第368話 モニカの聖水
「モニカ!? どうして、トンネルの中に居るんだ!?」
「だって……だって、ご主人様に捨てられたからぁぁぁっ!」
「いや、モニカを捨てた訳ではないだろ。行動の目的によって、適した能力を持つ者が対応するのは当たり前だろう」
「でも、でもぉ……」
ダメだ。モニカが本気で泣いていて、会話が成立しない。
俺は、ヴァレーリエと共にニナを家まで送り届けるように指示したんだがな。
しかし、俺たちがあのトンネルを出てから、モニカはずっとここに居たらしいので、
「あ、あの……み、水はお持ちでないでしょうか。実は喉がカラカラで」
「そういう所も含めて、一旦皆が居る所へ戻るように……って、残っていたのは仕方が無い。ひとまず村へ行って水をもらおう」
「私としては、ご主人様のお聖水でも良いのですが」
バカな言葉をスルーしつつ、フラフラなモニカを背負って、急いで村へ。
村の北側にあった一番近い家に行くと、
「失礼。仲間が苦しんで居るんだ。水を分けてもらえないだろうか」
勝手に扉を開けて玄関へ。
暫く待っていると、奥から家人が出て来て、
「お水ですか? こちらで宜しければ……どうぞ、吸ってください!」
手にしていたコップを床に置いたかと思うと、突然服を脱いで、大きな胸を顔に押し当ててきた。
よ、よりによって、例のポーションを飲んで居た者だったか。
ナズナが床のコップを取り、俺の背中でぐったりしているモニカに飲ませると、
「……ふっかーつ! ご主人様! 大きさなら私だって負けません! どうぞ、吸ってくださいませ!」
コップ一杯の水でそこまで変わらないだろうと思うのだが、モニカが女性に対抗して胸を露出してきた。
「そ、そういう事なら私も……モニカさんには劣りますが、決して小さくはありませんからっ!」
「なるほどー。じゃあ、サンゴちゃんも参戦しちゃうねー! お父さん。早く分身して、誰の胸が一番良いか判断してよー!」
「いや、ナズナもサンゴも……ま、待ってくれ! 君は魅了状態になってしまっていて……」
家人の女性、モニカ、ナズナ、サンゴの四人から迫られ……まぁその、分身を使う事になってしまった訳で。
俺の身体が光り、新たなスキルも貰ってしまったのだが、この女性が獣人族で対獣人だと攻撃力が上昇するスキルが有効だったからか、割と早く気を失わせる事が出来た。
「よし。この女性には悪いが、今の内に行くぞ」
「えぇぇっ!? ご主人様。も、もう少しだけお願いします! 私はまだ二回しか……」
「その様子だと、モニカは回復しているよな? ならば、来てくれ。モニカに頼みたい事があるんだ」
「私にですか? ご主人様のお役に立てるというのであれば、何でも致します! では、早速子作りを……」
「違うって! とにかく、行くぞ」
「つ、冷たいですーっ!」
玄関で気を失ってしまった獣人族の女性を奥にあったベッドへ寝かせると、東の茶畑へ急ぐ。
「ご主人様。これは……あ、そういう事ですね!」
「あぁ、そういう事なんだ。頼むよ」
「わかりました。先程の家から、下着を履かずにそのまま走ってきた甲斐がありました。では早速……」
「……って、どうしてスカートを捲り上げて、俺に尻を見せるんだ?」
「え? ご主人様が屋外で……周囲から見えづらいように、畑の中で開放感を得ながらしたいという事では!?」
「そんな訳あるかぁぁぁっ!」
「ですが、何度か畑の中でしましたよね?」
モニカが意外……とでも言いたげに、不思議そうに尋ねてくる。
いやまぁ畑の中どころか、地底湖だったり走りながらだったり、モニカとはいろんな場所でいろんな事をしてしまっている訳なのだが。
「あ、アレックス様! そういう事でしたら、私も! 私にもしてくださいっ!」
「いや、ナズナ。ここへモニカを連れて来た理由を忘れていないか?」
「……あ、そうでした。アレックス様とモニカさんが、外でされているというのを聞いて、つい私もして欲しくなっちゃいまして」
ナズナはこんな感じではなかったのに、一度知ってしまったら大きく行動が変わってしまった気がするんだが。
「とりあえず、モニカはこの畑に聖水を撒いて欲しいんだ」
「えぇっ!? そ、そんな……屋外で聖水を出すなんて、恥ずかしいっ!」
「いや、既に下半身を露出しているのに何を言っているんだよ。まぁ本当に恥ずかしいなら、俺たちは離れておくから、頼む」
「あ、冗談です。では早速……あ、あれ? 枯れたっ!? 私の聖水ですよっ!? むしろ喜ぶべきなのにっ! 何故っ!?」
モニカの言う通り、聖水を根元へダイレクトにかけられた樹が、一瞬で枯れていった。
思った通り効果はあったのだが……モニカは植物相手に何を言っているんだよっ!
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