第499話 反省した村長の息子
さて、村長の息子たちは反省しただろうか。
反省してくれている事を願いながら扉を開けると、
「待て! 入って来るなぁぁぁーっ! って、出たぁぁぁっ!」
「ん? 何をしているんだ? しかも、村長まで」
「あ、アレックス様……この度は、愚息がご迷惑をお掛けしてしまい、申し訳ありませんでした。心よりお詫び申し上げますので、どうかここから出してください」
何故か全員目の下にクマを作り、崖とは反対側の壁にピッタリと貼り付いていた。
「よく分からないが、村長の息子は反省しているのか?」
「してますぅぅぅっ! してますから、ここから出してくださいぃぃぃっ! いつ崖が崩れるか分からないんですぅぅぅっ!」
「崖が崩れて下に落ちても、ちょっと痛いくらいだろ?」
「笑顔で何を訳のわからない事を言っているんですかっ! そんな訳ないじゃないですかぁぁぁっ!」
ふむ。とりあえず反省しているのは本当のようなので、閉鎖スキルを解除するか。
「結界は解除した。外に出られるぞ」
「ありがとうございますぅぅぅっ! ……ま、待つのだっ! ゆっくりだ! そちらの端の者から静かに出るのだっ!」
村長の指示の元、村人たちが一人ずつ小屋から出て来る。
……普通に出れば良いと思うのだが、まぁ好きにさせようか。
全員が小屋から出ると、それぞれ地面に倒れ込んだのだが……本当に一晩何をしていたのだろうか?
「村長。どうして、村長がこの小屋へ?」
「へっ!? あ、いえ。あ、アレックス様の様子を見に来たのですが、何故か中に愚息がおりまして」
「で、中へ入ったのか。このスキルは外から中へ入る事は出来るが、中から外へ出る事は出来ないからな」
「そのようですね。それで、愚息がアレックス様に何をしでかしたのかを聞きまして、崖がくずれないようにと全員で反対側の壁に立っておりました」
「そうか。とりあえず、村長の息子が反省しているなら良いが、二度と俺の妻や娘に危害を加えようとするなよ?」
本当は怒り心頭だが、反省していると言っているので、笑顔を浮かべて穏やかに話しかけたのだが……どういう訳か、かえって怯えられてしまった。何故だ……。
「アレックス様ぁ。父も兄も居りましたし、用事は済みました? でしたら、朝食をご用意いたしますので、是非食べていただければと」
「それはありがたい。では、頼むよ」
「はい、喜んでっ! 家でお待ちしておりますので、是非来てくださいっ! ……あ、お父さんと兄さんは、空気読んでね。暫く帰って来ないで」
そう言って、村長の娘さんが慌てて家へ戻って行った。
「あ、あの。もしかして、私の娘とも……あ、いえ。何でもありません」
「父さん。それは今更過ぎるだろ。あいつはもう十八だし、むしろ初めてが遅いくらいだと思うんだが」
「くぅぅぅ。せ、せめて普通の男であれば……あ、アレックス様。我々は昼前くらいまでここに居りますので、家でゆっくり……ゆっくりしていってくださいませ」
村長とその息子が何か話しているが、暫くこの場に居るようなので、娘さんの所へ行く事に。
家へ行くと、この短時間でよく準備出来たなと感心する程の料理が並べられ、ラヴィニアたちと共に美味しくいただく事に。
「アレックス様。こちら、この村の特産物の一つである、ガーリックとニラの炒めものです。どうぞ」
「あ、あぁ。ありがとう」
「あと、別の村で採れたビッグ・イール……この辺りでウナギと呼ばれる魚料理です。それと、カキという貝とジンジャーのフライです」
この村は、朝から物凄く食べるんだなと思いつつ、出された物を残す訳にはいかないので、全部食べる。
ただ、何故か村長の娘がずっと俺にくっついているのと、それを見たラヴィニアが何かを期待している目を向けていて、ニースとユーリは、
「ニースたちは、隅っこで普通のご飯を食べているからー」
「ユーリたちのことは、きにしなくてよいよー!」
と、よく分からない事を言ってくる。
まるで俺が食べている料理が、普通ではないような言い方なのだが、流石にそれは失礼ではないだろう……か!?
「あ、あれ? 変だな。ちょっと身体が……」
「うふふ。アレックス様ぁ。次はデザートを御所望なのですね? 私をどうぞ」
「え!? いや、そういう訳では……け、けど、どうして!?」
「実は、アレが元気になる食材を使った料理を沢山ご用意いたしました。という訳で、鎮めないといけませんよね」
や、やられた!
あと、ラヴィニアたちは気付いていたんだな。
「ん……っ! やっぱりアレックス様のは凄いですぅーっ!」
「あーっ! ずるーいっ! 私も混ぜてくださいっ!」
「グッジョブよ! という訳で、私もーっ! 」
どこかで覗かれていたのか、村長の娘が俺の上に乗ったところで、何故か村長の家に村の女性たちが押しかけてきて……どうしてこうなるんだーっ!
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