挿話118 最前線で勇者パーティと戦うローランド

 デドリックの指示により、第三魔族領で最も戦いが激しいという西側へやって来た。

 ゴードンちゃんは勿論、俺の七天使も揃って居る。

 その為、場所が変わっただけでこれまでと同じ暮らしが出来ると思っていたのだが、どうやら最前線というのは中々に難しいようだ。


「ローランド! 北西の防衛ラインが破られたらしいよっ!」

「ふっ、分かった。俺が出よう」

「待って! 南西も応援が欲しいって!」

「ゴードンちゃん。南西は大きな池があったはずだ。そこまで下がり、得意な地形で戦うように伝えて欲しい」


 そう言って、北西に馬を走らせる。

 デドリックが水の四天王と呼ばれているだけあって、第三魔族領には水棲系の魔物が多い。

 だが北西エリアは水辺が少なく、部下たちが本来の力を出せないから、俺が行くのがベストだろう。

 暫く走ると、小さな泉で休憩する人間たちが居た。

 あの程度の泉だと、大型の魔物は無理か。


「むっ!? 誰だっ!」

「我が名はダークナイト、ローランド。よくも、我が領地で好き勝手してくれたな」

「ちっ! 皆、新手の敵だっ! 来てくれっ!」


 そう言って、男が剣を抜く。

 おそらく、あの忌々しい中央神殿に所属する勇者ではないだろうか。

 あの日、神殿に居た勇者は死んだらしいが、世界各地に散らばっていたから、いつまで経っても魔族領に攻め込もうとする勇者パーティが絶えないのだとか。


「しかし……お前、随分と幼いな」

「お、幼くなんかないっ! もう十五歳で大人だっ! それに勇者のジョブだって授かっているんだからなっ!」


 小柄でキャンキャンと吠える子供っぽい勇者が、俺をジッと見上げて来る。

 うん。悪く無いな。

 今までは、俺に逆らおうとする者など皆無だったが、この勇者のように、正義に燃える少年を無理矢理……というのも偶には良いだろう。


「こ、こいつ……変な目で俺を見るなっ!」

「勇者殿、すまぬ。待たせたでござる」

「勇者よ。こいつが新手の敵か? 全身黒い鎧……へっ、トロそうだな」


 うーん。勇者は童顔で肌も綺麗なのだが、連れはダメだな。

 ボサボサの頭で、片刃の剣を手にした痩せかけた剣士と、浅黒い肌で筋肉質の弓使いなのだが、どちらも俺より遥かに歳上のオッサンだった。

 悪いがオッサンに興味は無いんでな。

 二人ともスキだらけで、すぐに斬り殺せそうだが……さて。とりあえず邪魔な二人を斬るか、それともあえて足だけ切って動けないようにして、その目の前で勇者とするか。


「さて、誰から死にたいんだ?」

「はっ! 周りをよく見て言うんだな! たった一人で俺たちに勝てると思っているのか!?」

「弱い犬程良く吠える。さっさと掛って来るが良い」

「はっはっは。まぁ、ちょっと待てよ。こっちにも少し都合があってな……お、来た来た」

「ふっ……まぁお前たち雑兵如き、何人来ても一緒だ。待ってやろう……何っ!?」


 弓使いの視線の先を見てみると、水浴びをしていたのか、半裸の若い女が現れた。

 しかも美少女で、胸がデカい!

 女……ひ、久しぶりに見る本物の女だ!


「ごめんね、勇者君。で、新手って、この黒い騎士?」

「はい! というか、どうして服を着ていないんですかっ!」

「だって、泉で身体を洗っている時に呼ぶから……」


 おぉぉぉ……女! 人間の女ぁぁぁっ!

 この女を新たな俺の屋敷に連れて帰ろうと思ったところで、突然脇腹に激痛が走る。

 見れば、鎧の継ぎ目から矢が刺さっていた。


「おいおい。こいつ、めちゃくちゃ弱いぞ? もしかして強化魔法を待つ必要なかったか?」

「では、次は拙者が……参るっ! ――っ!?」

「えっ!? そ、そんなっ!」


 オッサン剣士が突っ込んで来たので、大剣で身体を真っ二つに斬る。

 その様子を見て、硬直していた愚かな弓使いを一薙ぎに。


「俺の後ろへ! ……来い! 俺が相手……がはっ!」

「ゆ、勇者君っ!? や、やだぁっ! ひぃぃぃっ! あ……」


 勇者を殴って気絶させると、その後ろに居た賢者らしき女の首を刎ねる。

 くそっ! 女なんかに気を取られたせいで、この俺様が攻撃を受けるとは。


「……この怒り。お前にぶつけさせてもらうぞ」

「ん……あぅぅぅっ!」


 気を失った勇者のズボンを脱がすと、怒りのままに無理矢理突っ込み、出しまくってやった。

 ちっ……本当は起きている時にやりたかったのだがな。

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