第194話 みんなのアルバム
「美味しいっ! リディアー! 今日の朝ごはんのパンケーキ……めちゃくちゃ美味しいよぉぉぉっ!」
「うん。ニナの言う通り、確かに旨い! 流石リディアだな」
「えへへ、ありがとうございます。昨日いただいたミルクと卵を使って作ったので、ようやく納得出来る味になりました」
確かにリディアは、ミルクと卵があると、更に味が旨くなると言っていたが、正にその通りになったな。
ただ、何故か昨日のミルクと強調されてしまったが。
け、今朝渡したミルクだって、牛のミルクなんだぞ? ……まぁボルシチが獣人になってから搾った物だが。
「あと、今朝いただいたミルクでチーズを作ってみようかと思います」
「おぉ、リディアはチーズも作れるのか」
「はい。昨日、ミルクをいただいた時点でチーズを作ろうと思っていましたので。それで、レモンが必要なので、昨日お願いしたんです」
乳搾りをした後、リディアにレモンの樹が欲しいと言われ、魔力を供給したのだが、チーズ作りの為だったのか。
……俺には、チーズを作るのに何故レモンが必要なのか分からないが、リディアが言うのだから間違いないのだろう。
「しかし、不思議ッス。どうして、自分が連れて来た乳牛が、牛耳族になったッス? 昨日の時点では、間違いなく普通の乳牛だったッス。それに、特別な乳牛とかでもないッス。強いて言うなら、アレックスさんへの土産なので、健康で乳の出が良い乳牛が選ばれたというくらいッス」
ビビアナが首を傾げ、不思議そうにボルシチを眺めているが、どうしてこうなったのかは俺も知りたい。
……ムギの話が原因だとすると、毎日俺のを飲んで居たソフィは大丈夫なのだろうか。
まぁ今の所何も起きてはいないが。
一先ず、何人かが今日の作業へ移動したところで、ソフィが地下へ行きたいと言っていた事を思い出す。
「そうだ、ソフィ。昨日言って居た、地下にある黒髪の一族の施設の話なんだが……」
「はい。メイリン様からご依頼いただいた、作物への水撒き装置を大至急開発致します」
「あ、あぁ。とりあえず俺が言いたかったのは、今日はシェイリーの所へ行って、スキルを確認してもらうから、行くのはそれ以降で……という事だったんだが」
「畏まりました。今、人気の静止画ですが、これを動画にする為にも、頑張りたいと思います」
そうだ。ソフィが地下の施設へ行きたいと言っていたが、先にメイリンから魔法装置の開発を依頼されたから、その後で……という話になったんだった。
「……って、ちょっと待った。今、ソフィが言った人気の静止画とは?」
「ユーディット様が天使族の村より持ち帰った魔法具の事です。皆様、一人一枚ずつで順番待ちが……」
順番待ちだなんて凄いと思ったのだが、一体何を撮って居るのだろうか。
「ソフィさん! その話は、アレックスには内緒に……」
「エリー? 俺に内緒とは、どういう事なんだ? ……なるほど。この棚に、あの魔法装置から描かれた絵があるんだな?」
「あぁぁぁ、アレックス! ダメぇぇぇっ!」
エリーの目が一瞬チラっと動いた先にあった棚へ向かうと、引き出しの中に見知らぬ大きな本があった。
それを手にした瞬間、サクラやモニカが逃げ出したのだが……とりあえず、中身を見てから判断しようか。
表紙には……何も書かれていない。
一先ず中を覗いてみると、昨日の日付と俺の名前が書かれた下に、ユーディットの絵とニナの絵が綺麗に綴じられていた。
うん、俺が最初に撮った物だな。後ろで、サクラとモニカが脱いでいるし。
次のページを捲ってみると、同じく昨日の日付とエリーの名前があり、いつの間に撮ったのか、俺の横顔が描かれた絵が綴じられている。
次はユーディットの名前で、またもや俺が。
その次はリディア、ニナ、メイリン、ユーディット……って、どうして皆で俺の姿ばかり撮っているんだ?
その後は未だ撮っていないからか、空白のページが続き、最後の方に昨日の日付とサクラの名前があり、その次のページはモニカの名前になっていたのだが、
「サクラ、モニカ。……完全に逃げたか。後でお仕置きだな」
風呂に入る直前の全裸の俺の姿や、その……アレが大変な事になっている絵が描かれていた。
「……で、この本は、ここに名前が載っていない者には見せていないんだな?」
「基本的には。あとはレイとか、ツバキやミオが見に来るくらいだから。ね、お願い! この本は許してっ! 燃やさないでぇぇぇっ!」
いやそれ、ほぼ全員だと思うんだが。
とりあえず、サクラとモニカのページ以外は良いとして、二人には後で説教をする事にした。
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