第647話 第二回戦

「お母さんも、お姉ちゃんも、それに皆も、ありがとー! ボク、お兄ちゃんのコレ……よく知らずにしてもらってたよー!」


 ノーラの母親とノーマ、そして友人たちによるノーラへの教育と実演が何とか終わったのだが……いや、実演は要らなかったんじゃないか!?

 説明の後、分身させられて、母親とノーラ以外、全員気絶してしまった。


「ノーラ。もう結婚しているので、アレックスさんと子供を作って構いませんが、ノーラの子供が生まれて、相応の年齢になったら、正しい知識を与えてあげてください……ね」


 あ、母親も気を失ってしまったか。


「お母さん。じゃあ、仮にボクに娘が出来て、十歳くらいになったら、お兄さんと一緒に、ボクも同じように教える事にするねー」

「いや、同じ教え方はしなくて良いからな?」

「え? どーして? すっごくわかりやすかったよー?」

「じ、実演はしなくて良いと思うんだ」

「でも、お母さんもお姉ちゃんも、お友達も参加したし、きっとリス耳族の伝統だと思うんだよー。ボク、ちゃんとリス耳族の伝統を伝えていこうと思うんだー」


 いや、ノーラが色々と知らなかったが故に、こうなったと思うんだが。

 とりあえず、俺と一緒にいるノーラは大丈夫だったが、分身たちを相手にして気絶してしまった女性たちを治癒魔法で起こしていく。


「……アレックスさん。前はセーブしてくれていたのね。本気を出したら、もっと凄いなんて……」


 目を覚ましたノーマが抱きついてきたが、実は分身たちは本気モードじゃないから、まだ手加減……げふんげふん。

 余計な事は言わないでおこう。


「ノーラちゃん! 私もアレックスさんと結婚するっ! 凄いのっ! もうアレックスさんと離れられないっ!」

「いいよー! 皆と一緒の方がボクも嬉しいし」

「ノーマ! 私もっ! 私もアレックスさん無しで生きていけないから、結婚させてーっ!」


 いや、責任は取るにしても、一旦落ち着いてくれ。


「ところでノーラ。このまま故郷で暮らすのか?」

「お兄さんは、西の大陸へ行っちゃうんだよね?」

「そうだな。危険な場所だと聞いているし、ノーラたちを連れて行くのは難しいと思う」

「……えっと、お兄さんが来てくれたら、ここと第四魔族領を行き来出来るんだよね? それなら、暫くここで暮らして、それから第四魔族領に戻りたいかな。向こうにはニナたちも居るし」

「わかった。では、西の大陸が落ち着いたら迎えに来るよ」


 ノーラとしても、久々に故郷へ帰って来たのだから、ゆっくりして欲しい。

 あとは、ウラヤンカダの村への行き来をもう少し簡単に出来ないかだな。

 ソフィに魔導列車を伸ばしてもらえると一番良いのだが。

 そんな事を考えていると、ノーラの友人が泣きそうな声をあげる。


「えぇっ!? アレックスさんは遠くへ行っちゃうの!? ヤダー! もうアレックスさんが居ない生活とか考えられないよーっ!」


 そう言われても、どうしたものかと困っていると、突然扉が開く。


「話は聞かせてもらったわ! そういう事なら、このプルム殿に任せれば解決するっ! ……という訳でご主人様っ! 私も混ぜてくださいませっ!」

「え? モニカ!? いや、フェリーチェとプルムも!?」

「ご主人様。下のテントでレヴィア殿やラヴィニア殿が、首を長くして待っているので、分身を何体か送った方が良いかと。ちょっと不機嫌でしたし」

「えっ……」

「それはさておき、この部屋に溢れまくっているご主人様のアレも、今後の生活もプルム殿で全て解決っ! という訳でご主人様っ! 二回戦を始めましょうっ!」


 何故かモニカ、フェリーチェ、プルムの三人が部屋に入って来て……いや、ようやく終わったとこなんだ!

 俺は西へ……西の大陸へ行かなくてはならないんだっ!


「アレックスさん。次はノーラへの教育ではなく、母親としてでもなく、一人の女として……」

「あ、私もノーラの姉ではなく、あなたの妻として、してもらうわね」

「ボクもボクもー! あ、もうお兄さんじゃなくて……旦那様だねー! 旦那様ー、子供を作ろー!」


 モニカたちに、ノーラたち母娘と、その友人も再び混ざり……どうしてこうなってしまったのか、昼を過ぎて、ようやく出発となった。

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