第12章 異なる環境でもスローライフ

第498話 夜這いの風習がある村の朝

 朝、目が覚めると両隣でニースとユーリがすやすやと眠っていた。

 あと、結衣が俺の上で身体をビクビク跳ねさせながら、気を失って……もとい眠っている。

 ここまでは思っていた通りなので、構わない。

 だが、


「アレックス様ぁぁぁっ!」

「次は私よっ! 私の番なんだからぁ!」

「アレックスさんの、美味しいですぅ」


 いつの間にか分身スキルが発動していて、村の女性たちが大変な事になっていた。

 大半の者が気を失っているようだが、人数が多いからか、都度誰かが目を覚まして待ち行列に加わる。

 うん。分身解除。


「えぇっ!? アレックス様っ!? どうして急にっ!?」

「待ってくれ。とりあえず状況を教えて欲しい。どうして俺たちが眠っている部屋に、こんなにも大勢の女性が?」

「どうしてって、夜這いですけど? この村では、相手が強く拒絶しなければ、夜襲って良いので。とはいえ、流石に既婚者と未成年はダメですが」

「あの、俺も既婚者なんだが」

「あ、一夫多妻制なので、男性はオッケーです」


 えぇ……一体、そのルールは何なんだ。

 というか、ニースとユーリの教育に宜しくないので、皆服を着てくれないだろうか。

 ……いや、この人数はもう無理だな。部屋も物凄く汚れているし。

 それより、ニースとユーリを眠ってる間に別の部屋へ連れて行く方が良いか。

 まずはニースをそっと抱きかかえると……思いっきり目が合った。


「あ、パパー。やっとニースも混ざって良いって事かなー?」

「いや、違うから。というか、起きていたのか」

「うん。だって、村の人たちの声が凄いし」


 あー、そうか。この状況で爆睡している俺が普通じゃなかったか。

 もうフィーネやソフィたちで慣れてしまって、こんな状況でも普通に寝れるようになってしまったからな。


「あ! という事は、ユーリも……」

「うん。おきてるよー!」

「と、とりあえず、二人共朝食にしようか」


 分身を解除し、アレが終わったところで結衣も影の中へ戻って行ったので、ラヴィニアを誘い……あ、昨日と違って今日は大丈夫そうだな。


「だって、昨日は一人であなたの分身を七人も相手したんだもの。流石にあれは大変だったけど、今日は平気よ」

「良かった。とりあえず外へ出るか」

「気絶している人たちが沢山居るみたいだけど、大丈夫なの?」

「一応、俺とユーリで手分けして治癒魔法を使ってきた。すぐに目覚めるだろう」


 ラヴィニアとそんな話をしていると、村人の一人が駆け寄って来る。


「あ、あのっ! 私、リンダって言います。朝食なら是非私が……」

「ズルいわよっ! 私がアレックス様にお食事を差し上げるんだからっ!」

「えっと、朝食替わりに、ウチを食べてくれませんか? あ、もちろん夜這い的な意味で」


 とりあえず、この女性陣をどうするかだな。

 全員俺と行動を共にしたいと言っているらしいが、流石にこの人数を連れて行く訳にはいかない。

 かといって、ここから五人を選んで連れて行くなどと言ったら、大変な事になるだろう。

 さて、どうしたものか。


「こほん。今後の事を話し合いたいので、先ずは各自朝食を済ませて来て欲しい。昼前に、またこの小屋の近くに集合という事で」

「はいっ! わかりましたっ! ……あ、でもちょっと身体を洗いたいです」


 俺の言葉で女性たちが外へ行ったり、ラヴィニアの居る水路へ入ったり、自分の服を探したり……と、それぞれ行動し始めた。

 まだ倒れている者は居なさそうだし、俺たちも外へ出て大丈夫だろう。


「ラヴィニア、ニース、ユーリ。朝飯前にしなければならない事があるんだが、構わないか?」

「私は大丈夫よ。あなたのを沢山飲んでいて、お腹がタプタプなくらいだし」

「ニースも平気ー!」


 ユーリも大丈夫という事だったので、先ずは村長の所へ。

 夜に村長の息子がしようとした事を話し、しっかり反省してもらわなければ。


「村長、居るか? ……あれ? 留守なのか?」


 村長の家をノックし、声をかけても反応が無い。

 少しすると、後ろから半裸の女性が走り寄って来た。


「アレックス様。父に何か用ですか?」

「えっと、村長の娘さん……なのかな?」

「はいっ! あの、昨日は凄かったです! よろしければ、家で続きを……」

「いや、君のお父さんとお兄さんに用事があって……お母さんは?」

「母はもうかなり前に病で……」

「そうか、すまない」

「いえ。……あ! という訳で、可哀想な私を励ます為に、続きを……」


 どうして話がそっちに行くんだよっ!

 娘さんに家の中を確認してもらったが、やはり村長は居ないようなので、先に息子たちの様子を見ようと、昨日俺たちが泊まるはずだった場所――崖の傍の家へ向かう事にした。

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