第170話 守備隊を提案するネーヴ

「な、なんと……エルフにドワーフ、天使族でかなり驚かされたのだが、更に狐耳族の族長まで居るとは。この村は本当に凄いのだな」


 昼食時にネーヴの自己紹介と、それぞれのメンバーを照会したのだが、ミオの事を知っていたらしく、一番驚いていた。

 そして、


「ほぅ。ネーヴは何故我の事を知っておるのじゃ?」

「それはもう、狐耳族の族長と言えば、有名ではないか。何より九……」

「げふんげふん。わかった。一先ず、その話は良いであろう」


 何の話かは分からないが、ネーヴとミオが視線で何かを語っている気がする。

 まぁ誰しも知られたくない事の一つや二つくらいあるだろうし、触れないでおこう。


「こほん。話を変えて悪いのだが、ミオ殿が居るという事は、黒髪の王女のスキルで、狐耳族の人形が居るという事なのか?」

「あー、そういえばミオの人形は居ないな」

「それは勿体ない。是非、狐耳族の人形を作成してもらいたいのだが……何故、アレックスはそんな表情になるのだ?」

「……いや、何というか。メイリンが人形を作るには材料などが必要だからな」

「なるほど。これだけのスキルだ。そう簡単に増やす事は出来ないのだろう。だが、この家に来る途中、アレックスとエリー殿にリディア殿やサクラ殿の人形を多く見た気がするのだが……」


 あー、うん。今挙げられた名前から、色々と察する事が出来てしまったのだが、


「そう言えば、ボクの人形も居ないよー? ねぇ、メイリン。ボクの人形って作れないのー?」

「ノーラ。い、色々と条件があってな。ノーラの人形は難しそうなんだ」

「そうなんだー。残念」


 人形を作って欲しいと言い出したノーラに心の中で謝り、作れるような事態にならないようにしようと心に決める。


「そうだ、アレックス。一先ず、先程メイリン殿より人形の人数などを教えてもらい、先ずは守備隊の班を決めてみたのだが、どうだろうか」


 ネーヴ曰く、六人一組を基本として、


――魔法攻撃班……アレックス人形、エリー人形五体

  機動班  ……アレックス人形、サクラ人形五体

  防御班A ……アレックス人形三体、リディア人形三体

  防御班B ……アレックス人形三体、リディア人形三体

  バランス班……アレックス人形二体、エリー人形、モニカ人形二体、リディア人形――


 という案が出てきた。

 本当は、先程サクラと話していたように、魔法攻撃班を二つにしたかったらしいのだが、エリーの人形が六体しか居らず、分けられなかったと。


「各班に必ず俺の人形が入っているのは?」

「話を聞く限り、アレックスは万能だからな。各班の連絡や連携の為と、有事の際に対応出来る様に、必ずアレックスに入ってもらっている」


 なるほど。メイリンは全ての人形と遠隔で会話が出来るけど、他のメンバーはそうはいかないからな。

 知識を共有する力で、俺の人形と話せば、各班に情報が伝わるようにしたのか。


「ねぇねぇ。私が入ってないよー?」

「ニナも居なーい!」

「う、ウチは役に立つとは思えんから、このまま入れんくてえーで」


 ユーディットとニナが口を尖らせ、レイはこのままが良いと肯定する。


「俺の意見としては、全員参加しなくても……もちろん状況次第ではあるが、ニナやレイは製造に専念して欲しいと思う。特に、ニナはリザードマンの村との取引もあるしな」

「んー、私はー?」

「ユーディットの人形ユーリは、幼いからな。戦闘に参加するより、空から状況を伝えたり、皆を応援してあげる役割の方が良いと思うのだが」

「私自身は戦えるんだけど……仕方ないかー」


 俺がネーヴの案を支持した事により、一先ずこの案で班を結成し、ネーヴが陣形などを指導していく事に。

 とはいえ、指導は一班ずつなので、それ以外の班はこれまで通り開拓作業を進める。

 まぁそれくらいなら、大きな影響は無いだろう。


「それより、先程話に出てきたリザードマンの村とは?」

「あぁ、ここから東へ行った所にリザードマンたちの村があるんだ。そこで鉄器や作物と、布や魚を交換しているんだ」

「なるほど。友好的な村という事か。ちなみに、リザードマンの村の近くには何があるのだ?」

「んー、湖くらいか?」

「人が住む街などは?」

「近くには無いと言っていたな。人の街があるとすれば、南側……といっても果てしなく遠いらしいが」

「ふむ……アレックス。その東側や、南側の探索隊を組織しないか? いや、私が口を出すのは守備隊までで、あくまで提案までだが」


 ネーヴが新たな提案をしてきたところで、


「そうですね。ネーヴ殿の考えも一理あるかと。国を強く豊かにする為、探索隊までいかなくとも、専門で領地を広げる班を作っても良いかと」


 メイリンがネーヴの案に乗る。

 そして、


「ご主人様。という事は、人を増やす必要がありますね」

「魔法攻撃班を増やしたいって言っていたわよね。じゃあ、私も協力しなくっちゃね」

「我の人形が欲しいと言っておったが、我は作る為に必要な材料を知らぬのじゃ。だが、皆の様子を見る限り、ここは参加しておくべきと判断したのじゃ。さぁアレックスよ。我の人形を作るのじゃ」


 モニカから始まり、エリーとミオが俺を見つめだし……じ、人口は計画的に増やさないと、食料問題になるからな?

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