挿話117 アレックスのお世話係を任命されていたミリア

「そのまま家に帰って寝るというのが俺からの指示だ」

「はーい、わかったー!」


 村長さんから、先生のお世話係をするようにって言われたんだけど、何もせずに家へ帰る事になっちゃった。

 大丈夫なのかな?

 でも村長さんも、先生と一緒に一晩寝るだけだよって言っていたし、家で寝るのも、先生と寝るのも一緒だよねー。

 ……あ、でも、先生にくっつきながら一晩過ごせるっていうのは、いいな。


「ミリア、残念だったな。師匠のお世話係」

「うん。ミリア、先生と一緒に寝たかったなー」

「そうだよなー。あんなに沢山の女の人たちが悦んでいるんだから、絶対に師匠は凄い訳だし、どうせならミリアも初めては師匠が良かったよなー?」

「え? あ、うん」


 お兄ちゃんが何を言っているか、よくわからないけど、何か教えてもらうなら先生が良いよね。


「ただい……」

「……という訳で、ミリアには一晩あの者の相手をしてもらいたいのだ」

「な、何を馬鹿な事を! しかも我々に無断でミリアを送り出し、事後報告だとっ!? ふざけるのも大概にしろっ!」


 なんだろう。

 家に帰ってきたら、中から村長さんとパパの声が聞こえてくる。

 何だか喧嘩しているみたいなんだけど。


「パパー? どーしたのー?」

「ミリア!? 良かった! 逃げてきたのか!?」

「逃げて……って、何からー?」

「勿論、あの男からだよ! 国王だか何だか知らないが、何十人にも増えるし、アレも異様だという噂だし」

「パパー、アレってー?」

「それは……まだミリアは知らなくて良いからね」


 アレって何だろう。

 どーして、パパは教えてくれないのかな?

 そんなパパの一方で、村長さんは焦りだす。


「み、ミリアではダメだったと!? やはり幼過ぎたというのか!? それとも、ミリア一人では満足出来ないという事か!? ……い、いかん! 村の娘たちが襲われるっ!」


 そう言って、村長さんが走って家を出て行った。

 んー、いったい何だったんだろ。


「まったく……まだ妊娠する心配がないからと、ミリアをあんなどこの誰とも分からない奴に差し出そうとするなんて、本当に何を考えて居るんだ!?」

「……ミリアじゃなくて、私にしてくれれば良かったのに」

「ん? 今何か言ったか?」

「いいえ? 何も言っていませんよ?」


 パパの言葉に、ママの小声で何か呟いていたけど、何だったのかな?


「……よし、決めた! みんな、この村を出よう! 違う村へ引っ越すんだ!」

「お父さん、何を言っているの!? ここには師匠が居るんだよ!? 俺はまだまだ学ぶ事が沢山あるんだ!」

「メルヴィン。お前が今日一日、あの男と一緒に居たのは知っている。確かに奴はグレート・ボアを倒すような凄い男だ。だが人魚族に天使族、更に獣人まで妻にしているらしいじゃないか。流石に他種族はどうかと思うぞ」

「父さんこそ何を言っているんだよ! 他種族を……しかも様々な種族に認められるような凄い人なんだよ!? 特に獣人のユイちゃん……あんな子を奥さんに出来たら最高じゃないか!」

「え!?」

「え!?」


 今度はお兄ちゃんの言葉でパパが固まっちゃった。

 どうしたんだろ?

 パパが唖然としているから、ママにミリアのお話しを聞いてもらおうかな。


「ママー。ミリアも、まだ先生から教えてもらってないよー?」

「そうよねー。ところで、ミリアちゃんは、アレックスさんのアレを見たの? あ、アレっていうのは、その……男の子にだけあるアレなんだけど」

「あ、うん! ミリア、近くで見たよー! あのね、とっても大きいの。ミリアの腕より大きくてねー、お兄ちゃんやパパのとは全然違ったのー」

「そっかぁー……いいなぁ。挿れてとまでは言わないから、せめて触らせて……いや、舐めるくらいなら良いわよね? ……こ、こほん。い、今のは何でもないからね?」


 ママと小声でお話ししたけど、ママも先生のを見てみたいらしい。

 だったら、明日ママと一緒に先生のところへ行ってみよーっと!

 そんな事をママとお話ししたあと、お布団で眠り、その翌朝。


「ミリア、起きなさい。出発するよ」

「ふぇ? パパ? まだ眠いよー」

「いいから着替えるんだ。あとは、荷車の上で眠って居れば良いから」


 よく分からないけど、皆で何処かへ出掛ける事になったらしい。

 ……ママもお兄ちゃんも凄く不機嫌そうだけど。

 とりあえず、顔を洗おうと思って河へ行くと、薄暗い中で川の水が白くなっていた。

 これが、昨日みんなが言っていた、奇跡のお水かな?

 昨日、ミリアは飲めなかったから、ちょっと飲んでみよっと。


「……美味しいっ! ……あれ? 身体の奥が熱い?」


 白いお水を飲んだ途端に、お腹の奥が熱くなって、先生に会いたくなった。

 ぎゅーっと抱っこしてもらいたいなーって思っていたら、


「ミリア? 何をして……か、川が白い! まさか、飲んだのか!? ……ミリア! もう着替えなくて良い。そのまま出発するぞっ!」

「えっ!? パパ!? 待って! 先生に会いたいのっ! パパーっ!」


 無理矢理荷車に乗せられ、村を出ていく。

 もぉぉぉっ! パパのバカぁぁぁっ!

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