アレックスさん。おはよう。昨日はお楽しみだったみたい……えぇっ!? こんなに大勢でっ!? お楽しみ過ぎよぉっ! ……私も混ざりたかったぁぁぁっ!」
「お、おはようございます」
「アレックスさん。これからは、私もアレックスさんの家族だし、アマンダちゃんみたいに、無茶苦茶しても良いのよ?」
ラヴィニアのお母さんがグイグイ迫って来るが、すぐ傍に娘が居るし、父親も居るので丁重にお断りする。
「えぇー……ズルいわぁ。私も、昨日眠ってしまわなければ……うぅ、アマンダちゃんの結婚披露宴で変に緊張したからか、お酒を飲み過ぎてしまったのよね」
その酒は、チニーロが濃い物に変えたと言っていたが、今言った通り、味が分からないくらいに緊張していたのかもしれないな。
しかし、せっかくの親子の再会だというのに、殆ど話が出来ていないのではないだろうか。
そう思いながらラヴィニアを起こし、まったく起きないトゥーリアを抱きかかえた状態で、昨日の広い集会場へ案内される。
そこには寝起きだと思われるラヴィニアの父親が居て、
「おぉ、アレックス君! そしてアマンダ……すまない。昨日、嬉しさのあまりつい飲み過ぎてしまったようだ。どうか、もう一晩泊まっていく訳には……ダメか」
「すみません。玄武の居場所がわかったので、早く助けに行ってあげたいんです」
「で、ではアマンダだけでも、ここに残るというのは……」
予想していた言葉を告げてきた。
俺は玄武を助ける為に第一魔族領へ行くので、ここに泊まる訳にはいかないが、ラヴィニアが残ると言うのであれば……
「お父さん。私はアレックスさんと一緒に居ます。それに、アレックスさんは困っている仲間を助けようとしているのよ? 飲み過ぎて寝てしまったお父さんとは違うんだから」
「うぐ……」
父親の言葉をラヴィニアがバッサリ切り、流石に落ち込んでしまったようだ。
何かフォローを……と思ったのだが、
「けど、玄武さんを無事に助け出した後なら、また来る事も出来ると思うわ。その時は、アレックスさんが忙しければ、私だけが来るというのでも構わないし」
「アマンダ……わかった。アレックスさん、無事に玄武様を救出された暁には、是非ともまた来て欲しい」
「分かりました。その時は、じっくり話させてもらいます」
ラヴィニアの言葉で、父親が顔を輝かせた。
一先ず纏まったので、安堵していると、
「アレックス様も来てくれないと困るわ」
「昨日の凄まじいアレが忘れられないの」
「私、実はアレックス様が初めての人で……」
少し離れた所で、人魚族の女性たちが話していて……ラヴィニアの父親には聴こえていないようで、良かったかもしれない。
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