挿話54 真実の愛で強くなった勇者ローランド

 暗い森の中に、俺よりも二回りほど大きな熊の叫び声が響く。

 レッド・グリズリー……強靭な腕力でから出される鋭利な爪による攻撃と、分厚い毛皮に守られたA級の魔物だ。


「はぁっ!」

「ローランドさん! 頑張ってくださーいっ!」

「任せろっ! ≪ライトニング・ブレード≫」


 ゴードンちゃんの声援に応じる為、新たに習得したスキルで、巨大な熊の魔物を斬り捨てた。


「ふむ。ローランド殿は、勇者として一皮剥けたようですな」

「当然だ。俺は勇者ローランド。魔王を倒す男だ!」

「ローランドさん! カッコいいですっ!」


 俺をここまで連れて来たダニエルに感心され、可愛いゴードンちゃんに黄色い声援を飛ばされる。

 そう、俺は生まれ変わったんだ。

 ゴードンちゃんとの、真実の愛によって。


「ダニエル殿。ローランドの成長も著しいですし、そろそろ第三魔族領へ渡っても良い頃では?」

「そうですな。中衛のチャールズ殿が加わってくださり、パーティも安定しています。何より、ローランド殿が勇者として覚醒している。私も構わないと思いますが……」


 新たに加わったチャールズとダニエルが、俺の意見を求めるように、顔を向けてくる。

 俺が愛しのゴードンちゃんを見ると、


「ローランドさん。僕はローランドさんとなら、どこへでも行きますよ」


 俺が言って欲しい言葉を察して口に出してくれた。


「よし! 第三魔族領へ行こう! 愛の力で魔族たちを倒すんだ!」

「流石、ローランドだな。勇者として、実力も人格も申し分なしだ」

「一つ懸念があるとすれば、元々パーティに居たハンナ……いや、何でもない」


 ダニエルが何か言い掛けていたが、一先ずそれは無視して、今日の任務を終了し、街へ戻る事に。

 魔族領は危険な所だが、前衛に勇者の俺。中衛に、探索スキルを持つチャールズが。更に、攻撃と回復の出来るダニエルが居て、後衛に愛するゴードンちゃんと、かなりバランスの良いパーティになっている。

 これからの事を相談しつつ、皆で夕食を済ませると、宿で各自の部屋へ。

 もちろん、俺とゴードンちゃんが恋仲なのは周知の事実なので、同じ部屋だ。


「ローランドさん、お疲れ様でした。あの凶暴なレッド・グリズリーを倒すなんて、流石です」

「あぁ。だが、それもゴードンちゃんが魔法で援護してくれたからさ」

「いえ。僕なんて、ローランドさんに比べれば、まだまだですから」


 そう言って、ゴードンちゃんが優しく微笑む。

 違うんだよ、ゴードンちゃん。

 あの日、ゴードンちゃんと結ばれるまで、俺は本当にクズだったんだ。

 そんな俺を、ゴードンちゃんが優しく包み込んでくれたから、ここまで変わる事が出来たんだよ。


「ゴードンちゃん……ありがとう」

「ふふっ、ローランドさん。突然どうしたんですか? あ、それよりお風呂、先に入られます? それとも……」

「あぁ、もちろん二人で一緒にだ」


 ゴードンちゃんと一緒に風呂へ入り、互いに身体を綺麗にしたところで、二人とも全裸のままベッドへ。

 硬くなった互いのアレを……うん。性別なんて関係ない。

 愛だ。愛があれば、俺はどこまでも強くなれる!


「あっあっあっあっ……ろ、ローランドさんっ! 僕……」

「まだだっ! 明日から魔族領なんだ。今夜はとことん愛し合うからな。ゴードンちゃん……寝かせないぜっ!」

「ローランドさぁん」


……


 翌朝。

 微睡のなかで、ゴードンちゃんの柔らかい髪が俺の腹に触れ……ふふっ。昨日、あれだけ出したのに、まだ出して欲しいのか?

 だが、ゴードンちゃんのおねだりはめずらしので、今から早速って、これは……ゴードンちゃんじゃないっ!?

 慌てて身体を起こすと、


「やーっと飽きたわね。ダーリン」


 何故か俺の上に、いかついオッサンが居る。


「お前は……ハンナっ!? 馬鹿なっ! お前は……」

「ふふっ。何となく嫌な予感がして、無理矢理戻って来たのよ。そしたら、まさかゴードンと一緒に寝ているなんてね」

「おい、待て! ゴードンちゃんは!? ゴードンちゃんはどうしたんだっ!」

「さぁ。泥棒ネコは、今頃どうしているのかしらね?」

「ゴードンちゃあぁぁんっ!」

「ふふふっ。あんな華奢な男の事なんて、私がすぐに忘れさせてあげるわっ! これでねっ!」

「おい、やめろっ! 俺は挿れられるよりも、挿れる方が……あっー!」

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